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友と援助

いつも読んで下さっていらっしゃる皆様方、お待たせいたしました。

執筆が終わりました。

お楽しみください。

エナの入街料を支払い街の中に入る。


同じく手続きをする。

その際にエナの分の『滞在許可札』を作ってもらった。

期限は六の月の間らしい。

懐が痛いが仕方あるまい。

全身黒い鎧を纏った衛兵さんが、此方を見て言って来る。


「ようこそ!『帝都プロエレスフィ』へ!」


元気良く言ってくれた。


ほー、ここがクヴァール帝国の帝都なのか。


流石の大都市。

港がでかいし人の通りもオーカムの比ではない。

店の数もすごく多い。

オルタンシア公国の公都より三倍はでかいんじゃないだろうか?

あのでかい建物は城か?

・・・でっけぇーなぁ!

あんな所に住むとトイレだけでも大変そうだ。


そんな感慨にふけっているとそれをぶち壊す様に声が掛かる。


「ねえ、ダーリン、何を買い付けに来たのよ?」


【ダーリンじゃないけどね。食料だよ。穀物が安いって聞いたからね。】


「やだ、エナと同じじゃない!これも運命なのね!」


【いやまったく、これっぽっちも関係ないよ?】


「まあ、つれないわね?一緒なのだからこれはう・ん・め・いなのよ!」


【ハァー、で、エナは食料を買ったら帰るんだろう?】


「ダーリンが連れて行ってくれるんでしょう?」


【俺は買い付けが終わったらキゴニス国家群に行く予定なんだよ。】


そう言うとエナが道端に座り込む。

なんか泣き出したぞ?


「私は捨てられるのね!ああ、これも運命なのね!でも乗り越えられるわ!二人なら!」


無視して先に進む。


【置いてくぞー?】


遠くから声をかける。


「やん、そんなつれないダーリンも素敵よ?」


【俺は忙しいんだ!】


これ以上付き合ってられない。

入街料は痛いが皆が待っているんだ。

とっとと、買い付けに行こう。

市場に行き相場を確認していると後ろから視線を感じる。


「じー・・・ああ!今、目が合ったわ!さすがダーリン、分かってるわね!」


気にしないようにした。


「そんなダーリンも素敵!」


放っておこう。

相場を調べていたら知り合いの大店おおだなを紹介してくれると言うのでありがたく受けておく。

そしてたどり着いたのが港にあるこの店だった。

店と言うか倉庫だろう?

いやーでかいねー。

伯爵邸が何個入るんだろうか?


丁度良い所にいた人に声を掛ける。


【あの、申し訳ありません。こちらのお店の店主様はいらっしゃいますか?】


「・・・店主は忙しいので代わりに私がお伺い致しますよ?」


【それは有難い。実は買い付けに来まして・・・。】


「何をお探しでございますか?」


【小麦です。この店が安くて大量に手に入ると聞いて来ました。】


「ほう・・・ふむ・・・では失礼ですが、テストをさせて下さいませんか?」


買い付けに来たのにテスト?

意味が分からん。

そう思ったのだが受けない訳には行かないだろう。

勘が告げて来る。


・・・この人やり手だ。


エナの方を見ると倉庫内をウロウロしていた。

アイツの事は放っておこう。


【ええ、結構ですよ。で、何をすればよろしいのですか?】


「簡単です。五種類の小麦を用意しますので『それぞれ』の産地を当てて頂きたいのです。」


【ふむ、それは難しいですね。】


「いえ、貴方には是非、試して頂きたい『アーサー殿』。」


【なっ!?】


思わず身構え、警戒する。

そう、俺は名前を名乗っていなかったのだ。

たしかに目立つ赤いフードマントで顔を隠してはいるが・・・。

噂で判断したのだろうか?

いや、この目はそんな甘っちょろい物ではない。

出来る限りの平静を保ち答える。


【分かりました。お受け致しましょう。】


冷や汗をかいたが、そう答える事が出来た。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


場所を移すと目隠しをされた。


何やらやっている様だった。

目隠しが取られると目の前に五つの皿が並ぶ。

皿に盛られた小麦の見た目は変わらない。


「では、お確かめ下さいませ。」


【・・・分かりまりました。】


一つ目の皿の小麦の匂いを嗅ぎ、指に付けて舐める。

「味覚スキル」が覚えてくれた。

産地はクヴァール帝国の上物だ。

新しい物だね。


二つ目の皿の小麦を同じように舐める。

産地はクヴァール帝国の上物だ。

新しい・・・

あれ?

おかしい。


三つ目の皿の小麦を同じように舐める。

産地はクヴァール帝国の上物だ?

あれ?

変だな?


四皿目も同じように舐める・・・


五皿目・・・


おかしいな?


もう一度順に舐めて行く。

ちょっと待て、全部同じだぞ!?

確か、それぞれの産地を当てろと言ったはずだ。


・・・試されているのか?


