双子再び
いつも読んで下さっていらっしゃる方々、こんばんは。
執筆が終わりました。
お楽しみ頂けると幸いです。
いつもの赤いフードを被りそのゲートの前に立つ。
準備をしていたら夕方になってしまった。
大量の資金を借り受けた俺はフェアリー・ゲートを潜る。
景色が歪み治ると見た事のある景色だった。
どうやら無事に『オルタンシア公国』に着いたようだ。
目標は公都オルタンシアである。
あの双子に会うのは正直、憂鬱なんだよね。
だが、コネがあるのがあの二人だけなので会わない訳にはいかない。
今回は多少無理にでも、食料を買い付ける必要があるので我慢しよう。
それに、バドラック様の見舞いにも行かないといけないしね。
あれ?
結構やる事があるんじゃないか?
そう思ったが手遅れだ。
仕方が無い、一つずつ片づけて行こう。
そう思っていると、馬の嘶きと共に誰かが向かって来る。
ううむ、知っている人ならば良いのだけれどな。
そう思っていると知っている人だった。
「姫様達の、言った通りですね。」
【バートさんじゃないですか!お久しぶりですね。】
「ははは、本日の巡回は初めてですよ!お迎えに上がりました、アーサー殿!」
そう言って挨拶を交わす。
ん?
本日の?
二人の言った通り?
【バートさん、姫様方の言った通りとは?】
「それは、姫様方にお聞き下さいませ!」
俺は馬に飛び乗る。
「それでは向かいます!ハアッ!」
さすがに、バドラック様の副官を務めているだけはある。
馬の扱いが上手い。
二人乗りで城へと向かう。
今回はお忍びなので裏門へ向かうようだ。
「着きましたよ。アーサー殿!」
裏門にはすでに迎えが来ていた。
双子のお姫様と侍女頭を筆頭に数名侍女と数名の護衛達だった。
すると早速、姫様方から声が掛かる。
「「アーサー様!お待ちしておりましてよ!」」
【陛下、姫殿下。御久し振りでございます。】
そう言って馬から降り、跪くと矢継ぎ早に声が掛かる。
「アーサー様!跪く等と!!」
「私達の間柄、その様な事はお止め下さいませ!」
いやいや。
他の人の目もあるでしょう?
跪いた俺に少し怒ったように言って来る。
「「もう!止めるまでお話はしませんわよ?」」
【・・・それでは、失礼をさせて頂きます。御二人共お元気そうで何よりでございます。】
立ち上がり二人に微笑みかけるが抗議の声が上がる。
「そうですわ!返事も書いて下さらず、アーゼは寂しかったですわ!」
「左様でございます。リーゼも寂しかったですわ!」
そう、この二人こそ公国の支配者。
紅い目の金髪の美人がアーゼ女王陛下、金色の眼に銀髪の美人がリーゼ王妹殿下である。
【そ、そう言えば、バドラック閣下はお元気でございますか?】
話をそらそうと頑張ってみたがどうやら援軍がいたようだ。
「それは私から、閣下は元気でございますが激務の為、疲労が溜まっておいでです。本日から、お休みを頂いておりますので自宅にて休んでおられるはずです。」
バートさんがそう言って来る。
【そうですか。後程、御挨拶に伺いますね。】
「ありがたく!伝えておきましょう、ではっ!」
バートさんはそう言うと馬を翻し去って行った。
「「では、本日は夕御飯を揃えておりますのよ?是非、召し上がって下さいませ!」」
【陛下、王妹殿下。先に食料の買い付けをしたいのですが?】
「そんなつれない事はおっしゃらずに。」
「左様ですわ!それに、明日の朝の方が都合はよろしいと思われますわ。」
もう夕闇だったのでやっている店も少ないのだろう。
仕方が無いが忠告を聞いておく事にした。
