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初めての家族旅行

いつも読んで下さり、誠にありがとうございます。

執筆が終わりました。

お楽しみ頂けると幸いです。


いつもの朝が来る。


三人で祈りを済ませると、今日は宿屋の仕事をお休みしてもらって皆で、エギエネスシティに向かう事にした。

祈りの後、二人に話すと喜んで賛成してくれた。

たまには良い休みになるだろう。

訳を話すと、女将さんも快諾してくれた。

朝御飯が終わると早速、皆に俺達の部屋に集まってもらう。


「「「お出かけ?」」」


【そうだよ、たまには良いだろう?泊りでは無いのが残念だけれどね。】


「お兄さん、質問!」


【はい、リズさん、どうぞ?】


「ガーゴイル族の街ってどうやって行くの?」


【俺の魔法で行きます。7thの魔法にゲート・トラベルって言う魔法があってね。】


「そうなんだ!ふーん、お兄さんの魔法なら安心ね。」


【リズさん、いちいち抱き着かないで良いからね?】


最近いろんな所が成長しているから困るんだよね。


「少しぐらい、良いじゃない!」


「ヘファさん・・・質問です・・・。」


【な、何かな?ベスさん。】


「カーゴイル語は話せないけれど大丈夫ですか・・・?」


【6thの魔法に翻訳の魔法があるから掛けてあげるよ。それで大丈夫だ!】


「分かりました・・・。」


「ヘファさん、特産品とか美味しいお店とかあるんですか?」


【特産品は『金』で残念ながら、美味しいお店は無いんだよ。・・・ああ、マオ。そんなにがっかりしないで、楽しい事もあるから大丈夫だよ!】


無いと聞いた途端に顔が暗くなったので慌ててフォローする。


「それなら行きたいです!」


興味は持ってくれたようだ。

良かった。


「ヘファさん、質問なのです!」


【はい、アリスさん、なんでしょうか?】


「ガーゴイル族って誰なのですか?」


【うーん、翼の・・・いや、会ってみてからのお楽しみって言う所かな?】


「分かったのです!楽しみにしておくのです!」


【他には無いかな?】


「「「お買い物は出来ますかー?」」」


【・・・そう言えば『金』で取引してるとか言ってたな。少しは金もあるし、一応大陸通貨も使えるらしいから大丈夫だろう。】


「こんな事は初めてで、楽しみね!」


「そうですね・・・。」


「家族旅行と言うのだそうですよ!」


「皆と一緒なのですー!」


リズを先頭に皆がそれぞれの感想を言って来る。

皆、喜んでいる様だ。

誘ってみて良かった。

そして後ろを振り返って聞いてみる。


【と、言う訳なんだ、二人共。問題ないよね?】


それまで黙っていたルイスとナナリーさんに問うてみる。


「もちろん、私は大丈夫よ?」


「ヘファ君、私も大丈夫ですよー。」


二人はニコニコと微笑んでいた。


と、言う訳で、初めての家族旅行が決まったのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エギエネスシティへ、家族旅行じゃと?」


