目覚めない大切な人
皆様方、いつも読んで下さってありがとうございます。
執筆終了致しました。
それでは、お楽しみください。
白い空間だった。
そう言えば前にもこんな事があったね。
そうすると白い玉があった。
『アリステリア様』だろう。
見ていると白い玉が羽の生えた人間の形を取って行く。
色も付き終わり、あの美しい女神様の形になると語り掛けて来る。
〖久しぶりですね、政仁。〗
【お久しぶりです、『アリステリア様』。ちょっと、酷いじゃないですか!】
〖待って下さい。ここでは神力が不足しているので、用件だけ言わせて頂きますね。〗
【あ、はい。】
緊張して身構える。
〖そんなに身構えなくても良いのですよ?政仁。〗
【はい。】
〖一度、『神都イヨルティ』の神殿へ来て下さい。そこでゆっくりと話をしましょう。〗
【分かりました。騒ぎが落ち着いたら必ず伺いますね。】
〖その時は・・・いえ、まだ早いようです。では、近いうちに必ず。〗
【分かりました。『アリステリア様』。いつも感謝しております。】
〖朝の祈りは届いておりますよ。貴方の祈りは私の楽しみの一つです。これからも忘れる事の無きように。頼みましたよ、政仁。〗
【はい!それではまたお会いしましょう!】
久しぶりに本物の『アリステリア様』に、お会いしてしまった!
やはり好みなんだよね。
美人だよね!
でもなんで急に現れたんだろうか?
まあ良い。
あれ?
暗くなってきた。
ああ、転移した時のヤツかな?
そして真っ暗になった。
その道を進む。
【今回は意識があるんだね。】
そう言って止まっていても仕方が無いので真っ暗の中を前方へ歩き続ける。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「何で私は生きているのだろうか?」
目を覚ました時に一番最初に言った事がそれだった。
目を閉じ記憶を遡る。
そう、今日も入り口であの人を見送っていた。
良い人のいるあの人を。
片思いだった。
告白はしていない。
気付かれてはいけない。
またこの胸の事を言われて終わりだろう。
そう思っていたからだ。
悲しい事を考えていたからだろうか?
それは突然起こった。
天井が崩れて来たのだ。
急いでアリシアさんを突き飛ばした。
そう言えば彼女は無事だろうか?
その後は暗くて寒くて痛いだけだった。
怖かったが動けなかった。
体に力が入らなかった。
体が冷えて来た。
泣くだけしか出来なかった。
最後にあの人を思う。
それぐらいなら許してくれないかな?
暗闇の中であの人が呼ぶ声が聞こえた。
【ナナリーさん!】
顔が見える。
ああ、最後に顔を見れて良かった。
愛しの、ヘファイストス様。
初めて会った時、彼は私の胸を見ていた。
また醜いと言われるのだろうか?
そう思っていたのだがあの人は違った。
その瞳は欲情したかのような眼であった。
おかしい。
この人は何なのだろうか?
そう思っていた。
だが会うたびにその視線を感じていた。
・・・おかしい。
この大きすぎる胸のせいで男性からは疎まれ続けた。
気付いたら20歳になっていた。
結婚の適齢期を過ぎてしまった。
それでも頑張って相手を探した。
だがすべて断られた。
何もかもこの胸のせいだった。
だがあの人は違った。
そう、この胸を見て喜んでいたのだ!
心が揺さぶられた。
だが、あの人には良い人がいる。
それを壊したくは無かった。
『ルイス』さん。
ごめんなさい。
ここにいる時だけで良いので、『あの人の心』を私に下さい。
そう思っているだけで幸せだった。
そして今日もあの人は私の胸を見る。
嬉しかった。
少しの幸福。
そして突然訪れた幸運!
先日は、更に手料理まで御馳走になってしまった。
これ程に、これ程に嬉しい事があっただろうか!?
