思わぬ援軍の約束
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます。
執筆終了です。
お楽しみ下さい。
現地に戻ると夜が明けかけていた。
早速、報告に大天幕に向かう。
だが、どうやら師団長は就寝中だったらしい。
少し待てと言われてしまった。
そりゃあそうだろう。
もう明け方だ。
この感じだと五時から六時の間だろう。
普通は寝ている時間だ。
この歳にして、俺はもう少し気を使うと言う事を学んだ。
しばらく待っていると入って良いとの返事が来た。
天幕の中に入ると寝不足そうな顔のモアッレム様と取り巻きの人、護衛の人が迎えてくれた。
モアッレム様の前に跪くと早速報告する。
【モアッレム師団長、偵察をした所、敵と遭遇。これを殲滅致しました。】
「なんと!真か!?」
「「「おおっ!」」」
【はい、印のあった所は全て殲滅してまいりました。】
「おお、流石に陛下の友よな!仕事が早い!だが、念の為だ、確認致すぞ?」
【はい、構いません。ですがお気をつけて下さい。どうやらあの悪魔達は、際限なくわいて来るようです。】
「構わん、あの地点の統率者がいなくなれば良いのだ!」
「探索隊を組織せよ!直ぐに確認を致せ!」
「これでしばらくは大丈夫でございますな。」
「ああ、これで民も安心出来る事だろう。」
「この吉報を陛下にも届けよ!急げよ!」
先程の寝不足そうな顔は何処へやら。
皆が喜んでくれた。
天幕から何人かが飛び出して行く。
でも、これからも色々と大変だろうね。
何せ魔王と関係があると分かってしまったのだから・・・
さて、俺も皆の所に戻ろう。
【モアッレム師団長、確認が取れましたら私もお暇致しますね。】
「ああ、御苦労であった。友よ!」
握手を求められたのでその手を握る。
ガーゴイルの文化にも握手はあるんだね。
・・・一時間程だろうか?
伝令の人達が出入りを繰り返していた。
しばらくすると、どうやら確認が取れたようだった。
「これで戦線を押し上げられる。・・・彼奴らがいなくなれば、我々だけでも大丈夫であろう。」
「左様ですな、師団長。それでは戦線を押し上げ、陣を再構築致します。」
「うむ、あのような奴らが現れるのも一時的な事であろうからな。」
【お話中に申し訳ございません、それでは、モアッレム師団長。私はこれで失礼させて頂きます。】
「友よ、助かった。陛下より褒美を受け取るが良い。」
【はい、ありがたく。それでは失礼致しますね。】
そう言うと、俺は天幕を出る。
東の空から太陽がその顔をのぞかせていた。
体感時間で六時ぐらいでは無いだろうか?
とりあえず、無事に済んで良かった。
俺はリターンの魔法を唱えると陣を後にするのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
わずかだが、カーテンの隙間から入って来た太陽の光で私は目を覚ます。
今は六時ぐらいだろうか?
あの人の為と開けておいたベッドの隅に視線を移す。
使っている形跡はないようだった。
どうやら、昨日あの人は帰って来なかったみたいね。
無茶をしていなければ良いのだけれど・・・。
そのままの姿勢で視線を移すと胸元にベスとアリスがくっついていた。
「ルイス姉・・・も・・・負けていない・・・です・・・。」
「ルイスちゃん・・・頑張るのです・・・。」
二人共、一体どんな夢を見ているのだろうか。
負けないでって何よ!
頑張ってって何よ!
そりゃあ、大きさではナナリーさんには勝てないけれど・・・。
だ、大丈夫よ!
胸は大きさだけでは無いわ!
