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ベルジュ工族




裕太達は煮えたがる溶岩が辺りを覆う地下洞窟を1時間程度進み、ベルジュ工族が住う地下空間にたどり着く。



そこは先ほどの集落とは比べ物にならないほどの大きさでパッと見ただけでも奥行きは2キロ程ある。


また無数の洞窟と繋がっているらしく、あちこちに洞窟があるのがわかる。



そして何より裕太が驚かされたのが集落のその規模である、移住区が壁を覆う様に建造されており、その周りは畑が広がっており、畑の彼方此方に眩く光る鉱石のような物が置かれている。





壁の中に入ると石造りの建物が彼方此方に並んでおり、ぱっと見でも人口は1000人ほど、そこまで活気があるわけではないが何処となく賑やかな雰囲気だ、正直一部族の集落と言うよりは町の様だと、裕太は思った。




「し、死ぬかと思った……」



町に入るや否やフェミルはその場に力無く、倒れ伏せる、フェミルはぐったりとしながらオルンや裕太に対してグチグチ文句を言い始める。



「ったく、うるさいな、あんくらい暑くもなんともないだろ?」


「氷人族は暑さに弱いって何回も言ってる……」



フェミルはオルンを鋭い目つきで睨みつける、普段の彼女からは想像できないほどものであった。

 彼女はかなり発汗しているようで彼女が身につけているそれなりに厚いローブが湿っているのがわかる。



「まぁ、そう怒るなよ、冷たい水と着替えくらいはオレがどうにかしてやるからさ」

「それくらいやるのは当たり前」

「だとしてもオレの兄ちゃんのとこ行かないと行けないし取り敢えず行くぞ、立てるか?」

「うん、なんとか……」





フェミルはその場で立ち上がり、四人は先に進む。

しばらく歩くと石と木を組み合わせて作られた二階建ての大きな建物が目に見えてくる。



「ここが兄ちゃんがいるはずだ」


「なんだ? この建物は、他の建物に比べてだいぶ大きいみたいだけど」


「まぁ共同の鍛冶屋みたいな所かな、兄ちゃんはここで鍛冶長をやってるんだよ」



オルンは先頭をきり建物の中に入っていく。



鍛冶屋の中は金床や炉やその他鉄の精錬に必要そうな設備が所狭しと並べられていた。

 しかしそこで作業をしている者はおらずそれらしい音は何一つとして聞こえなかった。



「うわ、誰も作業している人居ないし、もしかしてここも鉄切れてるのかな? だとしたら貰えないかも……」



ここベルジュ工族は全部族中最も鉄鉱石を持っている、それの鍛冶屋がこの状況なのだ、オルンはベルジュ工族なら鉄のストックもたんまり残ってると思いここまで来たのだがこの状況だと分けて貰うのは難しいかもしれない。




「オルン? 珍しいね、そっちから会いに来るなんて……」



その時部屋の奥から一人の少年が姿を表す、見た目はオルンをそのまま男にーーーと言うわけではなく少し弱々しくなった感じの少年。

目や髪色はオルンと類似しているが顔立ちは少し幼いと言う印象を受ける、身長もオルンと同じくらい或いはそれよりも少し小さいかもしれない。



「それに見ない人も二人いるみたいだけど……」


「ああ、知り合いで刀を打って欲しいらしいからさ、鉄を分けて貰おうと思ってたんだけど……」



オルンはあたりを一瞥する。



「この様子じゃ無理だと思うけど」

「それなら問題ないよ、別に鉄が切れたって訳でもないから」

「じゃあなんで誰も居ないの?」

「徴兵だよ、兵力足りないからって根こそぎ連れてかれたんだよ、鉄鉱石のストックはそれなりにあるんだけどね」

「じゃあ少しくらい貰ってていいよな?」

「勿論、道具はその辺の使っても構わないからさ、折角だし友人達には部屋でゆっくりさせてたら?」

「言われなくてもそうするよ」




四人は彼に連れられ椅子とテーブル、ソファが置かれた部屋に通させる、部屋は絨毯が引かれており多少の高級感がある。



「僕は部屋で仕事をしているから適当にくつろいで貰っていいよ、そう言えば自己紹介が遅れたね僕の名前はファマス・オルディナ、このベルジュ工族の鍛冶師長をやらしてもらってる」


「俺は裕太、そこのミリスと一緒に冒険者をやっているんだ、よろしく頼む」


「こちらこそ、それじゃあ僕は用事があるから行かせてもらうよ、何か困ったことがあったら妹に言っといてくれ」




ファマスはそう言うと部屋を後にする、それと入れ替わる形でオルンが口を開く。




「刀は作るのに時間が一週間くらいかかるんだが、あんたらも用事があるんだろ? 1日くらい休んだら用事を済ましてくる方がいいんじゃないか?」


「確かにそれが良さそうだな、ミリスとフェミルは何か問題はあるか?」


「私は勿論問題ないけど、フェミルはどうなの?」


「別に問題は無い、ただ一日は休憩させて欲しい、服を洗いたいベトベトする……」


「確かにそれもそうだな、ずっと歩きぱなしだったし休むのも悪くは無いと思うぞ」


「それとオルン、早く冷たい水と着替えを持ってきて欲しい、正直死にそう」


「悪い、すっかり忘れてた、今持ってくる」



オルンはそう言うと部屋を出て行った。


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