「ふふっ、お分かりになりましたか?」


そう言うと男はニヤニヤと笑っている。

そんな男に、俺は自信をもって答える。


【・・・全部ですが産地はクヴァール帝国の物ですね。それも上物で新しい小麦ですね。】


味覚スキルに嘘は無いだろう。

スキル様の力を信じる事にした。

その男は椅子から立ち上がりパチパチと手を叩く。


「素晴らしい!これを当てたのは貴方が初めてですよ。他の者は間違えるか適当に答えるだけでした。」


ふう、良かった試験は合格かな?

そう思っていると男が言って来る。


「それでは貴方の望みを一つだけ叶えましょう。お金ですか?美女ですか?それとも帝国の爵位ですか?」


【どれも魅力的ですが必要ございません。叶うなら我らが街『オーカム』に食料などの援助をお願い出来ませんでしょうか?】


今の所これが一番の望みだった。


「援助?それが望みですか?貴方の心のまま、正直に申しても良いのですよ?」


【・・・お金は稼げば良いですし、美女も良い人で間に合っております。それに爵位には興味がありません。】


公国を救った時にも話が上がっていたようだが俺達はそれを断ったのだ。

あの双子が残念がったのは言わないでも分かるだろう。


今回は、俺の望みを正直に答えた。

もうルイス達の痩せ細った姿等、見たくはない。


するとその男は愉快そうに大声を上げて笑った。


「ハハハハハハ!願い事が援助だけだとは。欲が無いのか・・・?だが、面白い御人だ。この『プルスィオス商会』の会頭、『ノモス』が確かに承りました!」


え!?

会頭って一番偉い人じゃねえか!

そうすると握手をして来る。

改めて名乗る。


【私は冒険者で、オーガの牙のアーサーと申します。よろしくお願いします。】


「こちらこそ、よろしくお願いします。アーサー殿。噂の英雄殿に会えるとは運が良い!」


どうやら話は、良い方向に転がってくれたようだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「成程、そう言う事ならば援助は惜しみませんよ?早速船で向かわせましょう。」


【よろしいのですか?貴方がたに見返りは、ほとんどありませんよ?】


「ええ、アナタが気に入りました。今度お会いする時は是非に本名で挨拶を交わしたいですな!」


偽名もバレている。

やはり侮れない観察眼と情報網だ。


「『バウマン』を呼べ大至急だ。」


「かしこまりました、会頭。」


そう言うといつの間にかいた男の人が何処かに向かう。

しばらくするとスーツを着こなした男性がやって来た。

貫禄はあるがノモスさんは別格のようだ。

その男性が挨拶して来る。


「初めまして、バウマンと申します。早速でございますが援助と伺いました。失礼ですが住民の数は何名いらっしゃるか把握しておりますか?」


そうだった!

住民の数なんか把握してないぞ?

爺さんかレガイアさんにでも聞いておけば良かったな。


仕方が無いので知っている情報を話す事にした。


【侵攻前は約五万。侵攻後は確認できておりません。死者の数も・・・。】


「かしこまりました、会頭。小麦と野菜類、調味料などの食料品と、水でよろしいですか?」


「十分な数を用意してくれよ?手抜かりなくな。構わんからどんどん出せ。二便でも三便でもだ。」


「それでは、一便目は明朝にでも出発致します。」


「それでいい、頼む、バウマン。」


そう言われると、バウマンさんは何処かに走って行った。

どうやら、これで援助が取り付けられたようだ。

これで街の皆が救われる。

良かった。


【この度は、支援して頂き、ありがとうございます。】


頭を下げるとおどけて言って来る。


「アーサー、君は友人だ。友が困っているのだよ、助けるのは当然じゃないかい?」


【友でも礼を言いますよね?本当に感謝を。】


更に頭を下げる。


「それなら・・・そうだね。私が困っている時も助けてくれれば良いさ。友とはそういう物だろう?後、私の事はノモスと呼び捨てで構わない。」


【恩人に対して、そう言う訳には・・・。】


「アーサー、君にはそう呼んでほしいんだ。」


【・・・では遠慮なく。ありがとう、ノモス。】


・・・懐が深い。

立場が同じだったとして俺には同じような事が出来るのであろうか?

そう思ったがありがたく受け取っておいた。

本当にありがとう、ノモス。


あれ?

そう言えば、エナはどうしたんだろうか?

・・・いや、視線を感じる。

其方を見ると柱の陰にいた。

なんかクネクネしているぞ?

何やってるんだ、アイツめ。


目が合うと頬を染めて言って来る。


「あん、ダーリン素敵!もう好きにして!」


「・・・この人が良い人かい、アーサー?」


【いえ、違いますね。『アリステリア様』に誓いを立てます。】


「それでは、一体どちら様なのかな?」


【何処かの、村の娘と言う事しか・・・。】


「ハッハッハ!人助けでもしたのかい!?益々好ましいよ、アーサー!」


どうやら株価が上がったようだ。


そして時計を見ると十五時になった所だった。

此処まで読んで下さって、誠にありがとうございます。

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に、励みになります!

皆様に感謝を!

それでは 次話 大船団と暗躍者(仮 でお会い致しましょう。

お疲れ様でした!

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