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1.光の王国の闇6

2022.2.12加筆

ジンは3日3晩かけて、故郷である闇の国ウルラウスの街にある屋敷に戻っていた。

フィン姉から聞いたことを確かめにずにはいられなかったのだ。


「ジン様、旦那様より言伝があります」

戻ってすぐ、当主付きの執事から手紙を渡された。


親父の手紙の裏には親父の刻印が入っている。


俺は急ぎ自室に戻ると、手紙の封を切った。

紙は何も入っていなかったが、魔力で封印されていた声が聞こえた。


『俺たちは山に篭る。不用意に探すな。お前も早く屋敷を出て放浪してこい』


短くそれだけ。

封筒は消えてしまった。

「あの狸親父め!雲隠れしたな!」

ジンは乱暴に寝台に横たわり、フィル姉との会話を思い出す。




「お前がスーテランで見たという、あの魔物。あれはさすがに王太后でもなんとかなるといったものではないと思うんだ」

「と、いうと?」

「精霊達が怯えていてな、あまり情報は聞き出せないんだが、王太后と無関係ではないと思うんだが、彼女に手に負える相手ではないと思うんだ」

「じゃあ誰かが王太后に協力してると」

「ああ、しかも並の相手ではない。アレは本来ならこの世界にはいないものだからな」

「・・・創世の光の女王の時みたいなことが起きると」

「ナリージャも予言していたからな」

フィン姉はさらっと言うが、さらっと言う内容じゃねえよな。


この国の建国の成り立ち。

光の女王とその仲間達が、人間界に侵略してきた冥界の女神を倒したとされる、今やおとぎ話。


あれは本当の史実であることは、闇の国の王子である俺が誰よりも知っている。

多くの人の、精霊たちの命を犠牲にして成り立っていることも。


「そして、お前の遠縁の者が側にいたかもという話。考えてみれば、アリスランが生まれた時、お義兄様が気づかないわけはないんだ。光と闇は表裏一体だ。その上で彼女を守っていたとすれば」

「親父は考えがあって、そうしてたということだよな」

「そう考えたら、色々と腑に落ちる」



フィル姉の予想の真意を正しに来たにも関わらず、父たちは屋敷を立った後だった。

「まったく、何考えてるんだよ、親父は」

他に誰もいない部屋で呟く。


昔からつかみどころのない人だ。

何を考えているかさっぱり分からず、苦労してきているのは俺だけではないはずだ。

自分が不利益になることはしない主義なので、腹黒いことこの上ないのだが。


その親父が早く屋敷を出ろと言っているということは、早めに屋敷を出たほうが良さそうだ。

とはいえ、3日ろくに休まず馬を走らせてきた身体は疲労が拭えない。


早く屋敷を出なくては・・・そう思いながらも、襲いくる睡魔に勝てるはずもなかった。



******************


ジンは夢を見ていた。


暗闇の中、崖の下で倒れた女性を抱きかかえた瞬間、女性の全身から眩い光が放たれる。


眩しい・・・。

思わず目を背ける。

背後には自分自身の影。


視線をそちらにやると、影が自分を見て口元がニヤリと笑った気がした。

なんで影が・・・。


抱きかかえていた女性が、ぐいっと頭を近づけてきた。

驚きそちらを見ると、自分と瓜二つの顔だが、目の色だけ紫紺だった。


『お前は私だ』



*******************



ジンは寝台から体を起こすと、肩で息をした。

全身がぐっしょり嫌な汗をかいていることに気づく。


髪の毛をかきあげると、窓に目をやる。

何時間くらい寝てたんだろう。


あたりはもう真っ暗で、うっすら月明かりだけが見えている。


あの夢は何度となく見たことのある夢だった。

だけど、妙に現実味があるというか、感触が残ってるというか。

言い知らず不安が募る。


ジンは寝台から起き上がると、すぐ隣の湯浴みができる部屋へ移動する。


手短に汗を洗い流し湯船に浸かると、頭がすっきりしてくる。

急ぎフィル姉の元に戻り現状を報告すべきだろうと判断する。


それに、あの女・・・アリスラン王女。

軽かったな、あの女。

自らの腕を見つめる。


目立つ馬車ではなく、馬の後ろに俺が背負うような形で大きな布で体を固定した。

布で覆っていたものの薄い金の髪色だけでも十分目立つ為、人目につかない道へ迂回し、フィル姉の領地まで急いた。


フィル姉の領地は極寒で、みるみる体温の低下を感じた為、途中の村で毛皮を買い込み急いだが、刃物で切られていた傷の状態はあまりよくなかった。

恐らく毒が仕込まれていたようだが、ジンに解毒の知識はない。


フィル姉の元で解毒もされ万全とは思うが、あとは本人の生命力によるだろう。


彼女の元へ戻り、目覚めたらヴァラのことも聞きたい。


「・・・急ぐか」


ジンはそう呟くと、足早に身支度を整え、再び馬を走らせるのだった・・・。















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