休暇
裕太達は鍛冶屋の一室のゲストルームを借り、翌日には旅立つことにした。
ゲストルームは24畳程度の広さでベットが6つ、美しい模様が彫られたテーブルと椅子が四脚その他浴室などがあり地下とは思えない豪勢さだった。
「ぷはぁー」
ミリスは倒れ込むようにベットに向かいダイブする。
「うぅー、数十日の真面なベッドだぁー、しかも柔らかいし……実家思い出すなぁ」
ミリスは幸福そうな表情を浮かべ、足をバタバタとさせる。
その姿はいつもの彼女からは想像できないものだった、どうやら久しぶりのベットがよっぽど嬉しいらしい。
裕太も流石にオーバーリアクションなのでは無いかと思ったが、実際ベットに横たわっているとかなりフカフカで身体の半分が沈むほどだった。
恐らくはかなり高級な部類に入るベットなのだろう、恐らくオルンの兄のファマスは鍛冶師長と言う役職についてる程なのだからかなり金を持っているのかもしれない。
「そう言えばミリスの故郷ってどの辺なんだ?」
「ここからずっと南にあるアルディア帝国って国が私の故郷よ、まぁ数十年は帰ってないんだけどね」
「だったら帰ってみたりしないのか? 故郷なんだし……」
「そもそもそこに居場所があるなら私がこんな放浪の生活を送ってる訳が無いでしょ?」
ミリスは裕太を一瞥すると浅い溜息を吐く。
「そ、それもそうだよな……ごめん、色々と無神経に聞いて……」
「別に良いわよ、そんくらいの会話誰だってするでしょ……別に気にしてないし」
「それなら良いんだけどな、うん」
「まぁ、でも数十年ぶりくらいに様子くらい見に行くのも悪くは無いかもね、その時はついてきてくれるかしら?」
「勿論、マリスが行きたいって言うのなら」
「なら決まりね、一体いつになるのかはわからないけども」
その様な話をしているとフェミルが部屋に入ってくる、水を浴びて来たらしく、服も乾くまで代わりにオルンに借りたと言う服を見に纏っていた。
「フェミル、そう言えばファミルの魔草だっけ? あれってドラゴンの生息域に生えてるんだよな」
裕太は旅の本来の目的である魔草採取の事をふと思い出し尋ねる。
元はと言えばこの旅の目的はミリスのためにファミルの魔草と言う薬草採取のためこのレミシアル山脈までやって来たのだ、長旅のせいでここに辿り着くのが目的だと誤認してしまいすっかりその事を忘れてしまっていた。
「そう、裕太ならドラゴン程度軽くあしらえるし問題ないと思う」
「まぁなるべくは戦闘は避けたいんだけどな、もし見つかりそうに無いのならするしか無いけどな」
「とりあえず、明日には出る、ミリス的にもその方がいい、幾ら血を吸っているからと言い、少しづつ負荷がかかってるはず」
「確かにそうね、なるべく早い方が嬉しいわ、流石に今日は行きたくないけども」
ミリスはそう言うとベッドの上をゴロゴロと転がる。
「流石に俺も疲れたかもな……」
裕太は目をそっと閉じる、肉体的な疲れは大したことないのだが精神的疲れがかなり蓄積していた、裕太は大した時間も経たないうちに眠りについた。




