波紋
私と子供たちの食事内容の改善を求めたことは、思ったよりも大きな波紋となり広がった。
①『食ったもん勝ちのローゼンタール国』vs『1日に必要な栄養所要量とカロリーを分けて考えること』
これまでも、なんとなく「栄養=精のつくもの、腹が減って動けない→食事は力のもと、食べ過ぎたら太る」という考え方はあった。
そこから
・体が大きい人はたくさん食べなければならない
→女こどもは 成人男性に比べて体が小さいから 食べる量も少なくていい
→女性は ほっそりとして女らしい体系が好ましいから 女性の食事は制限すべき
なんて、とんでもない考え方が広がっていた。
さらに
騎士は 動きが激しいからしっかりと食べる権利がある
神官は お祈りばかりで体を動かさないから粗食で十分
→空腹で朦朧となる=瞑想 という勘違いも発生!
おまけに
女性が空腹で倒れやすくなれば、「ほっそりとした女性らしい人=気絶も女らしさの現れ」なんて解釈も出てきて・・
ますます文化的弱肉強食の推進=食ったもん勝ち!の社会ができ上がってしまった。
そして 権力のある男性がガツガツと食事をし、女性と子供たちは粗食の生活が当然となってしまうと・・
・男の子は、「早く大人になって腹いっぱい食える地位を手に入れてやる」という野心を燃やしながら成長し、
成人して社会的影響力を持てば、子供のころの飢えの反動で、まず自分の腹を満たすことを優先し、次に自分が気に入った女子供に食事をさせ、食物の配分を 己の権力をふるう場と考えるようなる。
・さらに しっかり食べて体を鍛えて強い男になって、さらに多くの食事を手にするようになった男は、食の細いもの(食料の配給に恵まれず、体格も貧弱なら 粗食にも慣れて一度に多く食べられない体質になった者)を蔑むようになる。
・子供のころから 同年齢の男よりも食事の配給を減らされ続ける女たちは
ますます 男子よりも小柄な(貧弱な)体格となる。
結果的に ますます男女格差が広がり、体格面でも食事の配給面でも社会的立場でも、女性の地位が低くなっていく。
・学問好きな子供・内省的な子供は、体を動かすことの好きな子供に比べれば運動量が少ないからと食事の配給を減らされて・・結局 文官=雑用係とみなされてしまうことに><
◇
そういうローゼンタール国の風潮に一石を投じたのが、食事の必要性を
「栄養」と「カロリー」の2点からとらえる視点であった。
・つまり 健康を保つために必要な栄養は、性別・体格とは関係なく一定量を取らなければいけないという考え方。
これはもう 「貴賤上下の区別なく人はみな平等」という考え方につながる視点なのである。
・その一方で、体を動かすエネルギーを補充するのも食事の役割だが、
食物ごとに そこに含まれているグラム当たりの、
「摂取できるエネルギー(=カロリー)」や「栄養成分」が違う!
という知見。
これは「とにかく腹一杯食えればいい」「力のある者は 自分の好きなものを食べればいい」という考え方を否定するに近い概念である。
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しかし そこは、神託の権威と 国王と法王の権力と、神官や騎士達という実務家たちの支持により
そして家族や女達や国民を取り戻したいという城内全員の願望により、
食の改善、ひいては生活改革が推進されたのであった。