「はい、父上。そう言う事で、本日はヘファイストス殿はつかまりません。」


「ふむ、まあ、良いか。その旅行と言うのも何かあるのだろうしのぉ。」


「彼ならば、それだけではないでしょう。明日になりますが使いを出して、お呼び致します。」


「そうじゃの、そのようにせよ。・・・邪魔はするでないぞ?」


「ふふっ、かしこまりましてございます、父上。」


「それにしてものぉ・・・。」


王都の魔法使いギルドから連絡があり、希少素材である悪魔の爪が手に入り三十個じゃがこちらに回せると言ってきおったのだ。

王都の惨劇の中で唯一無事じゃった魔法ギルド・・・。

何かあるのかもしれんのぉ。

いや、これ以上首は突っ込まない方がええじゃろう。


嫌な予感がするわい。


「レガイア、今回の件で魔法ギルドに借りが出来たのう。」


「好ましくはありませんが、左様ですな、父上。では、私めは受け取りに行ってまいりますのでこれで。」


「うむ、頼んだぞ、レガイア。」


わしがそう言うと一礼し、レガイアは部屋を出て行った。

早速、王都に向かうのであろう。

行動が早い。

我が息子ながら、優秀な奴じゃ。

となると、護衛としてアレックスも行くじゃろう。

くくく、「うめしゅ」とやらはわしが独り占めじゃのぅ。

肴は、兄ちゃんから教えてもらった味醂干しがええな。


「うん、そう言えば、家族旅行なぞ、とんと行っていなかったのぅ。」


そうだ。

領主になってからと言うもの、忙しくて家族旅行なんぞ行った記憶が無い。

妻にも先立たれ、妾もおらんしのう・・・

こう言っては何だが、羨ましいのう。


だが、今は踏ん張る時じゃ。


あんちゃん達のおかげで街も大分復興してきた。

西街と南街はもう大丈夫じゃろう。

東街も、黒玉ジェット様が何処からか連れてきてくれた職人達のおかげでみるみると復興をしている。

こちらも大丈夫じゃろう。


問題は一番被害の大きかった北街じゃのぉ。


壊滅的な打撃を受けた北街は大量の職人が入り懸命に復興している所なのだ。

もちろん、兄ちゃんのおかげで魔法ギルドが立ち直り、今回の件に結び付いたのじゃろう。

あの騒ぎでも、逃げ出さなかったという魔法ギルドの長か・・・。

やっかいな事にならなければええがのぉ。


それに、支援の件もある。

あんちゃんには、頭が上がらん。

・・・不安もあったのだ。

そう、申し訳ないのだが、あのヘファイストスと言う者の素性を調べたのだ。

結果は・・・


何も出て来んかった。


この街に来た。

それは分かる。

じゃが、その前の足取りが全くない。

生まれや育った村や町、両親すらも分からない。

まったくの謎の男じゃった。


だが、それがどうかしたのか?

あんちゃんは、この街の為に一生懸命になってくれておる。

公国からの買い付けも、あんちゃんのおかげじゃ。

大店からの支援もそう。

そして復興もそうじゃ。


あんちゃんの力無しでは、この街は此処までの復興は無かったじゃろう。

もしかしたら、わしの代でこのオーカムの歴史は、終わっておったのかもしれん。

あの、あんちゃんには感謝しかない。


そう、感謝しか無いのじゃ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


支度を整えると、皆で一階に集まる。


リズとマオの二人はもう来ている。

この二人は、こういう時は行動が早い。

ナナリーさんも、もう来ている。

ルイスとベスは、アリスの事を見ているのだろう。

三人はまだいない。


しばらく待っているとその三人が階段を降りて来た。


「ごめんなさい、アリスの支度に手間取っちゃって。」


「むー、アリスのせいでは無いのです!」


「そうね・・・ルイス姉が迷ってたのよね・・・。」


「二人共、そんな事ばっかり言って!でも可愛いでしょう?」


「アリスちゃんは、可愛くしてもらったのですねー。」


【うん、可愛いね。でも、十時になっちゃうよ。皆、行こうか。】


「「「おー!」」」


こういう時の団結力は半端ないなぁ。

ナナリーさんもこのノリについてこれるようになっていた。

そう思っているとそのナナリーさんから声が掛かる。


「ヘファ君、御髪が乱れてますよー?」


【え、何処?鏡で確かめたんだけどな?】


「ちょっと待って下さいねー。」


そう言うとナナリーさんは、厨房からお湯で濡れたタオルを持って来て整えてくれた。


「はい、できましたよ。うん、良い男ですねー。」


【ありがとうございます、ナナリーさん。】


「どう致しましてー。」


「・・・。」


ちょっとむくれているルイスに声を掛ける。


【どうしたのさ、ルイス?】


「な、何でもないわよ!それより行くんでしょう?」


【うん、じゃあ外に出ようか。魔法を使うからね。】


「「「はーい!」」」


うん、皆は今日も元気だ。

外に出ようとすると、女将さんが言って来た。


「皆、せっかくの休みだからね、楽しんで来るんだよ?それと、気を付けて行って来な!」


「「「行って来ます!女将さん!」」」


外に出ると路地に入り、通りに人がいないのを確認する。

念の為に宿の裏手に移動する。


【じゃあ、ゲートの魔法を使うからね。ゲートが出たら入るんだけれど、出たら側で待っている事!】


「「「はーい!」」」


【良い返事だ、では・・・7th、ゲート・トラベル。】


俺の目の前に青いゲートが現れるとリズとマオが躊躇なく飛び込んで行った。

その後にルイスと手を繋いだアリスとベスが入って行く。


「ヘファ君、手を繋いでも良いですかー?」


【ええ、一緒に行きましょう。】


そう言ってナナリーさんと手を繋ぎゲートを潜る。

すると、景色が変わる。

俺は見慣れている景色だが、皆は驚いていた。

あれ?

何か、いつもより兵士の数が多い様だね。

まあ、今回は旅行で来たんだから大丈夫でしょう。


こうして俺達はエギエネスシティにやって来たのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「へえー、ここがガーゴイル族の街なのねー。」


「リズ姉、羽の生えている人がいっぱいです!」


「本当ね。お兄さん、あれがガーゴイル族なのね?」


【そうだね、おっとそうだ、皆に魔法を掛けておきましょうかね。】


「「「お願いしまーす!」」」


一人ずつ順番に翻訳の魔法を掛けて行った。

全員に掛け終わると、それを見計らっていたガーゴイル族の兵士が声を掛けて来た。


「人族の子らよ、ようこそエギエネスシティへ。」


「こ、こんにちは!本当に意味が分かるわよ?」


「こ、こんにちはです!分かりますね!」


「こんにちは・・・。」


「こんにちはなのですー!」


リズとマオの挨拶がおかしかったからか、その兵士は挨拶をして来た皆を見る。

と、俺に視線を移して来た。


「おや?もしかしてヘファイストス先生ではありませんか?」


【ちょ、いや、先生はやめて下さいよ。講師はしていますが若輩者ですので。】


「おお、これは天啓と言うもの!早速、女王陛下にお知らせせねば!」


そう言うと翼を広げ飛んで行ってしまった。

・・・天啓ってなんだろうね?


