リニューアル、Byいつもの宿屋
いつも読んで下さっている皆様、こんばんは。
執筆終了しました。
お楽しみいただけると、幸いです。
俺達は、ナナリーさんを受け入れる準備を進めた。
そんな時だ。
この街が復興したと聞きつけて、冒険者や商人等もちらほらと戻って来ている。
ジャスティン達はゼパムさんに依頼されて、冒険者ギルドを立て直しているらしい。
俺は皆の為に、いつもの宿屋を建築している。
女将さんの理想が高すぎて、他の大工さん達がやめてしまったのだ。
そのおかげで一人でやっている訳なのだが、スキル様のおかげで難なくこなしている。
そして本日、俺に連れられてナナリーさんがやって来た。
【皆、此方の人がナナリーさんだ!】
「不束者ですが、皆さん、よろしくお願いしますねー。」
「ちょ・・・お、おっきい・・・お兄さんの趣味が丸見えね!」
リズさん、胸だけで判断しないで頂きたい。
「ル、ルイス姉も負けていない・・・です・・・。」
もちろん、ルイスにはルイスの良い所が・・・。
「ナナリーさん、よろしくお願いするです!」
最近のマオさんはとても素直ですね!
「ナナリーちゃん、よろしくなのです!」
アリスさんは、平常運転のようだ。
「こちらこそー。ふふ、可愛い妹達が出来て嬉しいですー。」
皆が、ナナリーさんに抱き着いて歓迎してくれている。
どうやら皆は無事に受け入れてくれたようだ。
ルイスはそんな皆を、暖かい目で見守っていた。
「ねえねえ、ナナリーさん?何をしたらそんなお兄さん好みの胸になるの!?」
「えーっと、あのー・・・っとですね、それはー・・・。」
「リズ姉・・・聞き方・・・!」
「ヘファさんも、その胸でいちころですね!」
「いちころなのですー!」
「貴女達はー!」
「いいんですよ、ルイスさんー。」
・・・どうなるかと思ったが、和気あいあいとしていたので安心した。
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そして俺は仕事に戻る。
女将さんと言う現場監督がいるせいでサボれない。
くぅ、休みが欲しい。
ブラックな企業に勤めてしまった。
いやいや、まだブラックと決まった訳では・・・。
しばらく建築しているとルイスとナナリーさんが陣中見舞いに来てくれた。
「進捗はどうなのですかー?」
【この際だから、一度更地にして作っていますよ。土台は出来ましたがもう少し時間が掛かりますね。】
「そうですかー・・・。」
遠い目をしたナナリーさんは、あの日の事を思い出しているのだろうか?
もう、そんな心配はさせないですよ。
安心して下さいね。
【隣の空いている土地も、ドリュカス様に許可を貰って使っちゃってるんで前より大きな宿屋になりますよ!】
「ふ~ん、それで、貴方は何をしているのかしらね?」
【何って・・・アイデアをだね・・・出しているんだよ。】
「ちょ、ちょっと、女将さんが此方を睨んでいるんだけれど・・・!?」
「ヘファイストス様?それでアイデアとやらは出たのですかー?」
良い考えが出て来ないかと、逆立ちで精神統一をしていた所だった。
残念ながら、ルイスもナナリーさんもパンツスタイルだった。
チェー、スカートなら絶対領域を破る自信があったんだけれどね。
【いやー、最近やる事が多くてね。よっと!】
そう言って立ち上がると気になった事を聞いてみる。
【それでルイスさんや、そのバスケットは何でしょうか?】
くるりと起き上がるとルイスが持っているバスケットが気になったので聞いてみた。
ナナリーさんはニコニコとしているがルイスは悔しそうにしている。
「こ、これは・・・もう!意地悪ね。貴方の御飯よ!ナナリーさんが作ってくれたわ。」
「ふふっ、早速、頂いて下さいねー。」
おおお、良い人からの手作り弁当だ!
憧れてたんだよねー。
新婚さんの気分とは、こんなにも心がウキウキする物だろうか!
