鎧の魔王と復活の鍵
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます。
執筆が終わりました。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
部屋に着くとノモスが話始める。
「先程、伯爵様の屋敷に先触れが届いたらしい。良い知らせと悪い知らせがあるんだが、どちらから聞く?」
【じゃあ・・・悪い方からで頼むよ。】
「やはり気が合うな兄弟。そうだ、悪い方から聞くべきだ。」
そうするとノモスは、テーブルに置いてあったワインを一口飲んで続ける。
「オーカム伯が、大悪魔ベルフゴールの討伐を、正式にオーガの牙に依頼して来るだろう。どうやら君達を守れなかったらしい。」
【いや、それは守れなかったんじゃないと思う。期待してくれたんだよ。】
「良いなその前向きな思考、それでこそ我が兄弟だ!」
【で、爺さんは無事なのかな?】
「オーカム伯は、明日戻って来る。大丈夫だ、何もされてやしない。」
【そうか、安心したよ。】
「念の為に、護衛の騎士の中にグレイを紛れさせておいた。無駄足だったがね。」
【いや、爺さんを守ってくれたんだろう?ありがとうノモス。】
「兄弟、それは当然だろう?大事な御仁だ。この街、いやこの国にとってはね。」
【そうだね、あの人がいなければこの街の復興は無かった。】
「そうだ、で、良い報告は三年間の免税だ。これは素直に受けてくれたようだ。」
【おお、やってくれたか爺さん。】
「そうだ、やってくれた。で、問題はここからだ。」
【・・・問題って?ああ、手紙に書いてあったヤツかい?】
「うむ、これは七体の大悪魔に係わる事なんだが、ある文献を調べた所、重要な事が分かった。」
【重要な事?】
「アーサー、君は魔王の事は何処まで知っている?」
【不勉強で申し訳ないが、噂話程度しか知らないかな?】
「噂話と言うと200年前に降臨した勇者に滅ぼされたと言う奴の事かな?」
【そうそう、それぐらいかな?】
「では、アーサー、まずは聞こうか。鎧の部分は何か所の部位から成り立っている?」
【突然どうしたんだよ?俺は鍛冶師だぜ?そんな単純な事・・・鎧は頭、首、上半身、腕、手、下半身、足の七か所だよ。】
「この大陸に封じ込められていると言う、大悪魔の数は?」
【七体だろう?・・・ん?あれ?そう言えばこの大陸の国も七国だったよね?】
「そうだ、各国に都合よく大悪魔が一体ずつ封じられているんだ。」
【そう言えば、何でそんな都合良く・・・?】
「そう!都合がよすぎるんだよ、アーサー。」
【・・・その顔は、調べがついたので教えると言ったところかな?】
「そうだ、ちなみにベルフゴールは鎧の部位に例えると腕だ。・・・これで気づいたか、アーサー?」
【ちょ、ちょっと、待ってくれノモス。まさか・・・。】
俺の中で鎧と言うピースがくっついて行く。
「そのまさかだ。この大陸の各国の大悪魔が七体蘇るとその魂を糧として鎧と言う魔王が復活する!」
【そんな馬鹿な!子供だって知っている!確か200年前の勇者が討伐したって聞いたぞ!?】
「そう、一般の文献ではそうだ。だが、歪められているのさ。」
【歪めって、じゃあこの復活は!?】
「そうだ、誰かによって仕組まれている。」
【誰か・・・だと!?】
「残念ながら尻尾すら掴めていない。ただ、分かっているのは上級悪魔を捨て駒にするような奴ってだけだ。」
【ノモスの情報網をしてもそこまでしか掴めないのか・・・。】
「そうだ。で、どうする、兄弟?」
【当然だ。魔王なんて復活させないようにするさ!】
「そうだ!そう言ってくれると思ったぞ、兄弟!」
【ん?ちょっと待ってくれ、だとすると公国の騒動も?】
「そうだ、ここではあえて『ヤツ』と呼ぶがそいつのせいだ。」
【その件だと、俺も一つだけ気になる名前を知っているよ?】
「本当か兄弟!?」
【公国の騒動の時の話だ。たしか「ベヘモド」と言う名前の悪魔が暗躍していた。そいつとは戦ってもいないし会った事も無い。】
「・・・すぐに調べさせる!ファリス!」
「はい。早速、文献を当たります。情報が確かならば神都に行けば文献から悪魔の事が調べられると思います。」
いつの間にか部屋の隅にいたファリスさんがそう答えると、ノモスが命令する。
「大至急調べてくれ。最優先だ!」
「かしこまりました。高速艇をお借りします。」
「かまわん、行ってくれ!」
そう言うとファリスさんは一礼して部屋から出て行った。
「・・・よく言ってくれた、兄弟!これで神都に情報があれば前に進む事が出来る!」
【そんな、あの戦争が・・・利用されただけだと!?】
しかも、まさかここで伝説の魔王とは!
