大切な人
いつも読んで下さっている皆様方、こんにちは。
執筆終わりました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
ルイスと二人で仮設の商業ギルドへ行くと、受付にアリシアさんがいた。
「アリシアさん、こんにちは!」
「こんにちは、ヘファイストス様。・・・そちらの女性は・・・初めまして、ですね?」
【ああ、俺の良い人なんだ。紹介するよ。こちらが・・・。】
「御紹介に預かりました、『ルイス』と申します。いつもこの人がお世話になっているようで、申し訳ありません。」
申し訳ありませんって何かね?
いや、確かに碌な事をしてないような気がするが・・・。
「こちらこそ、お世話になっております。私はギルド職員の『アリシア』と申します。今後共、よろしくお願い致します。ルイスさん。」
二人共、頭を下げて挨拶をしている。
【それでアリシアさん・・・ナナリーさんは、出勤されていらっしゃいますか?】
俺がそう聞くとアリシアさんが答えてくれる。
「・・・成程、それでは、彼女を呼んできます。」
アリシアさんは、俺を一瞥すると天幕の奥へ向かった。
・・・成程?
何かやらかした事はあっただろうか?
ルイスの目が『アンタまた何かやらかしているんじゃないでしょうね?』と言う目に変わっている。
そ、そんな事無いよ?
・・・無いよね?
しばらく待っていると、瞼が腫れあがって目の赤いナナリーさんとアリシアさんがやって来た。
ナナリーさんはどうやら泣き腫らしているのだろう。
それに、目の下にもクマがある。
相当に思い悩んでいる様だった。
それで今日は、受付には立っていなかったのだろうか?
「・・・アリシアさん。少し外しますね。・・・後はお願いしますー。」
ナナリーさんは、アリシアさんにそう言うと俺達の方に向き直る。
「お待たせ致しました。それでは話の出来る所へ移動しましょうかー?」
「「はい。」」
二人でそう返事をすると、ナナリーさんの後を付いて歩いて行く。
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しばらく通りを歩く。
此処までナナリーさんとの会話は無い。
比較的無事だった南通りをしばらく歩くと、無事な建物の軽食店を見つけた。
「ここの軽食店が、よろしいですねー。」
ナナリーさんがそう言って、振り返りもせずに店の中に入る。
少し躊躇ったが続けて俺達も入る。
「さすがに、誰もいませんね・・・奥へ行きましょうかー。」
「「はい。」」
席に座り、まだ値段の高い青紅茶を三人分頼むとナナリーさんが話し出す。
「ヘファイストス様、ルイスさんの御二人には、本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんー。」
そう言ってルイスに頭を下げて来る。
【良いんですよ。これぐらいなら迷惑では無いですから頭を上げて下さい。】
俺がそう言うとナナリーさんが頭を上げる。
【それで、ナナリーさんの本音を聞きたくて機会を設けました。もちろん俺の気持ちも。】
「・・・ルイスさんには申し訳ないのですが。やはり諦められないのです。申し訳・・・ありませんー。」
もう一度頭を下げて来る。
「うっうっ・・・申し訳ありませんー・・・。」
どうやら泣いている様だ。
そんな彼女にルイスが優しく言う。
「頭を上げて下さいね、ナナリーさん。」
ルイスがそう言うとナナリーさんが頭を上げてルイスを見ながら言って来る。
「先日も言いました様に、御二人の邪魔をする事は決して致しません。ですが、その隅で良いのです。私にも居場所を下さいませんかー?」
「・・・ナナリーさん、彼は貴女の事も、大事に、大切に思っているんです。」
「え!?」
「なので、貴女にも彼の側にいる事を・・・受け入れようと二人で話し合いました。」
「ル、ルイスさんは、それでよろしいのですかー?」
「はい。ただ、先に言っておきますね。彼の隣は譲りません。どんな事があってもです。」
強い言い方ではないが、断固とした意志を持ってルイスは言う。
「はい、隅で良いんです・・・お願いします。側にいる事を、認めて・・・下さいー。」
「ねえ、ナナリーさん。貴女も彼の事を愛しているのですね?」
「はい、そうです、好き、いえ、愛していますー。」
「ふうっ・・・なら、私が言う事はありません。この人の言葉を聞いて下さい。」
ルイスが合図するように俺を見る。
そして俺は話始めた。
【ナナリーさんは、俺の理想のお姉さんです。いつも見ていました。】
「はい・・・。」
【ナナリーさんに死んでほしくなかったので、代償があると言う魔法は使いましたが、俺は代償の事は知りませんでしたし、後悔もしていません。】
「・・・。」
【必死だったのもありますが、貴女に死んでほしくは無かった。これは本心です。】
「・・・。」
【姉だと思っていた人が、いつの間にか心の中にいたんです。貴女は俺にとってかけがえのない人の一人になっていたんです。】
「そ、それではー・・・!?」
【い、いいですか?恥ずかしいので一度だけ言いますね。・・・好きです、ナナリー。愛しています。これからもルイスと一緒に俺を支えて下さいませんか?】
その言葉を聞くと呪縛の解かれたように、ナナリーさんは顔を赤くして両手で頬を押さえ涙を流している。
それは嗚咽となって店内に響き渡る。
