慰霊祭
いよぅ!この間の旅人じゃねぇか。
覚えてるか?モセだよ、酒屋のモセだ。
良かった、覚えててくれたんだなあ。
なあ聞いてくれよ、酒場の美人ちゃんにファンレター書いてたって言っただろ!ついに来たんだよ、返事!
良い匂いの香水のよ、手書きカードだぜ? 手渡しされた時にゃ興奮したね!トゥヌトゥヌ酒無しでだぜ。
そんな訳だ、俺は今超・超・超機嫌が良いんだよ。奢るから寄ってけよ、うちの店の屋台。ユムナ酒って知ってるか?ヌタラ族の伝統的な酒なんだ。紫の黍使ってるんだけどよ、コレがまた甘いのにクるんだよ!
今日は祭りだ、多少ハメ外したって誰も咎めねぇ!飲んじまいな、お前も好きな子いるなら勢いでイッちまえよ。俺のご利益あるぜ!
おや、あんたも祭りに参加しに来たッだね。あたしはいつも通りさ。薬屋に薬草届けに来たんだ。まあ、折角だからちょッとぐらい見てッてもいいケドさ。
え? 店の中見てみたい? 祭りは見ないのかい、変わッてッねえ。おやおやそんな急がなくても⋯⋯
はいはい、どうぞ。ここの店主はあたしと長い付き合いでね。娘もここで働いてッだよ。
おおい、邪魔するよ。薬草持ッて来たよ、いないのかい。
────こりゃあいつも祭り見に行ッたね。ま、気長に待つか。あんた薬草茶どうだい。身体があッたまるよ。
ん、美味しいかい。良かッた良かッた。
この国の祭りッてのも中々面白いけど、賑やか過ぎて年寄りにゃ辛いもんがあッねぇ。ヌタラの祭りはね、静かだよ。祭りッて言うけど別モンだ。
一年で一番日が長くなる一日があるじゃないか。その日の朝早くにね、小さなナロ船に花や食べ物や酒を乗せて流すんだ。亡くなッた人らが好きなものだよ。そんで、ラヌユヌ湖に沈んだご先祖様に祈ッの。それだけ。
だから街でこんなに屋台や踊りや音楽がある祭りやッてると、変な感じだよ。⋯⋯ま、悪かないけどさ。
あら、こないだの学者サマ。ハァイ、これどーぞ。
お店のカードよ。またお店に来てねって、知り合い皆に配ってんのよ。マスターに配らされてるって言ったほうが正しいんだけどさ。
え? 人探し?
あ、あの連れのお嬢ちゃん、迷子なの。
まあこの人混みだしね⋯⋯分かったわ、見かけたら声かけとくから、待ち合わせ場所をうちのお店にしたら?
ふふ、どうも。もし見つからなかったらあたしのお相手一晩してくれる? 冗談だけどサ。
それにしても凄い人混みよね。みんな馬鹿みたい。馬鹿になれるのが良いのかしらね。
何の祭りかって? ⋯⋯さあ、実はよく知らないのよね。あたしが小さい頃からやってるけど。あ、確か慰霊祭だったかな?
ホラ、ダンジョンで命を落とした冒険者の魂を鎮魂する っていう。でもそんなの建前よね。誰が自分のパーティーでもない人の葬式したいんだっての。
モーリブデン国もさ、この祭りを観光の目玉にしたら良いと思うんだけど。騒がしくて楽しくて、お客もいつもよりずっとお金を落としてくし。ピッタリじゃない。
はあ、まだカード配り終えてないのよね。
ねえ学者さん、余計に一枚貰ってくれない? 店に来たら一杯奢るから。