男性から、しかも思い人から手料理を振舞ってもらうなど。
ありえない。
そう、これは夢。
気付かれてはいけない。
でも、最後に見る夢なの。
・・・ああ、最後なんだ。
そう思って意識を起こす
目を開け、左を見、右を見ると隣にはあの人がいた。
ああ、まだ夢を見ているんだ。
そう思い目を閉じる。
「・・・いつまで寝ているのですか?」
「もう少し良いじゃないですか、すごく良い夢を・・・あれー?」
「健康なようですね、安心しました。動けますか?」
「え!?夢じゃないー!?」
「まだ寝ぼけていらっしゃいますか?」
「ああ、いえいえ、そんな事は無いのですよ?アリシアさんー。」
慌てて上半身を起こす。
「貴女のおかげで掠り傷程度で済みました。感謝致します。」
そう言ってアリシアさんが頭を下げて来る。
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。無事で良かったですー。」
「そうですか。では、健康と判断致しますね。失礼します。」
パシン!
頬を張られた。
眼鏡が落ちる。
張られた頬が熱い。
何故ぶたれたのだろうか?
「貴方のおかげで不安と心配を知りました。このような感情は二度とごめんです。」
「・・・あれ?アリシアさん、貴女感情がー?」
「ええ、貴女から教わりました。もう二度とあんな事はしないで下さい。」
そう言うとアリシアさんが抱き着いて来る。
「この感情も好ましくありません。」
そう言うと涙を流している。
そんな彼女を抱きしめて言う。
「アリシアさん、その感情は『嬉しい』と言うんですよー?」
「嬉しくても涙が出るのですね。」
「ええ、人は出るんですよー?」
「そうですか。ではこの感情は何でしょうか?」
そう言ってアリシアさんはあの人のいる方を見る。
これだけ騒がしいのに何故目を覚まさないのだろうか?
「もう三日あのままです。」
「え!?何があったのですかー!?」
「それは私から説明させて頂きますね。」
そこには、あの人の良い人『ルイス』さんが立っていた。
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「ええ!?『奇跡』ですかー?」
「はい、見ていた人達に聞きました。」
その目は真剣だった。
奇跡なんてありえない。
では何故、彼は寝ているのだろうか?
そして私は生きているのだろうか?
「『アリステリア様』の神官である方から聞いた話なのですが、どうやら『代償』を必要とする魔法らしく今も眠り続けています。」
「いつ目覚めるのですかー?」
「・・・それが、分からないと。」
「え!?」
「無理をして使ったのかは分かりません。けれどこの人が貴女に生きていてほしいと思って使った奇跡らしいんです。」
そう言ってあの人の髪を撫でつけている。
不謹慎だが羨ましいと思ってしまった。
「そこでお話があります。」
「・・・何でしょうかー?」
「貴女は彼の愛に、心に応える事が出来ますか?」
「え!?」
「もう一度だけ聞きます。貴女は彼の愛に、心に応える事が出来ますか?」
この質問は何なのだろうか?
ルイスさんは真剣な顔で私を見て聞いている。
でも・・・。
私は・・・。
「はい!応えられますー!」
そう言ってしまった。
だがもうこの思いに、あふれ出してしまった思いに『蓋』をする事が出来なかった。
「分かりました。ではこの人が起きたら一緒に話し合いましょう。」
何を話すのだろうか?
私がいるからとでも言うのだろうか?
当然だろう。
でも、まさかルイスさんは・・・。
「ルイスさん、身を引こうとかは考えていませんよねー?」
「・・・すべてはこの人が決める事です。」
「妾でも何でも構わないんです!お願いですからそんな事は・・・彼が悲しむ事だけは言わないで下さいー!」
涙がこぼれる。
「この人が目覚めたら話し合いましょう・・・今はそれだけです、では。」
その彼女の瞳には涙が溢れていた。
ルイスさんは、そう言って天幕を出て行ってしまった。
そんな事は嫌だ。
この人達の幸せを壊したくはない!
だけれど・・・。
私にも・・・。
これ以上、私に考える事は出来なかった。
此処まで読んで下さり、誠にありがとうございます。
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皆様に感謝を!
それでは 次話 兆し(仮 でお会い致しましょう。
お疲れ様でした!