【むう、それではお招きに応じさせていただきましょう・・・。】
好いてくれているとはいえ、むげに断ると後が怖い。
護衛を先頭に案内された部屋に入ると、二人が早速絡んで来る。
「ねえ、アーサー様?アーゼは寂しかったですわ・・・。」
「アーサー様?リーゼも寂しかったですわ・・・。」
そう言って、両側からしなだれかかって来る。
俺の胸でのの字を書く事も忘れない。
くすぐったいと思っていたが、今はそんな余裕が無い。
【陛下、王妹殿下。まずは話を聞いて頂きたく・・・。】
「もう、アーサー様!そんな呼び方は嫌でございますわ!」
「姉様の言う通りでございます!いつも通りに呼んで下さいませ!」
【んんっ、それでは・・・アーゼ様、リーゼ様。俺の言う事をお聞き遂げては頂けませんか?】
「アーサー様、それは御飯の後ではいけませんの?」
「左様ですわ!御飯を召し上がって下さいませ、きっと驚きますのよ!」
しかし、御飯をグイグイと押して来るな。
だが、皆の事が最優先だ。
【先にお話だけでも・・・聞いては頂けませんか?】
「もう、その様な顔をなさらないで下さいませ、アーサー様。お話とは買い付けの事ですわね?」
「アーサー様。それならば、隣国の『クヴァール帝国』がよろしいと思われますわ。」
【隣国・・・クヴァール帝国でございますか?】
「はい、穀物の有名な産地ですわよ。この国にも支店がございますわ。」
「上質なパンを作る為の小麦が安く、しかも大量に購入出来ますわ。」
【おお、それは願ってもない事ですね。】
二人はニヤリと笑う。
「皇帝陛下宛に、一筆書いて差し上げてもよろしいのですが・・・。」
「ふふっ、もちろん条件がございましてよ?」
この際、多少の条件は仕方が無いだろう。
【分かりました・・・出来る限り条件を飲ませて頂きます。】
「「それでは私共にお情けを頂きとうございますわ!」」
凄い食いつきだった。
両側からの『ズズイッ!』と言う圧力に少し引き気味になる。
だが、今回は流される訳には・・・。
話をそらそうとバドラック様の事を話に上げてみる。
【御二人が元気なのは分かりました。よろしければ体調の悪いと言うバドラック様の見舞いを先に済ませたいのですが?】
俺は話をそらそうと必死になる。
「「それでご返事は?」」
やはり、そんなに甘くは無かった。
どうやら譲っては下さらないようだ。
【・・・分かりました、本日はお付き合い致しましょう。】
俺は覚悟を決めた。
「それでは、まずは御飯からですわね?」
「そう致しましょう、姉様!」
リーゼ様が指を『パチン!』と鳴らすとメイドさんが三人カートを押して入って来た。
メイド長さん達が料理を並べて行くと気になる事があった。
・・・三人共、見た事がある顔じゃないか。
うん、デジャヴ。
前も同じだったよね?
一応確認する。
【あの、御二人共?薬は使っておりませんよね?】
「「・・・そ、そんな物は使っておりませんわ?」」
怪しすぎる。
前回はそれでやらかしちゃったからね。
【それでは御二人共、先にワインを飲んで頂けませんか?】
「「「・・・。」」」
変な間が流れる。
絶対に何かあるな。
そう思っていると泣きそうな顔をした二人が言って来る。
「酷いですわ!アーサー様!その様に疑う等!」
「そうですわ!でも、どうしてもと言うなら飲んで差し上げますわ!」
【どうしてもです、お願い致しますね。】
泣き真似だと言う事は分かっているからね。
そう言二人に言うと、こちらを見てがニッコリと笑う。
ううむ、無事には済まされそうにないぞ?
