やっといつものに
いつも読んで下さり、ありがとうございます!
執筆終了しました。
それではお楽しみください。
俺はいつもの宿屋の入り口でウロウロしていた。
よそ様から見ればあきらかに怪しいだろう。
時間は十一時三十分、まさに昼時である。
時差があるとはいえさっきまで昼過ぎだったんだよね。
そう思っているとお客さん達が並び始めた。
俺は何かあったのかと思って遠巻きに宿屋を見ている。
お客さんの話に耳を傾ける。
「ここが例のスープと白パンが安く食べれるって言うお店だよ。」
「せ、先輩。アタシらの安給金でも大丈夫なんですかね?」
「大丈夫だよ。事前に食べておいたんだけれどオススメを頼むと銅貨一枚でそれらが食べられるんだよ。」
「白パンなんて貴族様の食べ物じゃないですかー。信じられないですよー。」
「まあ、今日は俺が出すからさ。それなら安心だろう?」
「「ま、まあ。それなら遠慮なく。」」
どうやら「こんそますーぷ」と「白パン」のおかげで行列店になっていたようだった。
完全に入るタイミングを逃したので、隣の建物の柱の陰から宿を見ていると、看板を出しに来た女将さんに見つかった。
「・・・小僧!そんな所でぼさっとしているんなら、とっとと手伝いに来な!」
【アイ・マム!】
そう言って宿の入り口を潜る。
ああ、帰って来たんだなと思っていると背中をバシバシ叩かれた。
女将さんがニヤニヤしながら聞いて来る。
「何か言う事があるんじゃないのかい?」
【女将さん!ただいま!】
そう元気良く言うと、いつものようにエプロンをして厨房に入る。
いつも通りの皿洗いをする。
客足が落ち着いてきた頃に女将さんが言ってくれる。
「やる事をやって無事に帰って来たんならいいさね。後はルイスちゃんにまかせるさ。」
そう言ってくれたので皿洗いを終えると一先ず部屋に戻る。
この時間なら皆は秘薬の採取だろう。
いきなり顔を合わせる事は無い。
俺にはまだ心構えが出来ていなかった。
部屋のドアを開けると凄い臭いがする。
【うわあ、秘薬臭い。】
かなりの数の秘薬が積んであったので一先ずバックパックにしまう。
秘薬は腐らないとはいえこの数・・・。
皆、どれだけ頑張ったんだろうか?
とりあえず臭いが酷いので急いで窓を開ける。
だが窓を開けてもまだ臭う。
仕方が無いのでドアも全開にして風通しを良くしてみた。
すると風が吹いて机から何枚か羊皮紙が落ちた。
何だろうと思って見ると拙い字でこう書かれていた。
『必ず無事に、元気に帰って来てね、貴方。』
『お兄さんが元気に戻ってきます様に!』
『ヘファさん・・・早く戻って来てね・・・。』
『ヘファさんが無事に帰ってきます様に!』
『ヘファさんはがんばるりてるのです!』
ルイス、リズ、ベス、マオ、アリス。
君達のおかげでたくさんの人達が助かったんだよ。
それに、無事に帰ってこれたよ。
ありがとう。
そう思いながら手紙を胸に抱く。
【皆・・・ありがとう。】
涙を流しながら、心からそう思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
秘薬からポーションを作っていると早い物で十五時の鐘が鳴る。
そろそろ、皆が帰って来る時間だ。
心構えが出来たのだろうか?
そわそわしながらポーションを作っていると複数の足音が聞こえて来た。
臭い消しの為にドアを開いていたのを忘れていた。
そのまま振り返ると驚いている皆がいた。
「や、やあ。ただいま、皆。」
そうすると突撃して来る影が四つ。
入り口を見るとルイスが入り口で手で口を押えて立ち尽くしている。
ドドドドーン!
と、言う衝撃を四つ受けながらその子達が口々に言って来る。
「お兄さんのせいで大変だったんだからね!責任取ってくれるわよね!」
【リズ、少し大きくなったかい?】
「こんな良い女を放っておいて出かける人には教えてあげないわ!」
【良い女になったねリズ。】
「ふ、ふん!仕方が無いから言ってあげるわ!お帰りなさい!」
そう言われてグリグリと頭を撫でる。
「ヘファさん・・・よくもルイス姉と私達を泣かせたの・・・その減点は・・・大トロでないと回復しません・・・。」
【ああ、早速握るよ、ベス。】
「お帰りなさい・・・ヘファさん・・・。」
ベスの頭をグリグリと撫でてやる。
「ヘファさん、本当に帰って来てくれたんですね!お帰りなさい!」
【マオ、ご苦労様。約束通り皆の面倒を見てくれたんだね!】
「頼まれたからしたのではないです。皆と仲良くしてたんですよ!・・・だからご褒美下さいね?」
【ああ、何か考えるよ。ありがとう、マオ。】
マオの頭もグリグリと撫でてやる。
「ヘファさん、元気だったのですかー?」
【アリス、ちょっと大きくなったかな?】
「そうなのです!大きくなったのですー!」
【そうか、服を作り直さないとね!】
「お帰りなのです!ヘファさん!」
そう言うアリスの頭もグリグリ撫でてやる。
「・・・。」
ルイスの方を見ると泣いていた。
俺はルイスを泣かせてばっかりだね。
【皆、ちょっと待っていてね。】
そう言うとルイスの側に歩いて行く。
手を伸ばせば届く距離に来た。
手を伸ばす。
肩に触れると震えていた。
【ルイス、だたいま。なんとか無事に帰ってこれたよ。】
そうするとルイスが右手を大きく振りかぶる。
ビターン!