【もちろんですよ!ありがとう、ナナリーさん!】
そう言って引っ手繰る様にバスケットを受け取ると、早速食べ始めた。
【ナナリーさん、モグモグ、このハムサンド美味しいですよ!モグモグ、これは元気が出ちゃうな!】
「そんな事を言っては駄目ですよ。ルイスさんがいるんですからねー?」
どうやら、ナナリーさんは、一歩引いて接してくれている様だ。
【それは勿論ですが、本当に美味しいですよ!やっぱり愛情がこもっていると、より美味しいんでしょうね!】
「あははは、お上手ですね。では、次も張り切っちゃいますよー?」
ナナリーさんとそんな会話をしていると、ルイスが遠慮がちに言って来る。
「ね、ねえ。そ、それなら・・・えっと、今度は私も作るから・・・食べてくれるわよね?」
おおっ!
マジか!
ルイスがそんな事を言ってくれるなんて。
嬉しくて飛び上がっちゃうじゃないか!
【ルイスの手料理なんて、初めてじゃないか!ありがたく頂くよ!】
「だ、だって、貴方の方が料理は上手じゃない!?」
【良いんだよ。ルイスが作ってくれたって言うのが大事なんだから!】
「そ、そういう物なの?」
「ルイスさん、そういう物なんですよー。」
「じゃ、じゃあ、今度作るわね?残さずに食べてよね・・・♪」
【もちろんだよ!楽しみになってきた!さてと・・・二人の期待には応えねば!】
赤い顔をしているルイスと、楽しそうにしているナナリーさんの応援を背に頑張って建築を続ける。
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「小僧!いつまでイチャイチャしているつもりだい!」
新しい宿は、現場監督の女将さんと相談して四階建てのレンガ造りにしようと言う事になった。
敷地が広くなったので大変だが皆の期待には応えねば!
レンガ等はノモス経由で持って来てもらう予定だ。
が、・・・レンガが直ぐに揃ってしまった。
最優先で揃えましたと、誇らしげにバウマンさんが言ってくれた。
さすがのバウマン様!
そして俺は、スキルを総動員して造る、作る、創る。
今度の宿屋はお風呂付きの物を建てる予定だ。
ふははは!
なんと土台を作っている時に、偶然見つけてしまった天然の温泉だ!
それで、湯船を作るんだぜ!
夢だった湯船だ!
石材で土台を作ったので、そこに基礎となる木材を建てて行く。
一階の天井は高めに設計しておいた。
明かりも細工スキルで魔道具を作り明るく出来る様にしておく。
木材を建て終わると板を張り付けレンガで壁を作る。
補強しながら作って行く。
レンガを石灰岩等を粉砕した石灰で作ったセメントもどきでくっつけ並べていく。
屋根は石工スキルで石材を加工し、瓦の様な物を作り雨漏りのしない様に並べて行った。
一階の床板はコーティング剤を使っておいたので水や酒、料理を零しても大丈夫だ。
ちょっと時代を先取りしすぎたかな?
息子夫婦の残した宿だと言う事で、入り口はあの襲撃にも耐えた扉を修繕して使った。
一階に食堂兼酒場と厨房。
カウンターが二十席と二人掛けのテーブルが四席に四人掛けのテーブルが八席、更に大人数用の八人掛けのテーブルが二席。
キッチン裏のスペースには、女将さんの部屋と従業員さん用の部屋が二部屋。
こちらは着替えるのも考えて、二段ベッドにしてある。
更に革新的なトイレと、そしてお風呂!
もちろん、サウナではなく湯船だ!
脱衣所も忘れずに作ってある。
排水溝は下水道に繋がっている。
この世界の下水にはスライムがいるのだそうだ。
スライムは不純物を取り除いて食べてくれると言う、ありがたい生き物なのだそうだ。
二階には豪華客船の三等客室のような部屋だが一人部屋を十八部屋と二人部屋を八部屋作った。
各部屋の壁には、魔法で仕掛けを作った防音の壁なので快適だろう。
少しぐらい暴れても隣には聞こえない。
そう、少しぐらい・・・。
おっほん、おっほん!