「では、リーゼからどうぞ!」
「ね、姉様こそどうぞ!」
「リーゼ、姉の言う事が聞けませんの?」
「姉様、此処は一緒に飲んで無実を証明致しませんと!」
「「それでは、一緒に飲みましょう!」」
そう言うと二人共『ゴクリ』とワインを飲み込む。
「「では、アーサー様もどうぞ!」」
【もうしばらくしたら頂きますよ。そう言えば・・・。】
念の為しばらく会話をして時間を空ける。
二人がグラスのワインを全て飲み干したのを見届けたので俺も飲む。
・・・なんかすごく酸っぱい。
お世辞にも美味しくない。
【す、少し酸っぱいワインでございますね?公国産の物なのですか?】
二人が怪しく「ニヤリ」と笑う。
「今回は味がするのですわ!アーサー様、こちらの料理も召し上がって下さいませ!」
「左様ですわ!ぜひ召し上がって下さいませ。アーサー様!」
【で、では、お言葉に甘えまして。】
今回はと言う言葉が引っかかった。
だが、考える暇を貰えずに料理を口に押し込まれる。
まずは鶏肉からみたいだ。
あれ?
この味は!
【ん!?まさか!これは胡椒でございますか!?】
「流石アーサー様、お分かりになりますか?」
「左様でございます。胡椒を使っておりますのよ?」
ここで胡椒か。
是非、手に入れたい物だ。
【料理が、格段に美味しくなっておりますね。】
「ええ、再調査をした所、国の各地で金鉱脈が発見されたのですわ。」
「それで、国の財政が潤って高級な胡椒等も買える様になったのですわ。」
【・・・御二人共、流石でございますね。】
一の月の半でそこまでの事が出来たのか。
しかも国の各地で金鉱脈とか。
もう王国は、財力でも兵力でも敵わないだろう。
「んんっ、では、リーゼ、そろそろのはずですわね?」
「ええ、左様でございますね、姉様。待ち遠しかったですわ!」
何がそろそろなのだろうか?
すると、体が、心臓がドクンと鳴る。
まさかまたか!?
いや、二人共ワインは飲んだはずだ!
慌てて二人を見る。
・・・すごく艶っぽい顔をしてこちらを見ている。
今更ながら毒スキルを使う。
真っ赤だった!
ああ・・・俺は馬鹿だ。
「今回は、遅効性の強力な媚薬でございますわ!」
「そうなのですわ!・・・可愛がって下さいませ。」
っく、やられた。
しかも、前回と同じ手口に引っかかってしまった。
またあの乾きが襲って来るのだろうか?
だが、前回やられた時に薬を使わないで下さいを言った事を思い出す。
【御二人共、薬は使わないと約束をして頂きましたよね?くぁっ!?】
駄目だ。
女の人が欲しい!
我慢が出来ない!
あの乾きが俺を襲う!
「前回の様になるまで、可愛がって頂きたかったのですわ!」
「左様ですわ!アーサー様の下さった、あの快感が忘れられませんの!」
「「それでは、御奉仕致しますわね・・・。」」
服を脱がされ上半身に舌を這わせて来る。
だが、そんな刺激では乾きが飢えない!
もう、駄目だ!
【駄目でございます!アーゼ様!まずはお仕置きからでございます!】
「ああん!アーサー様!お待ちしておりました!準備は出来てございますので、その雄々しい物で貫いて下さいませ!」
「ああ・・・アーサー様!私も我慢できませんわ!」
アーゼ様を抱き上げるとベッドへと運ぶ。
乱暴に服を脱がせる。
だが、その間も時間が惜しい。
物凄い乾きだった。
色々付いているので脱がすのを途中で諦めた俺はスカートを捲り上げる。
【もう行きますよ!アーゼ様!】
「ああっ!これを待っておりましたのよ!」
物欲しそうな顔のリーゼ様が目に移ったので叫ぶ!
「リーゼ様もです!今回は泣いても許して差し上げませんからね!!」
そう言って今回も搾り取られた?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝、目を覚ます。
いつもぐらいの時間だろう。
・・・昨日は激しかった。
後悔する。
くそ、またやられた。
こんな事をしている暇は無いのに!