あの人はハリや形も重要だって、私の胸を好みだって言ってくれたもの。
ベスとアリスを起こさない様にしてベッドを降りる。
昨日は予期せぬ事で泊りになってしまった。
泊りの家族旅行。
ああ、なんて幸せなのだろうか。
不安はあるけれど、今はこの幸せを噛みしめておこう。
「ルイスさん、おはようございますー。」
振り返るとナナリーさんが起きて来ていた。
「ナナリーさん、おはようございます。」
「ふふっ、リズちゃんとマオちゃんを起こさないようにするのが大変でしたー。」
ナナリーさんはあの二人が寝付くまで羨ましいと胸を揉まれていた。
それで寝不足なのだろう。
欠伸をしながら近づいて来た。
あの人はいないけれど、いつもの日課をしておきましょうか。
「それでは一緒に祈りましょうか。」
「ええ、御一緒しますよー。」
「「『アリステリア様』、あの人が無事であります様に・・・。」」
二人でそう祈ると皆を起こして支度をして行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンコン
部屋にノックの音が響く。
どうぞと声を掛けるとドアを開けリャーズさんが入って来た。
「おはようございます!皆様方、朝食の支度が・・・。どうなされたのですか?」
リャーズさんが部屋に入って来るなり疑問の声が飛んで来た。
「いえ、まさか泊まるとは思っていなかったので色々と・・・。」
「朝から騒がしくて済みませんー!」
「ねえねえ、リャーズさん。櫛はないかしら?」
リズが聞くと考え込んでいるようだ。
「寝癖が大変です・・・。」
「大変なんです!」
「大変・・・なので・・・す・・・。」
「人族と違いまして、我々は櫛を使いませんので・・・。」
「「「そう言えば、角でしたよね!」」」
「ええ、艶出しの軟膏はありますが・・・皆様には必要ございませんよね?」
「ああ、女王陛下の前に出るのに、この恰好でなんて・・・。」
「ルイスさん、膝を付いていないでどうするかを考えるのが先ですよー!」
「そうよ!ルイス姉!こんな格好じゃあ、お兄さんの前に出られないわ!」
「リズ姉・・・ヘファさんより・・・先に女王陛下の前ですよ。」
「とにかく濡らして整えてみるのですよ!」
「ぐー・・・すー・・・。」
「せめて、あの人がいれば・・・。」
「あの人?ヘファイストス様でしょうか?それなら厨房にいらっしゃいますよ?」
「「「お願いです!呼んで来て頂けませんか!?」」」
皆で迫って言うとリャーズさんがたじろいで言う。
「は、はい・・・かしこまりました?」
リャーズさんはそう言うとあの人を呼びに行ってくれたようだ。
しばらく待っているとノックもせずにあの人が駆け込んで来た。
【ルイス、ナナリーさん、皆!神がどうって何かあったのかい!?】
「そうなの!髪が大変なのよ!」
「ヘファ君、櫛を持っていないかしらー?」
「お兄さん!レディの部屋に入る時はノックしてよね!」
「リズ姉・・・それはいつもの事ですよ・・・。」
「そうですリズ姉、今は髪が大変なのですよ!」
「Zzz・・・。」
【それより神が大変ってどういう事!?『アリステリア様』に何かあったの!?】
「「「ん?」」」
【あれ?・・・えっと、状況を整理しようか?】
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【ビックリしたよ。『神』と『髪』ね。】
「ええ、それで櫛を持っていないかしら?」
「お姉さんは、ヘファ君なら持っていると思うのですよー。」
リャーズさん、いや、翻訳に問題があったようだ。
朝から驚いたよ。
まあ、よく考えればそんな事は無いだろう。
だって創造神様だぜ?
そんなにホイホイ出て来ないでしょう?
【それで、櫛ね。三つあるから順番に使ってね。】
そう言ってバックパックから取り出すとルイス、ナナリーさん、リズに渡す。
「「「ありがとう!」」」
【それと、皆の着替えも出しておくから、新作だからね!】
「「「ありがとう!」」」
【支度が整ったら昨日の部屋で朝食だよ。陛下も一緒だからね?それではリャーズさん後はお願いしますね。】
「かしこまりました、ヘファイストス様。」
【じゃあ、厨房に行ってるからね。】
「支度したら行くわね。」
「後で伺いますねー。」
「「「はーい!」」」
元気な返事を聞いてから、厨房へ戻り朝御飯の支度を続ける。
今日は御飯と鮭の塩焼きと、ほうれん草のお浸し、豆腐とわかめの味噌汁定食だ。
御飯が炊けるのと皆の準備が整うのが同じようなタイミングだった。
リャーズさんが皆を案内をした後に女給さん達と一緒に運んで行く。
上座には配下が、その両隣にはルイスとナナリーさんが座っていた。
後の子達はそれぞれに座っている。
皆の前に料理を置くと早速声が掛かる。
「ほう、朝食は魚料理か!」
【はい、陛下。鮭の良い所がありましたので塩を振って焼き上げました。】
「うむ、しゃけとやらもそうだが、この汁からも、とても良い匂いがするぞ?」
【それは味噌汁と言う物でございます。味噌汁に入っている豆腐は手作りでございますので、どうぞご賞味下さいませ。】
「ほう、豆腐とはこの白い物の事か?」
【左様でございます。】
「む、今朝も箸を使うのじゃな?」
【はい、使いにくければフォークとスプーンも用意がございますよ?】
「いや、そなたに従おう、心遣いに感謝を。」
【では、冷めないうちにいただいて下さいませ。】
「うむ、いただこう!」
「「いただきます。」」
「「「いただきまーす!」」」
陛下は練習でもしたのだろうか、箸の使い方が上手くなっていた。
上品に骨を・・・。
あれ?