西側の壁面の中央に上下する階段を作ってある。
そして三階には、四人部屋を八部屋作った。
廊下が広く作ってあり、少しだけ豪奢だ。
三階と四階には、エギエネスシティで購入してきた絨毯をふんだんに使ってある。
俺が防水加工をしたスペシャルな奴だ。
もちろん壁と床は防音だ。
四階は、王侯貴族様でも泊まれるような部屋を作った。
此処の階に時間を掛けすぎてしまった。
何せものすごく豪奢な作りにしたのだ。
四階のベッドだけ特注品だったので、豪華な木造りで天蓋のあるキングサイズのベッドにした。
もちろん低反発などは無いのだが羊毛をふんだんに使ったフカフカのベッドだ。
更に家具を作り、並べて行く。
もちろん入り口近くには使用人の部屋も作ってある。
二段ベッドだが四人が眠れるようになっている。
四階は基本部屋での食事となるので、運ぶのが大変だろうと思い、食事だけだがエレベーターで運ぶように設計した。
これで階段は人間だけの行き来で大丈夫だろう。
女将さんには魔道具と説明してある。
もちろん、この世界にはエスカレーターもエレベーターも無いからね。
チートスキルのおかげで、十日も過ぎると宿屋は形に成った。
・・・何とか出来上がった。
流石のチートスキル。
大工作業とか初めてにしては良く出来ているんじゃないかね?
出来上がった外観を皆で見上げる。
「分かってはいたけれど・・・また、お兄さんがとんでもない物を作ったわ・・・。」
「あの・・・ヘファさん・・・?今度は、ここに泊まれるんですか・・・?」
「高いですね、上からも見てみたいですね!」
「この辺りで一番大きなお店なのです!」
「毎日見てはいたけれど、凄いわね・・・あの土台からこんな物が・・・。」
「はぁー・・・流石ですね、ヘファイストス様ー・・・。」
「ほほぅ、小僧、注文通りの建物じゃないか!」
【女将さんの言う通りに作ってありますし、内装にも凝ってますよ?しかも、国内でも限られたの湯船のある宿屋ですからね!】
「ほほー・・・風呂って言うのは分かるけれど、湯船って言うのはどんなもんなんだい?」
【まあ、使ってみてからのお楽しみってやつですよ!】
「っはん、生意気な事を・・・だが・・・ありがとさんよ・・・。」
最後の方は聞こえない様に言ったのだろうが、俺の耳には聞こえていた。
そして、最初は女将さんに入ってもらおうと決めていたので、女将さんに中に入ってもらった。
思い出の扉を潜り、各階を見に行っているのだろう。
けれども、一時間以上経っても女将さんが戻ってこない。
中に入った女将さんが中々戻って来ないので心配して扉の隙間から覗くと、あの女将さんが泣いていたよ。
女将さんが泣いている所なんて初めて見た。
まあ、それだけの物を作れたのだろう。
ここは素直に喜んでおこう。
しばらくして目を赤くして出て来た女将さんと話をした。
【女将さん、どうでした?】
「小僧!・・・いや、もう小僧とは呼べないね。」
【こんな事でしか恩返し出来ないんですから小僧で大丈夫ですよ。女将さん。】
そう言うと背中をバシバシと叩かれた。
いつもより痛かった。
・・・とても喜んでくれたようで何よりだ。
そして宿屋は、いつでも開業できるようになった。
問題は従業員とお客だ。
従業員は、当面うちの子達で何とか出来るだろう。
お客さんがなぁ・・・。
そう、まだやる事はいっぱいあるのだ。
街の復興も手伝わないとだし・・・忘れていたけれども大悪魔の事もそうだ。
まだまだ、これは復興の第一歩なんだ。
すると、女将さんに呼び出された。
何だろうと思っていると、記念すべき第一号のお客さんを俺にするとの事だった。
「小僧、第一号はお前さんだ。入りな。」
【お、おっす。なんか緊張するっすね!】
「良いからとっとと入りな!」
【イェス!マム!】