いや、油断し流された俺が悪いのだが・・・。
アーゼ様も、リーゼ様も明け方までされていて凄い格好でねむ、いや気絶している。
気が付くとメイドさんが立っていた。
どうやら一日中交わっているのを見られていたらしい。
モジモジしている。
このままだと襲われそうだ。
いや、襲われた。
そして朝からメイドさん達にも搾り取られた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事が済んでいるはずなのだがメイドさん達の俺を見る視線が艶っぽい。
まだ物足りないのだろうか?
全員に三回はしたはずだが?
それに、アーゼ様とリーゼ様に見つからなくて良かった。
見つかったらと思うと怖くてしょうがない。
慌てて着替え終わると、落ち着いてから、昇っている朝日に向かって祈りを捧げる。
【『アリステリア様』、どうか買い付けの事もよろしくお願い致します。】
そう祈ってから、二人の突っ伏しているベッドに向かう。
【アーゼ様、リーゼ様。朝でございますよ?買い付けの許可を・・・。】
・・・返事が無い。
前回と同じように気絶しているのだろう。
これじゃあ、紹介状が貰え無いじゃないか。
・・・援助の事は今度お願いしてみよう。
頑張ったんですから許して下さいますよね?
立っているメイドさん達に後を頼むと部屋を出て行く。
まだねっとりとした視線を感じる。
完全に火のついた女性には、やはり物足りなかったのだろうか?
メイドさん達は、昨日から立ちっぱなしだったのでゆっくりと休んで下さいます様に。
後、何か捌け口があります様に・・・。
そう願うと巡回の兵士を見かけたので声をかける。
【おはようございます。今、お時間はあるでしょうか?】
「こ、これは、紅蓮のアーサー様!朝御飯の済んだ所です。何かございましたか?」
【バドラック閣下の家を御存じではありませんか?】
「ああ!それでは、御案内致しましょう。」
その兵士に案内されて、唯一の頼みであるバドラック様の家に案内してもらう。
しばらく城下の貴族街を歩く。
どうやら到着したようだ。
え?
小さな一軒家だった。
そんな考えをよそに、兵士さんがドアをノックする。
あれ?
元帥になったよね?
【バドラック元帥閣下!アーサー様がいらっしゃっております!】
ドアがゆっくりと開く。
そうすると奥さんだろうか?
品の良さそうなご年配の方が対応してくれた。
「おはようございます。貴方がアーサー様でございますか?その節は夫が大変な御恩を受けたと言っておりました。・・・御世話になりましたね。」
そう言って品良くお辞儀をする。
【いえいえ、こちらこそお世話になっております。倒れたと聞き、御見舞いに来た次第です。】
「ああ、ただの過労でございますよ。ふふ、お気になさらずに。主人はもう起きておりますので此方にどうぞ。」
案内してくれた兵士の人に礼を言って家の中に入る。
元帥閣下の物にしては小さい家だね。
あの二人の事だから、こんな小さな家には住まわせるはずは無いだろうしね。
と、言う事はバドラック様、もしくは奥方様の考えなのだろうか?
そう思って家の中を見まわしていると
「こちらですよ、アーサー様。」
夫人から声が掛かり、その部屋に入る。
元気そうなバドラック様がいらっしゃった。
「おお!アーサー殿ではないか!先の戦では大変世話になった!今日はどのような用向きなのだ?」
【お元気そうで何よりです、閣下。】
握手を交わし促されてリビングの椅子に座る。
バドラック様になら、正直に話しても大丈夫だろう。
思い切って事情を話してみた。
「なんと!オーカムの街にも惨劇が!?ベルフゴールの使い魔とは、成程な・・・では問題は食料だな?」
「にも」と言う所が引っかかった。
でも、どうやら力を貸してくれるようだ。
【左様でございます、閣下には申し訳ありませんが・・・。】
「英雄の頼みを断る者など、今のこの国にはおらんよ?」
【そうですか、後、御二人に聞きましたがかなり財政が立ち直ったようですね?】
「そうだ、立ち直った。と、言う事は、早速やられたのか?」
元帥閣下。
その指のサインは下品では無いのだろうか?
