プロローグ
昔、昔。
5人の若者は各地を周り、冥界のの女王が封印した各精霊王たちを解放し従え、異形の魔物たちの蔓延るこの地の為に戦った。
冥界の王子は母を裏切り、若者たちに手を貸した。
そして全ての魔物を、冥界の女王を冥界へ送り返すことに成功したのだ。
冥界への門は6人より封印され、その後魔物が蔓延ることはなくなった。
精霊に愛されしこの地に人々は、平穏に暮らし始めた。
この地の創生の物語。
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その日は嵐だった。
だが急に雨は上がり、太陽の光が降り注ぎ注ぎ虹が見えてきた頃。
「おぎゃ〜!おぎゃ〜」
「殿下!奥様!元気な女の子です!!」
柔らかな布に包まれ、出産を終えたばかりの彼女の腕に抱かれる。
「ナリージャ・・・よく頑張った」
「ロイ・・・」
ナリージャは微笑み、ロイは嬉しそうにベットに座り抱かれた赤ん坊の顔を覗き込む。
「顔立ちはそなたに似てるかの」
「成長すれば顔立ちは変わってきますよ」
額に汗が滲むナリージャは嬉しそうに微笑む。
だが次の瞬間、顔色が変わった。
「皆のもの!一度表に出てくれ!」
切迫詰まったロイの声に部屋にいた侍女たちは、一斉に表へ出た。
2人きりになった部屋でロイとナリージャは顔を見合わせたのち、もう一度産まれたばかりの赤ん坊の顔の覗き込む。
「ロイ・・・」
「ああ」
2人はもう一度見つめ合う。
「出来るだけ知られないほうが良い」
ロイはそう言うと、赤ん坊の左目を触る。
古代の呪文のようなものをかけ、ふっと溜息をついた。
「僕の力では一時的なものにすぎない。すまない・・・」
「気にしないで。お兄様を呼びましょう。妹の見舞いと言えば不自然に思わないわ」
ナージャはそう言うと、部屋から出て行っていた侍女たちを呼び戻す。
「スーテラン男爵に早く会いたいと伝えてもらえる?」
「かしこまりました」
太陽の日差しが窓より一層明るく入り込んでいた・・・。
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とうとう産まれた。
彼はニヤリと笑う。
この時をどれほど待っていたか。
虚空の中でずっと1人だった。
今度こそ必ず全て手に入れる・・・。
紫紺の双眸が決意に光輝いていた・・・。