何だろうと思っていると左頬に思いっきりビンタされた。
「いつまで放っておくつもりなのよ!」
【・・・ごめんね、ルイス。】
バシーン!
また頬を叩かれた。
「私達を放って行ったくせに!」
【ごめんね、ルイス。】
ビターン!
また頬を叩かれる。
「約束してくれなかったくせに!」
【ごめん、ルイス。】
バシーン!
また頬を叩かれる。
「心配したんだからね!もうこんな事はしないと約束して!」
【出来る限り約束するよ。】
今度は力なく頬が叩かれる。
「絶対でしょう!・・・何で言えないのよ!」
【今回は運が良かっただけだよ。次が】
話の途中で泣いているルイスが唇にキスをして来た。
「だったら!もう!あんな別れ方はしないって!絶対って約束して!」
【分かったルイス。もう二度とあんな事はしないよ。絶対だ。】
そう言うと泣きじゃくり抱き着いて来る。
そんなルイスを優しく抱きしめ返す。
懐かしい、いつも感じていたルイスの温もりだ。
【愛しのルイス。・・・ただいま。】
「お帰りなさい、愛しのヘファイストス。」
こうして俺は皆の所に帰って来たのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
晩御飯はベスのリクエストの鮪尽くしの寿司を皆に食べてもらっている。
もちろんルイスには中トロを、ベスには大トロを多めにしてある。
皆が美味しいと言って食べてくれている。
夜御飯時の宿屋も大繁盛だった。
忙しく動き回りながら、まかないとして女将さんと二人の女給さんのお寿司も握る。
久しぶりのお寿司に皆が舌鼓を打っていると、知っている声がかかる。
「アンタよく無事に帰って来たじゃない!」
宿の入り口からミカの声がした。
【よう!ミカ!何とか無事に帰って来たよ。】
「そう、なら良かったわ。早速だけれどアンタの料理を食べさせなさいよね!」
【ふふん、今日は寿司だぜ?】
「何でも良いわよ。美味いんでしょうね?」
【もちろんだよ、ミカ。座って待っていてくれるかな?】
「お寿司とやらの為に待つわよ。それと、あっと・・・お帰り、なさい。」
最後の方はなんとなくだけれど聞こえた。
恥ずかしかったのかな?
嬉しいね。
そして皆に寿司を御馳走するのであった。
片付けが終わり、湯桶を女将さんに頼んでいるとミカが言って来た。
「相変わらず美味かったわ。明日の朝も期待しているわよ!」
【朝も来るのかよ!まあ、良いけどね。】
「もちろん食べに来るわよ。それじゃあまた明日!」
【気を付けて帰れよ!】
そう送り出すとミカは扉から出て行った。
情報源は分からないけれど、わざわざ見に来てくれた。
お節介焼きなミカにありがとうと心の中で礼を言う。
どうやら寿司には満足して帰ってくれたらしい。
皿洗いを済ませ、いつものテーブルに行く。
「「「ヘファさん、御馳走様でした!」」」
皆も満足したようで元気な声で挨拶された。
【美味しかったかい?】
そう聞くと口々に『美味しかったです。』と、言ってくれる。
皆、笑顔だった。
ああ、帰って来たんだなと実感する。
旅のお話等をしているとアリスが眠そうに目を擦る。
良い時間だった。
そして各々が部屋に戻る。
部屋に戻り湯桶で体を拭い、早めに寝ようかとしているとルイスの部屋に行ったアリスが帰ってこない。
そう言えば今日も勉強会なのだろうかと思っているとドアがノックされる。
【どうぞ。】
ドアに向かってそう答えると、寝間着に着替え真っ赤な顔をしてルイスが入って来た。
【ルイス?どうしたの?もう寝る時間だよ?】
「・・・約束。忘れてないわよね?」
【約束・・・ああ!】
「果たしに来たわ。」
そう言って抱き着いて来た。
柔らかさが心地良い。
久しぶりのルイスの温もりを味わっていると耳元で囁いて来た。
『ドアには鍵をかけたから平気よ。でも、初めてだから優しくしてくれないと嫌よ?』
『もちろんだよ、今夜は寝かさないよ?愛しいルイス。』
『はい、ヘファイストス。私の愛しい人。』
キスをする。
もう離さないよと強く抱きしめ、ルイスをベッドに寝かせる。
そして服を一枚ずつ脱がす。
肌着も脱がせると覚悟が出来たのだろう。
俺は、ただ、その美しさに感動した。
【ルイス・・・綺麗だ。】
「・・・恥ずかしいわ。」
暗闇の中、真っ赤な顔をしているであろう、ルイス。
【じゃあ、ルイスを俺の物にするね?】
「はい、ヘファイストス様。」
【っく・・・!】
「はうっ!?」
【大丈夫、ルイス?】
「うん、これで貴方と一つに・・・。」
こうして俺はルイスと結ばれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日の朝。
目が覚めるとルイスの膨らみがあった。
今日は明け方まで頑張っていたのでルイスは寝かせておこうと思い着替える。
『アリステリア様』にいつものお祈りをする。