【はい、してやられました。】
「若いうちはそれで良いではないか!はっはっは!」
バドラックさんは笑っている。
しばらく笑っていると真面目な顔をして言って来る。
「肉と小麦を安く、しかも大量に扱っている所は知っておるぞ?」
クヴァール帝国からの出資の店でとにかく大量に小麦を売っているとの事だ。
昨日二人から聞いた支店の事だろう。
だが、大量にあるのならばありがたいね。
「早速、案内をしよう。まずは小麦からだな。」
そう聞くと奥方様が手伝い、バドラック様が支度をしだす。
【元帥閣下自らとは、お手数をおかけいたします。が、お休みの所、よろしいのですか?】
「何、構わんよ。フィーリア、少し出て来る。」
「行ってらっしゃいませ、貴方。」
奥方様に挨拶を済ませると、二人で街に向かう。
賑わう街をしばらく歩いていると、バドラック様が自慢げに言って来る。
「どうかね、数日ぶりのこの街は?」
【全体的に活気が戻って来たようですね。一の月の中程でこれなら、さぞ苦労なされた事でしょう?】
「姫様方のおかげなのだよ。細かい所だと戦争で親のいなくなった子供達の施設等を作り、未亡人になった女性達をそこで雇って働かせておるのだ。」
「ほほう、それは復興の勉強になります。」
細かい所まで気が付くこの施策はリーゼ様の発案だろうな。
「ハハハ、アーサー殿は為政者ではあるまい。」
【そうですが・・・勉強になりますよ?】
「ハハハ、そろそろ着くぞ。そこの角だ。」
そこは店と言うより大きな倉庫だった。
すると早速、人が駆け寄って来た。
【これはこれは、バドラック閣下。本日は自ら買い付けでございますか?】
店主さんだろうか?
バドラック様を見て、早速声を掛けて来た。
まだ20歳ぐらいに見えるのにしっかりしているようだ。
その顔は笑っているが目は笑っていない。
この人・・・やり手の商人だ。
「いや、知り合いの買い付けに付き合っておるのだよ。」
「左様でございますか、ではそちらのフードの方が今回のお客様でしょうか?」
「そうだ、聞いた事があろう。オーガの牙のアーサー殿だ。」
「おお!かの英雄の一人、紅蓮のアーサー様でございますか!お噂はかねがね。ようこそいらっしゃいました。」
その二つ名は健在なのか・・・。
恥ずかしいな。
フード越しだが顔が赤くなる。
【そ、それでは拝見させて頂きますね。】
早速、店内を見させてもらう。
「本日も本国から小麦が届きまして、今、仕分けておるのですよ。手前からですが古い物が置いてあります。」
【おお、ものすごい量ですね!】
倉庫にうず高く小麦の袋が積みあがっている。
上半身裸の、これぞ運び人!