「うっうっ、ありがとうございます。ルイスさん。こんな私を受け入れて下さって、うううっ、・・・ありがとうございます。」
「ナナリーさん、察するに、貴女はその胸の事で苦労されたのでしょう?これからは彼も私も側にいます。もちろん姉妹達もです。」
「ありがとうございます、ルイスさん。ありがとうございます、ヘファイストス様ー。」
「おっほん、それでは、これからよろしくお願い致しますね。」
ルイスが手を差し出す。
「こちらこそ、よろしくお願い致しますー。」
そう言ってナナリーさんが手を握る。
【ナナリーさん、これからもよろしくね!】
二人の手の上に俺も手を重ねる。
「はい、ヘファイストス様。いえ、愛しのヘファイストス。」
こうして、ナナリーさんは俺の二番目の良い人になった。
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店を出ると、疑問に思ったので聞いてみる。
【そう言えば、ナナリーさんって、今は何処に住んでるの?】
俺がそう聞くと答えてくれる。
「ギルドの宿舎ですね。一人では十分の広さなのですよー。先の襲撃で崩れてしまいましたが・・・今は仮設の天幕ですねー。」
涙の止まったナナリーさんは、微笑みいつもの様にそう言う。
だが、瞼は腫れていて、目が赤いしクマもある。
それを見かねてポーションを取り出す。
【ナナリーさん。このポーションを飲んでください。】
そう言ってポーションを渡す。
「・・・頂きますねー。」
ナナリーさんは受け取り疑いもせずに飲み干す。
すると目の腫れもクマも無くなっていく。
「体が軽く・・・すごい効き目ですね。流石はヘファイストス様ですねー。」
「ナナリーさん、天幕なら何処でも同じですし丁度良いですね。引っ越しをしましょう。早速ですが・・・明日、迎えに来ますので用意をしておいて下さいね。」
ルイスがそう言うとナナリーさんが肯く。
「分かりました。準備しておきます、楽しみにしていますねー。」
ナナリーさんはそう言うと仮設のギルドに戻って行った。
二人で、その嬉しそうな背中を見送るとルイスがため息をつく。
「はぁ・・・さて、皆に何て言おうかしらね?」
【あのさ、・・・結婚はルイスが先じゃないと嫌だよ?」】
「そ、そんな事を言ってもしばらくお預けですらね!」
どうやらルイス様は不機嫌なようだ。
寂しいなあ、マイサンよ?
「じゃあ、いつもの所に戻りましょうか。」
【うん、ルイス!・・・ねえ、手を繋いでも良い?】
「繋いでも良いから、さっさと戻るわよ?」
【ありがとう、愛しいルイス。】
手を繋ぎ、指を絡める。
「う、嬉しいけど・・・駄目ですからね!しばらくは我慢しなさい。これは罰ですからね?」
【ぐぬぬぬ・・・でも、一緒には寝てくれるんでしょう?】
「そ、それは構わないけれど・・・。」
【なら、頑張って我慢するよ。】
「そうね、頑張って頂戴!」
【分かったよ、ルイス。】
俺がそう言うと、顔を赤くしたルイスといつもの宿屋予定地の天幕へ戻るのだった。
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「ちょ!?お兄さんに、他に良い人が出来た!?」
「ほう、早速、浮気ですか・・・?」
「ヘファさん・・・結婚もしていないのに、二番目さんとは・・・さすがにルイス姉が可哀そうですよ?」
「ヘファさん、すけべは駄目って女将さんが言ってたのです!」
頭を下げているのだが感じる。
皆からの視線が痛い。
当然だろう。
あの、アリスさんや、髪の毛を引っ張るのは止めてくれないかな?
【いや、もちろんルイスの事が一番好きなのは変わらないんだけれど、その人の事も好きなんだ。大切に思っているんだよ・・・。】
ああっ、皆の視線が痛い。
アリスさんや、髪の毛が抜けちゃうから、そろそろ止めてくれないかな?
その様子を見てルイスが言ってくれる。
「・・・そう、だから許してあげたの。皆も許してあげて頂戴、この通りよ。」
そう言ってルイスが頭を下げる。
二人で頭を下げていると溜息が聞こえてきた。
「はぁっ・・・ルイス姉が良いならそれで良いけど。・・・お兄さん、いい!?三人目は絶対に私だからね!」
今の所、三人目の事は考えていないですよ、リズさん。
「ルイス姉が・・・納得しているなら・・・良いです・・・ですが・・・久しぶりに大トロが・・・食べたいですね・・・。」
それは催促と言う名の賄賂ですかベスさん?
「ふぅ、仕方がありません。ルイス姉が良いなら認めましょう。」
マオさん、やけに素直ですね。
「ルイスちゃんは良い子なのです!」
そうなんだよアリス!
俺にはもったいないぐらいの良い人なんだ!
【皆、ありがとう。明日この天幕に来るからね。そうしたら、改めて紹介するよ。】
「優しいお姉さんだから、皆も意地悪しちゃ駄目よ?」
「「「分かりましたー!」」」
元気な返事が返って来た。
どうやら認めてくれたらしい。
後は、ナナリーさんと俺の努力次第だろう。
皆に認められるように頑張ろう。
うん、色々と・・・頑張ろう。
此処まで読んで下さって、誠にありがとうございます。
まずは、いつものから!
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皆様に感謝を!
それでは 次話 リニューアル、Byいつもの宿屋(仮 でお会い致しましょう。
お疲れ様でした!