そんな嫌な予感の一端がもうすぐこの街に起こるのか!?
止められるだろうか?
いや止めなければ!
「兄弟、まず落ちつけ。この情報は広めない方が良い。・・・俺達には重すぎる情報だ。ドリュカス老には俺から報告しておこう。」
【そうだね・・・だが『アリステリア様』に誓おう。魔王の復活を阻止すると!】
そういえば『アリステリア様』は神都で会おうって言ってたな。
この事を伝えようと思っていたのか?
その衝撃過ぎる情報は、俺の心を激しく揺さぶるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
部屋に戻るとベッドに倒れこむ。
さすがに頭が疲れた。
主にノモスの情報のせいだ。
おいおい、情報が確かなら勇者がいないんだ。
魔王なんて復活したら誰も勝てないんじゃないだろうか?
「ヘファ君。どうしました?顔が真面目ですよー?」
【ナナリーさん、俺だって真面目になる時もありますよ?】
「ふふ、でも大体いやらしい事を想像している時よね?」
【あのね、ルイス・・・。】
そうだ、ルイスやナナリーさん。
それにリズ、ベス、マオ、アリス。
皆がいるじゃないか!
何処かに避難できるような、安全な所はない物だろうか?
いや、都合のよすぎる考えだ。
とりあえず、怠惰さん相手にどうやってこの街を守るかを考えよう。
「・・・ょっと、ちょっと?んー、大丈夫かしら?」
【ん?】
目の前にルイスの顔があった。
「ちょっと、どうしたのよ?今日の貴方、本当に変よ?」
【・・・ふっふっふ、引っかかったな小娘!これでもう俺からは逃れられまい!】
そう言って二つの膨らみを揉みしだく。
「ちょっと!もう!愛してくれるならナナリーさんも一緒じゃないと嫌よ!最近の貴方激しすぎるんだから!」
「そうですよ?こちらが二人でも敵わないんですからねー?」
【ふへへへ。ナナリーさんも可愛がるぞー!】
今度はナナリーさんの二つの膨らみを揉みしだく。
「あん、激しいのも好きですが、出来れば優しくして頂けるとありがたいですー!」
そうだ、この笑顔を守る為なら!
とりあえず今はこの幸せを噛みしめよう。
そう心に誓うといつも通りのヘファイストスを演じるのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日。
三人で祈りを捧げる。
「「【『アリステリア様』本日も良い一日であります様に。】」」
祈りが終わると二人は仕事へ行った。
ドリュカス様とレガイアさん率いる騎士団の治安維持、ノモスの援助、ミカの連れてきた職人さん達のおかげで、通りからは子供や女性が減って来た。
物価も落ち着いてきて、肉串が街の襲撃前と同じ銭貨三枚の値段になった。
うんうん、良い兆候だね。
そんな中、俺は今日も出来る事をやっている。
今日は住宅の施工だ。
人口が増えて来て、とうとう、十万人になったとノモスから報告があったからだ。
そんな中とある人物を見つけた。
さっそく声をかける。
【復興の様子はどうですか?爺さん。】
「あんちゃんか、ベルフゴールの事は済まんかったな・・・。」
【そっちは任せてください。爺さんはいつも通りに、「ドーン」と構えてくれてればいいんですよ。】
爺さんの恰好をしたドリュカス様と話をしている。
だが、昨日の事は内緒にしておいた。
ただでさえ無理を掛けているのだ。
俺から更に追い打ちを掛けたくはない。
まあ、ノモスが上手い事、言ってくれているだろうしね。
「あんちゃん達のおかげで、一の月たらずでここまでの復興が出来た。感謝しか無いのう。」
【いや、爺さんやノモスのおかげですよ。】
「それは違うぞ?ノモス殿と話を付けたのはあんちゃんだ。そこは遠慮なく誇ると良い。」
【そんな物ですかね?】
「そんな物なんじゃよ?」
【ただ、ここまで人口が増えると街がどうなるのかが心配だね。】
「そこは、わしらの腕の見せ所じゃろうよ。」
【頼みますよ?爺さん。】
「ふぉっふぉっふぉ。任せておけ。それでベルフゴールの事じゃが・・・。」
【はい、オーガの牙の皆も準備は整いつつあります。それで聞いておきたい事があるのですが・・・。】
「あんちゃんの頼みなんじゃ。無理な事ではあるまい?」