取り除いていない。
女王陛下は骨ごとバリバリと食ってるよ。
骨は取っておいた方が良かったかな?
うちの子達は箸の使い方が上手くなったものだね。
ちゃんと、骨を取り除きながら食べている。
女給さんと兵士の皆さんは、箸を握ってかき込んでいた。
もちろん骨ごと食べている。
うん、異文化、大いに結構。
「ほう、塩加減が絶妙じゃのぅ。」
「左様でございますね、陛下。」
「ヘファイストス殿、もちろん代わりはあるのだろうな?」
【はい、すぐに焼き上げますよ。】
「味噌汁も忘れてはならんぞ?」
【かしこまりました、陛下。】
うちの子達の方を見ると・・・。
うん、お代わりだね。
ついでで悪いんだが女給さんと兵士さんを見るとお代わりの様だった。
鮭、魚もたまには良いでしょう?
そして皆の分を焼き上げてリャーズさん達と共に運ぶ。
「うむ、美味い!朝から食欲がわくと言う物だ!お主達の夫は料理が上手くて羨ましいぞ?」
「陛下、ありがとうございます。」
「ありがたいお言葉でございます、陛下ー。」
「うむ、この料理が毎日食べれるのは羨ましいのぅ。まあ、楽しみが増えると言う物よな。」
「左様でございますね、陛下。」
「リャーズ、この料理は習得せよ。」
「へ、陛下!私共には無理でございます!」
「「左様でございます、陛下!」」
「ふむ・・・それではこのような機会に満足するしか無い様じゃな。」
「陛下もおっしゃっていたではありませんか、楽しみが増えると。」
「うむ、そうじゃな。其方達に無理強いする訳にも行かんのぅ。」
「さ、左様でございますよ、陛下。」
「「はい、陛下。」」
リャーズさんと女給さん達、上手く逃げたな?
前回は、料理をした事の無い人に鰻の蒲焼を作れと無理難題を言っていたからね。
「ヘファイストス殿、次は鰻が食べたいぞ?」
【機会があれば必ずや。】
「うむ、約束じゃぞ、友よ。」
そう言うと朝食を食べに戻る。
よっぽど鰻の蒲焼が気に入っているようだ。
次の為に、仕入れておかないとね。
満足したのか、食事が終わると陛下が話しかけて来た。
「昨日の事はすでに聞き及んでおる、よくぞ、あ奴らを退けてくれた、礼を言う。」
女王陛下が頭を下げるとそれを見ていた息子さんや護衛の人達がどよめく。
「友よ、その代わりと言っては何だが、コロッサス隊の中からの精兵を五十名じゃが援軍として送る。好きに使うが良い。」
【そんなに・・・!?陛下、よろしいのですか?】
「構わん、決戦の日が分かり次第連絡せよ。良いな?」
【陛下、お心遣いありがたく・・・。】
コロッサスならバルロンより上のの上位悪魔相手でも十分すぎる対処が出来るだろう。
此処に来て、心強い援軍を得た。
しかも五十名の精兵だ。
街の中では厳しいが外壁沿いに配置すれば・・・。
いや、それは爺さん達に任せよう。
今は、この援軍を喜ぶべきだ。
【ありがとうございます、陛下。】
「なに、礼など不要。こちらも無関係ではないからのぅ。」
【それは、やはり、ヴォイドの悪魔の事でしょうか?】
「そうじゃ、じゃが・・・それだけではないがな。」
【陛下、それだけとは?】
「ふふっ・・・友の為じゃよ。」
【陛下、御心使い・・・ありがたく。】
頭を下げる。
本当にありがたい申し入れだった。
コロッサスが50体もいれば街の防備は、騎士団と連携できればかなり安心が出来る。
「なに、こんな事で友を失いたくはないからのう。」
本当にありがたい。
「本当に、ありがとうございます。」
「陛下、私達の街の為に、ありがとうございますー。」
「「「ありがとうございます!」」」
「なに、その代わりに先勝祝いは鰻を、是非にな?」
【かしこまりまして。】
「ふふふ・・・。」
「「「あははは!」」」
陛下が笑うとつられて皆も笑い出す。
よし、これで俺達は怠惰さんに集中出来るぞ!