と言う、筋肉ムッキムキの人達がたくさん行き来している。
「こちらを御覧下さい、このように滑らかな粉末です。良品ですよ。」
店主が小麦を見せて来る。
細かいし、混ざり物の無いような、きめ細やかな小麦だった。
試しに舐めさせてもらうと、味覚スキルがクヴァール帝国の上品質と教えてくれた。
【おお、ですが此処までの小麦だと、結構良い御値段もするのではございませんか?】
「いえ、それが本国が大豊作でございまして。安値でも良いから売れと毎日の様に送られてくるので困っているのですよ。」
「公国でも買ってはいるのだがな。」
【それなら丁度良いですね、そう言う事なら俺が買いましょう。】
「ありがとうございます。それで、いかほどご用意いたしましょうか?」
【この倉庫にある物を全部買います。】
「「っはあ!?」」
店主だけでなく、バドラック様も驚いている。
「い、いや、ありがたいのですけがアーサー様。失礼ですがどちらの国の方でございますか?」
【隣国のガリファリア王国の者ですよ。】
「それだと、結構な日数と運び賃が掛かってしまいますよ?」
【ああ、それならばバックパックがあるので大丈夫ですよ。】
「さ、左様ですか。では余った物を運ぶのでございますね?」
【いえ、全部バックパックへ入れます。】
「ハハハ、そんな量の入るバックパックは聞いた事がございませんよ。」
店主が笑っている。
俺も試した事は無いけれどね。
丁度良いので『アリステリア様』から頂いたストレージの機能を試してみよう。
【では、値段を交渉しましょう。】
「・・・それでは、大量に買って頂くので、一袋これぐらいではいかがですか?」
顔つきが変わった。
金銭の話になるのだ。
流石「商人」と言った所だろう。
それに・・・
おお、懐かしい。
算盤だ。
【おお、安いですね。だが他にも買わないといけないのですよ。このぐらいでどうですか?】
パチンと算盤の玉を弾いて値下げする。
「ならばこれでは?」
算盤の玉を弾いて値上げしてきた。
【このぐらいに負けて頂けると助かります。】
パチンと算盤の玉を弾いて更に値下げする。
「ふむ、分かりました、その値段で結構でございます。それで、輸送料なのですが護衛を入れるとこのぐらいは掛かりますが?」
男性が算盤を弾くがキッパリと答える。
【いえ、必要ありませんよ。それでは支払いを済ませましょう。】
断って支払いを済ませようとすると心配そうに声が掛かる。
「あの・・・本当に大丈夫でございますか?」
【まあ、見ていて下さい。】
多額な料金を支払うと、小麦の袋をどんどんとバックパックへ入れて行く。
・・・一時間程すると倉庫には何も無くなっていた。
「ま、まさか、本当に入るとは・・・流石は英雄と言った所か?」
バドラック様それは関係ないのではないだろうか?
「素晴らしい!凄いバックパックでございますね。」
【特別品なのですよ。】
『アリステリア様』から貰ったストレージの機能、凄いね。
「アーサー様、疑ってしまって申し訳ございませんでした。」
頭を下げて来るが普通は信じないだろうと思うよ?
【怒って等おりませんよ。言ったでしょう特別品だと。】
「ふぅ、今日は店じまいですね。荷を本国から送ってもらわないと。」
どうやら喜んでくれている様だ。
その目には安堵の感情が浮かんでいる様だった。
「さて、次は肉だな?」
「ええ、お願い致します。」
「ありがとうございました!またご利用下さいませ!」
御機嫌の店主が見送ってくれた。
その言葉を背にバドラック様と店を出る。
この方角だと裏門に向かっている様だな。
「アーサー殿、貴殿といると驚かされてばかりだな。」
そう言えばと思い出す。
【バドラック閣下。お見舞いを渡すのを忘れておりました。激務の時はこちらをお飲みになって下さい。】
そう言って上級の回復ポーションとスタミナポーションを渡す。
「おお、これは例のポーションだな。」
【左様です。ただ、本当は眠るのが一番なのでどうしてもと言う時だけにお飲み下さいね。】
「分かった、遠慮無く頂いておこう。」
【閣下が元気で良かったです、倒れられたと聞いてオーガの牙の面々も心配しておりましたよ。】
「そうか、では気を付けないといかんな。」
【姫様達も、まだまだ、バドラック閣下に頑張ってもらおうと思っておるはずなので・・・本当に気を付けて下さいね?】