【ええ、もうすぐ商業ギルドのマスターが赴任して来ると言う事なのでどのような人物か知っておきたくって。御存じありませんか?】
「ふむ、老獪な婆じゃよ。それこそグランドマスターを務めていたような婆じゃ。」
【そんな方が来て下さるのですか?】
「うむ、これもノモス殿のおかげじゃがな。これで軌道に乗れる。」
【では、その方が来たら俺はベルフゴール対策に集中しますね。】
「それはこちらでは対抗できんからのう。そっちはあんちゃん、いや、アーサー達、オーガの牙に任せよう。」
【・・・知ってたんですね。俺がアーサーだと。】
「済まんのう、じゃがこれで安心できるというものじゃ。」
【・・・爺さん、引退には早いですよ?】
寂しそうなその背中に活を入れる様に言う。
「そうじゃのお、これもあんちゃんのせいじゃからな。また美味いもんでも食わしてくれ。」
【落ち着いたら必ず。それまで死なないで下さいよ、爺さん。】
「レガイアは良い後継ぎなのじゃが子供に甘い所があるからのう。」
【そこは、まだ爺さんの力が必要なんですよ。レガイア様を導けるのは爺さんだけですからね?】
「ふむ、若いもんから教えを受けるとはな・・・もう少し踏ん張るかのぅ。」
【その言葉を聞けたので、俺は前進できます。後ろからのんびりと付いて来て下さいよ、爺さん。】
「ふぉっふぉっふぉ。英雄と馬を並べられるとはのう。喜ばしいのお。」
【本当の英雄はジャスティンさんやノモスのような人の事ですよ。俺は陰で良いんです。】
「そう言う所は英雄と思えるがのう?」
【ごめん被りますね!】
「ふぉっふぉっふぉ、わしは、あんちゃんのそう言う所は嫌いではないぞ?」
【さてと、作業に戻りますね。一件でも多く作らないといけないんでね。】
「・・・頼んだぞ!あんちゃん。」
そう言うとドリュカス様と別れ、建築に向かうのだった。
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昼時になると、ルイスとナナリーさんが昼御飯を持って来てくれる。
これもいつものになって来た光景だった。
バスケットを覆っているナフキンを取ると普通のハムサンドに見える。
【ルイスさんや、今日は味見したんだよね?】
「だ、大丈夫よ!今度は、ナナリーさんが大丈夫って言ってくれたわっ!」
「ヘファ君、頑張って下さいねー!」
【いただきます!】
覚悟を決めた。
食べてみる。
ん?
パンがパサパサしているが・・・。
【ルイス!美味いよ!新鮮な野菜が良いね!ハムも美味しい!】
「本当!嬉しいわ!」
【うん、なんか癖になる味だね!この酸っぱいのが玉葱と合っててとっても・・・。】
「「え!?」」
二人から声が上がる。
ん?
何か変な事を言ったのだろうか?
「あのー、ルイスさん。失敗したと言う、酸っぱいパンはどうしたのですかー?」
「・・・てへっ。」
可愛く言っているが俺は何を食わされたのだろうか?
「ああ、ヘファ君。変な物では無いので大丈夫ですよー?」
【で、この酸っぱいのはなんですか?しかも失敗作って聞こえましたが?】
「き、気のせいよ!」
「お酢が体に良いと言う事で、ソレを聞いたルイスさんが、ふごっ!」
「ナナリーさん、それは内緒ですって言いましたよね!」
ルイスが凄い顔をしてナナリーさんの口を塞いでいる。
「ふごふご、そうでした。内緒なんですー!」
どうやらお酢の酸っぱさらしい。
すんごく酸っぱい。
どれだけ入れたんだろうか?
ああ、そう言えばルイスに料理を教えるって言ってた気がするなぁ。
「・・・ごめんなさい。」
そうして、今日も無事に昼飯を終えた。
此処まで読んで下さって、誠にありがとうございます。
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります!
皆様には感謝しかございません!
BBQ、大変に楽しかったです。
創作の意欲もわくと言う物ですね!
皆様は、どうお過ごしでしょうか?
さあ、少しずつですが魔王関係の話が出てきました。
筆者はどうまとめる気なのでしょうか?
・・・頑張ります!
それでは 次話 新しい商業ギルドのマスター(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れさまでした!