『そう、倒してはいけないんだ。』
ん?
『魔王が復活するんだよ。』
あれ?
何かを思い出せそうなんだが・・・引っかかるな。
『七大悪魔を復活させるとその魂を糧として、魔王が復活するんだ!』
ノモスにも言われてたからそれが引っ掛かっているのか?
何故かその言葉は、俺の心の奥にしこりとなって残るのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらく談笑した後、褒美の氷冷庫を受け取ると俺達はお暇する事にした。
だが、そう簡単にはいかないようだ。
「試練を超えただけでは納得がいかん!ヘファイストス殿、我と模擬戦を致せ!」
昨日の王子様のようだ。
統率者を殲滅させた報告を聞いても信じられないと言っていたようなので、此処で俺の実力を示しておくのも良いかもね。
模擬戦を受ける事にした。
【それでは、刃無しの武器でならばお受け致しましょう。】
「そう来なくてはな!それでこそ、母上が友と呼ぶ男よ!」
この王子様は、好戦的な性格のようだ。
実力を示さなければ納得がいかないのだろう。
どうやら王宮の側に闘技場があるらしい。
其処に皆で移動する。
ルイス達はリャーズさんに観客席に案内されているようだった。
案内された控室で木剣を受け取り通路を通り闘技場に入ると・・・
ありゃ?
天井が無いぞ?
空が見える。
俺の姿が見えると歓声が上がる。
あの、見物人が結構いるのですが?
対面にはもう支度が終わったのだろう王子様が立っていた。
中央の辺りには審判の人なのだろうか、もう一人立っていた。
「遅いぞ!ヘファイストス殿!」
【申し訳ありません、支度に手間取りまして。】
「ん?お主は鎧を着けぬのか?」
【着けないで回避特化した姿こそが、私の戦姿なのですよ。】
「ふむ、ならば良い。いざっ!」
「いつでも結構でございますよ!」
闘技場に緊張感が走る。
ルイスとナナリーさんが祈るように俺を見ている。
ありゃ?
心配させちゃったかな?
リズとマオとアリスはワクワクとして見ていた。
ちょっと実力を見せて二人を安心させないとね。
「始めっ!」
審判の人の掛け声と共に嫌な予感がする。
半身になってソレをかわす。
「ほう、油断はしていないようだな!」
【油断はしておりませんよ?ところで王子様、その武器は鋼鉄製ですよね?】
「そうだ!」
俺は木剣なのだが・・・。
刃引きはしてあるんですよね?
まあ良い。
すると突然、投擲武器のサイクロンだろうか、が首のあった位置を通り過ぎていく。
おいおい、当たったら大けがどころじゃすまないでしょうに・・・。
王子の手元に戻るのに、この距離だと四、五秒といったところかな?
離れれば不利になる。
俺は距離を詰めると、その速さに驚いた王子は翼を広げた!