丁度良い部屋が三階の四人部屋だったので、二部屋を借りる旨を伝えると喜んでくれた。
俺が作った建物なので、建築代として宿代は此処にいる限りは貰えないと女将さんに言われた。
宿代は払うと言ったが女将さんが頑固に拒否したので、何か別な物で返そうと思う。
こうして宿帳を記入し、俺達は最初のお客となった。
二部屋借りた四人部屋の部屋割りは、俺、ルイス、ナナリーさんで一部屋。
リズ、ベス、マオ、アリスで一部屋で振り分けた。
成年組と未成年組とで別れた。
最初の一歩だ。
皆で仲良く行こう。
こうして新たな体制で生活をする事になった。
ナナリーさんから相談を受けたのは、そんな暖かい陽気の一日目の夜だった。
その日の夜は良い月が出ていた。
二人で梅酒を飲んでいると相談を受けたのだ。
「ねえ、ヘファイストス様。ギルドを辞めて貴方の手伝いをしようと思っているんだけれど、御迷惑でしょうかー?」
【それはありがたいのですが、よろしいんのですか?それと、ナナリーさんの方が年上なので様とか呼ばれるとくすぐったいんですよね。】
「うーん、じゃあ・・・ヘファ君で良いですかねー?」
【それで構いませんよ。ナナリーさんや皆には苦労を掛けさせちゃって申し訳ないです。】
「それは違いますよ、私は貴方の側にいられるのが、心から嬉しいんですよー?」
そう言うとナナリーさんが抱きしめてくれる。
「これだけは、ルイスさんにも負けませんからねー・・・。」
二つの膨らみの破壊力は抜群だ!
【ナナリーさん・・・心地良いです。】
「あれだけ疎まれていたのが嘘のようです・・・。今はこの胸に感謝しているんですよー?」
【そうなんですか?それは世の男共に見る目が無いんですよ。こんなにも柔らかくて癒してくれるんですから。】
「ふふっ、貴方に会えて良かったです。これで田舎の母親にも良い報告が出来ますー。」
【ナナリーさんは、お母さんが御息災でいらっしゃるんですか?】
「ええ、此処よりも田舎なので不便をかけていますけれどねー。」
【あの、・・・ナナリーさん。俺には目標があってですね、心の中で整理がついて形に成ったら話しますね。きっとお母様も喜んでくれるはずです。】
「ふふっ、その時を楽しみにしてますよー。」
そう言うと微笑んでくれた。
・・・愛おしい。
キスぐらいなら許してくれないかな?
【ナナリーさん、いや俺のナナリー、く、口付けをしても良いかな?】
思い切って聞いてみた。
「私は貴方の物ですから、いつでもして下さいねー。」
だが、キスをしようとしたのだが目を閉じてくれない。
【では・・・あの、目を閉じてもらえますか?】
「そうすると、貴方の顔が見れないじゃないですかー?」
【そ、そうですか。じゃ、じゃあ、行きます。】
唇にキスをすると更に抱きしめてくれる。
「ふうっ、私はこんなにも幸せなんです。いつでもして下さいねー。」
【・・・あの、我慢が出来なくなったら、こ、今度は襲い掛かりますよ?】
「ふふっ、分かりました。準備して待っていますね。でも・・・今日の所は失礼しますねー。」
素のナナリーさんのしゃべり方はこんなにも優しく心に響く声だった。
うん、明日も頑張ろう。
ナナリーさんは俺をそんな気にさせてくれたのだった。
そしてナナリーさんがギルドを辞めたのは次の日だった。
「皆さん、お仕事も御一緒です。これからよろしくお願いしますねー!」
そこには笑顔のナナリーさんがいた。
ナナリーさんが幸せそうで良かった。
うん、後悔はしていない。
だって大切な人が増えたのだから!
そんなナナリーさんやルイス達には苦労は掛けない様にと心に誓うのだった。
しばらくして、いつもの宿屋はリニューアルしてオープンした。
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