「翼があるからとは思っていたけれど、ガーゴイルの人って空を飛べるのね・・・。」


「あんなに高く、気持ち良さそうですねー!」


ルイスとナナリーさんは驚いていた。

するとアリスが羨ましそうに言って来る。


「アリスも飛びたいのですー!」


バタバタと両手を動かす。

可愛いね。


「あはは、アリスは翼が無いじゃない、無理よー?」


「そうですよ、アリス。飛んでいて落ちたらぺしゃんこですよ?」


リズとマオにそう言われてアリスは身震いする。


「そ、それは怖いのです!」


「アリス・・・。飛べなくても飛ぶ動物に乗れば良いんですよ・・・。」


「そんなのがいるのですか?」


「本に書いてありました・・・ドラゴンは飛べるのだそうです・・・。」


「乗りたいのです!」


ベスさん、アリスさん。

期待に満ちた目でこちらを見るのはやめてくれないかな?


【んんっ、機会があったら考えよう。】


「ん、楽しみなの・・・。」


「ヘファさん、楽しみにしているのですー!」


うーん、変に期待させるような事を言ってしまったかな?

ドラゴンか・・・。

ゲームでも調教テイムスキルで出来たから、そんな機会があれば頑張ってみますかね。

そんな事を思っていると周りが騒がしくなって来た。

どうやら先程の兵士が女王陛下に報告をしたのだろう。


沢山の兵士がやって来た。


・・・なんか物々しいね?

何かがあったのかな?

そうすると見知った顔の人物が進み出て来た。


「久しいな、ヘファイストス殿。」


「これは、女王陛下!自らお出迎えとは、光栄の至り。」


俺が跪くと慌てて皆が習って跪く。

アリスだけが立ったままだったので、ルイスが慌てて囁くと同じように跪いた。


「ヘファイストス、いや、友よ。今日は何の用で来られたのか?」


【休日なので家族で出かけて来ました。ところで陛下、何か物々しいですね?】


「ふむ、休日のところ悪いが、ちと困った事があってのぉ。力を貸してはくれまいか?」


【そう言う事なら是非にとも、ただ、家族は一般人ですので、其処の所は何卒なにとぞ御容赦を。】


「何、構わぬ。友の家族だ、歓迎しようではないか。」


【ありがとうございます、陛下。】


「ここではなんだのぅ、皆と一緒に王宮へ参られよ。」


【よろしいのですか?】


「なに、構わぬ。」


【かしこまりました、陛下。】


そう言うと皆で移動を始める。

ガーゴイル族の人達は俺達に合わせて歩いてくれている。

すると、ルイスが慌てて囁いて来る。


「ね、ねえ女王陛下ってどういう事なのよ?」


【ああ、陛下とは懇意にさせて頂いてるんだよ。】


「ヘファ君は顔が広いのですねー・・・。」


主に、料理の力でだがな!

料理人じゃないんだよ?

俺は鍛冶師だからね?


皆は珍しそうに街やガーゴイル族を見ている。

しばらくすると王宮にたどり着いた。

あ、しまった!

そう言えば大階段があるのを忘れていたよ。

ゲートでは魂の金床の近くに出たから入り口の階段は見ていないんだよね。

皆が大階段を見上げている。


「・・・ねえ、お兄さん、これを昇るの?」


「ヘファさん、流石にこれはきついですよ?」


「んー・・・。」


「が、頑張るのですー!」


元気なリズとマオでさえ、この階段を見るとこうなのだ。

他の皆、特にベスはどうだろうか・・・。

と、心配していたのだが、ガーゴイルの人が抱えて飛んでくれるそうなので大丈夫なようだ。

ガーゴイル族は、人間より体格が良いのでナナリーさんでさえ軽々と持ち上げる。

ルイスから行ったようだ。

抱えられ、空を飛ぶと悲鳴のような声が聞こえて来る。


「に、人間は飛ぶようには出来ていないんですよっ!」


「ははは、慣れると良い物ですよ。お客人。」


次はナナリーさんのようだ。


「と、飛んでますー!」


「どうですか?しばしの空の旅を堪能下さい。」


すると次々を飛んで行く。


「お兄さん先に行ってるねー!」


「上で待っているの・・・。」


「ヘファさん、お先ですー!」


「あははは!飛んでいるのですー!」


おおむね、大丈夫なようだった。


次は俺の番かな?

女性のガーゴイルの人に抱えられると空を飛ぶ。


【おお、これは良い経験だ!】


「ふふふ、それでは行きますね。」


【お願いします!】


こうして俺達は、あの階段を苦も無く登ったのであった。

時間はそろそろお昼になる頃だろう。

頼み事とは何だろうか?

不安もあるけれど・・・。


だが、俺はそれ以上に、楽しむ事に心を躍らせるのだった。

此処まで読んで下さり、誠にありがとうございます。

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に励みになります。

皆様に感謝を!

それでは 次話 ヴォイドの悪魔と嫉妬(仮 で、お会い致しましょう。

お疲れさまでした!

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