そう、空を飛んだのだ。
天井が無かったのはそう言う訳ね。
ただし、これでは一方的に攻撃されてしまうだろう。
仕方がない。
【・・・7th フライ!】
飛行魔法を唱え後を追いかける。
4thに『フローティング』という魔法があり同じく空を飛べる飛行魔法なのだが、何せ飛行速度が遅いのだ。
その点フライの魔法は機動力がある。
「ほう!空を飛べるとは思わなかったぞ!ヘファイストス殿!」
【対飛行生物対策ですよ、王子様!】
王子の戦い方は離れては投擲とするという単調なものだった。
だが追いかけるとその分距離を取り投擲してくるので、このままではいつまでたっても勝負がつかないだろう。
ううん、これでは決着を付けられない・・・武器を奪ってみるか。
サイクロンが飛んでくると、避け様にそれを無造作につかみ取る。
「なっ!?」
「「「おおっ!」」」
見ている観客からも声が上がる。
良かった。
ちゃんと刃引きはしてあった様だ。
【そう何度も見せられれば、このぐらいの芸当は出来ますよ?】
「っち、ならば!」
そう言うと王子は飛ぶのをやめて地上に降り立ち剣を抜く。
それが、ガーゴイル流の戦い方なのだろうか?
うーん、それは悪手だよね?
そう、俺の手にはサイクロンがあるのだから。
空を飛んだままサイクロンを王子めがけて投げつける。
「なっ!?貴様卑怯だぞ!」
何を言っているんだろうね、この王子様は。
【今までやられていたのですから、当然の事をしておるのですよ?】
「馬鹿な!何だ、この威力は!?」
ガードしている鋼の剣が俺の攻撃を受けるたびに折れ曲がっていく。
って、剣も鋼鉄製かよ!
まあ、スキルレベルが違うだろうしね。
めったに使わない投擲スキルを最適化させてしまおう。
ガシガシと王子めがけてサイクロンを投げつける。
王子は防戦一方だ。
「おのれ!」
【攻撃を受ければ、打撲ではすみませんよ?】
「っく、このままでは!」
もう詰みなんだけれどね。
そろそろこの戦いを終わらせよう。
そう思いサイクロンを投げると、素早く王子の後ろにテレポートで回り込む。
王子がサイクロンを防いでいる間に、後ろから木剣を首筋に当てる。
【そ、そこまで!勝者、ヘファイストス!】
「「「ワアアアァァァ!!!」」」
「あの人族、王子に勝っちまったぞ!」
「いつの間に後ろに回り込んだんだ!?」
「王子もまだまだ、と言った所か。」
「サイクロンを奪われた後の対処を間違えたな。」
「だが、刃付きの物なら素手では掴めまい?」
「戦士としての課題は見えてきたな・・・。」
「両者共に良い戦いだった!」
「「「パチパチパチ・・・!」」」
歓声が上がる中、王子と握手すると言ってくる。
「次は負けんぞ!ヘファイストス殿!」
【また、お相手下さい。】
「貴殿・・・いや、今回は俺の負けだ。何も言うまい。」
【それでは、失礼致しますね。】
「ああ、次もやろうぞ!」
なるべくなら、御遠慮願いたい。
そうして王子と別れると、皆の元へ急ぐ。
「貴方といると、心臓が何個あっても足りないわ。」
「ヘファ君、御怪我はありませんかー?」
「さすがね!お兄さん!」
そう言ってリズが左手にくっついてくる。
「心配した分はかれーでないと補えません・・・。」
【ベス、帰ったら作るよ。】
「ヘファさん、さすがでした!」
そう言ってマオが右手に引っ付いてくる。
マオさんは獣人族特有で体が育っているから当たるものは当たる。
うん、成長しているね!
「ヘファさんはさいきょーなのです!」
アリスが腰にまとわりつい来る。
【今回は、運の良かった所もあるんだよ?】
「「「そんな事はないの!」」」
「強くて料理上手の旦那様かぁ~、良いわね。お兄さん、養ってよね!」
「ヘファさん、リズ姉の次はアタシですからね!」
「二人共ずるいのです!」
「ほら、アンタ達、こんな所で喧嘩しない!」
「そうですよ?皆、仲良くしましょうね。帰ったら、お仕事ですからねー?」
「うげー、そうだったー!」
「そうだったの・・・。」
「そうでしたー!」
「そうだったのですー!」
ふふ、俺もジャスティン達の所に武具を持っていかないとね。
こうして短いが、楽しい家族旅行を満喫したのだった。
した・・・よね?
いつもの宿屋に帰ると、女将さんの雷が待っていたけれどね!
此処まで読んで下さり、誠にありがとうございます。
まずは、いつものから!
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皆様に感謝を!
それでは 次話 エナの正体と目的(仮 で、お会い致しましょう。
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