「隣国まで噂が行くとはな。元帥ともなると色々と気遣いが増える物だな。」
【左様でございますね。かく言う私も今回の仕事を果たさなければ帰れません。】
「それは『ガリファリア王国の惨劇』の事を言っておるのかね?」
噂に、変な尾鰭が付いていなければいいのだが・・・。
【・・・左様です。バドラック閣下だから申し上げますが、王国の民は国に、いや国王に見捨てられたような状況なのですよ。】
「考えられんが、そこまで酷いのか?」
【左様です。今の公国が羨ましい限りです。それに、俺の力ではオーカムの事だけで精いっぱいでございますよ。】
「二人の姫様方が苦労しておられるのでな。わしも負けられぬよ。」
【そうですよ、倒れられたと聞いて皆、心配したんですからね?】
「ハハハ、済まぬな。まだ若い者には負けぬと働き続けた結果がこれだ。気を付けよう。」
そう言うと、裏門を出て今度は牧場に案内される。
「此処の肉も美味いぞ。しかも安く品質も良いし大量にある。」
【それでは伺ってみましょう。】
「おや、バドラック様、いらっしゃいませ。そちらの方は・・・?」
「ああ、アーサー殿だ。肉の買い付けに来られたのだよ。」
「英雄様が自ら!?それは光栄な事にございます。」
【早速ですが、見せて頂いてもよろしいですか?】
「それでは、案内を致しましょう。」
俺は此処でも金を惜しまずに購入する。
交渉して安く仕入れると牧場主が言って来る。
「英雄様、そんなにいっぱい購入されてどうするんですか?」
【私共の国、いや、街で待っている人達の為に買い込んでいるのですよ。】
「ふむ、早急に食料が必要なら良い所がありますよ?」
【ほう、それは何処の事でしょうか?】
「東にある徳之島諸島ですよ。あそこでは『米』と言う穀物が安く、しかもどの店も安価です。直ぐに使うなら良い穀物かと思いますよ。」
【ふむ、街に納めたら行ってみましょう。】
そう言えばゲームでもあったなー。
あそこだけ和風なんだよね。
アメリカンな和風なので見ていて面白いんだよね。
アメリカの人から見た仮想ジャパン。
「後は、北にある遊牧民族が納める国なら肉はもっと安値で手に入りますよ。」
【北と言うと「キゴニス国家群」ですかね?】
「おお、知っておりましたか?その国です。」
世界地図を見ておいて良かった。
【分かりました、行ってみますね。情報感謝します。】
「ありがとうございました。今後共、御贔屓に!」
その言葉を背に牧場を出る。
【バドラック様。早速、今日の分を届けてまいりますね。】
「アーサー殿、フェアリー・ゲートは此処からだと反対側だぞ?」
【魔法のリターンを使います。申し訳ありませんが今日はこれで失礼致しますね。案内をありがとうございました。】
「相変わらず忙しそうだな。気を付けてくれたまえ。」
【姫様方にもよろしくお伝え下さい。・・・それともう、薬は使わない様にと念を押しておいて下さいね?それでは失礼します。】
「ハハハ!伝えておこう!また会おう、アーサー殿!」
呪文を唱え力のある言葉を発する。
【4th、リターン!】
そう言うとバドラック様の前から消える。
「アーサー殿、其方も体を壊さぬようにな。」
そう言ったバドラック様の声は残念だが俺には聞こえなかった。
此処まで読んで下さり、誠にありがとうございます。
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります!
本当に感謝を!
今日は映画、 「ゴジラ-1.0」 を見てまいりました。
興味があったのですが機会が無く見逃すかと思っておりましたがやっと見に行けました。
古今の怪獣映画では「ガメラ レギオン襲来」以来久しぶりに素晴らしい怪獣映画だったと思います。
さすがのアカデミー賞受賞作品。
圧巻の一言でした。
未見の方は今からでもどうぞ。
さて、時間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
新人研修が始まり、教育係としての日々を過ごしております。
済みません、本当に忙しく・・・
それに、どうもこの二人が出ると18禁に・・・いやいや。
楽しみにして下さっていらっしゃる方々。
本当に申し訳ございません。
それでは 次話 実は厄介なやつだった(仮 でお会い致しましょう。
お疲れ様でした!