【『アリステリア様』のおかげで無事に帰ってこれました。ありがとうございます。】
そして昇っている太陽を見上げると光が差し込んだ。
どうやら祝福してくれている様だ。
そんな気まぐれで美しい女神様に感謝する。
【いつもありがとうございます。『アリステリア様。』】
そう追加で祈ると部屋を出て南通りの朝市に向かう。
漁港に着くと早速声が掛かる。
「おや、シビ旦那じゃねえか!久しぶりだなあ!今日は三本上がってるよ!」
【じゃあ、全部頂こうかな。いつものようにしてくれるかな?】
「ヘイ、後はどうしやしょうか?」
【何があがってるんだい?】
「今日は競りで落とした鰤と鯛の良いのがありますぜ!」
【じゃあそれも頂くよ。魚はいつもの通りで頼むね。】
「ヘイ!ちょっと待っててくれよ!シビ旦那!」
そう言うと魚を運び、解体してくれる。
鮪も大トロと中トロが無くなりそうだったのでそろそろ補充が欲しかった所だ。
そう言えばアーゼ様とリーゼ様にも最初に出したのは寿司だったな。
二人には、女将さんから頼まれて握ったんだったね。
今思うとあの日々さえ懐かしいように思える。
解体の終わった魚の切り身をバックパックに入れる。
「また来てくださいよ!シビ旦那!」
【ああ、また来るよ!】
次は米だね。
米屋に向かうとこちらも声が掛かって来る。
「おお、若旦那!御無沙汰じゃないですかい?調子でも崩したんですか?」
【いや、ちょっと遠くへ行っててね。それで米はあるかい?】
「今日は500kgなら用意できますよ!」
【じゃあ、全部頂こうかな。】
「へへ、まいど!若旦那!」
そう言うと手伝いに命じて米を運んでくれる。
お米もあの戦争で無くなりそうだったんだよね。
もちろん、どんどんバックパックにしまう。
【支払いはいつものように頼むね。】
「分かっておりますよ、若旦那。久しぶりなのでお安くしときますよ!」
購入した米をバックパックに入れる。
【ありがとう、また来るね。】
「まいどあり!またよろしくよ!若旦那!」
次は・・・と思っていると声が掛かる。
「ハァハァ・・・いた!見つけたわ!ハァハァ・・・また、いなくなったかと、思ったじゃない!」
その方向に視線を移すと肩で息をしている寝間着のルイスがいた。
【どうしたの、ルイス!?】
そう言うとズカズカと俺の目の前まで近寄って来た。
「どうしてよ!どうして誘ってくれなかったの!?」
【怒らないで、ルイス。】
「私の側からいなくならないで・・・お願いだから・・・。」
【君の身体を心配していたんだよ。それで、そんなに動いて大丈夫なのルイス?】
恥ずかしそうに赤くなりながら言って来る。
「ちょっと、ジンジンするけど大丈夫よ?・・・それより、久しぶりに味醂干しが食べたいわね。」
【そうだね、じゃあ食べに行こうか。まだまだこの世界には見回る所はたくさんあるんだよ。今度は一緒に行こう、ルイス!】
抱き寄せキスをする。
【ふふっ、これからも、一緒だよ?】
そう言って手を繋ぐ。
これが俺達の第一歩になる。
ここまで来るのには長い長い物語だった。
【ずっと側にいてね、俺のルイス。】
「ええ、ヘファイストス。離さないでね・・・?」
【離すもんか、愛しい・・・俺だけの、ルイス。】
「ねえ、それだけなの?」
【ルイス・・・『アリステリア様』に誓うよ、永遠に、魂が尽きても君を愛してる。】
・・・恥ずかしいから一回しか言わない。
そう言うと真っ赤な顔をしたルイスと次の場所へ向かって歩き出す。
第一幕 完。 2024/02/01 Maya
Thank you for reading this far.
Act One ends here. I am
grateful to everyone who has
supported me until now!
I look forward to your continued support for Hephaestus's adventures!
此処まで読んで下さって、ありがとうございます。
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク、等々。
いつもありがとうございます!
大変励みになっております!
今回は一幕として締めさせて頂きました。
早い物で掲載してから3か月が過ぎました。
色々なご意見、感想等も頂き、大変勉強になりました。
総合評価も当時目標としていた500ポイントを大きく上回りなんと1000ポイント以上!
これも皆様のおかげでございます。
心からの感謝を。
第二幕は進行方針が決まり次第始めたいと思います。
こんな拙者の拙い小説を読んで下さってこの評価。
感謝しかございません!
皆様に心よりの感謝を!
それでは、第二幕でお会いしましょう!
お付き合い、誠にありがとうございました!
2024/02/01 Maya