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炎王



炎人様は大きく分けて3種類の部族に分けられる。



主に鉄の製錬や加工を得意とする工族、採掘をメインとして行う鉱族、そして物流などを得意とする航族の三部族である。

炎人族はこの3種類の部族が密接に関わり合い緩やかながらも大規模なコミュニティを形成している。



そして特に力のあるベルジュ工族、サダル工族、メッサド工族、バドリニシア工族、ドルベコ工族、ドラメシア工族、ロッドメイン航族、パシュトロン航族、ダルニャラス航族の9部族が連合し炎人族総部族連合と呼ばれる組織を運営しておりレミシアル山脈内の炎人族の部族はすべてこの組織の支配下になっている。




そしてこの9部族の中には鉱石の採掘を得意とする鉱族は存在しない、理由としては単純で鉱石を掘り出すのは得意でも加工するのはそこまで上手いわけでもない、なので鉄はあってもまともな武器は殆ど持っておらず、どうしても加工を得意とする工族や貿易を得意とする航族に比べ力量的劣勢になってしまうのだ。



それ故に鉱族は他の2部族に比べ権力が著しい低いのである、例えば工族に不平等な条件で交易させられたり、航族には商品として奴隷商に売り飛ばされたりなどロクな目には合っていない。






それはともかく、炎人族に取って首都とも言える都市であるライサアナは9部族連合により造られた都市で人口は3000人弱、比較的レミシアル山脈の上部に位置しており氷人族との貿易も盛んである、それに加え毎日数百キロの鉄鉱石が運ばれてきたり炎人族部族連合の本部が置かれるなどに炎人族にとって首都に似た役目を果たしている。






そのライサアナの中心に位置する高台には9部族の中で最も力を持っているドラメシア工族の族長を炎王ーーーつまるところ炎人族のまとめ役にして頂点とされるオスル=アル・シャイナールとその血族が住う屋敷があった。





その屋敷の円卓が置かれた石造りの大部屋に一人の男の姿があった。



男は二十代後半〜三十代前半程度の外見に炎人族特有の紅い髪を持っている、そして男の周りには男含め9人の人物が円卓を囲んでいる。

 彼こそがオスル=アル・シャイナール、ドラメシア工族の族長にして炎王と呼ばれる者である。



そしてこの場に集まっている9人は9部族連合のそれぞれの代表者である。



「それで我が方の奪還勢力は?」



オルスは静かに口を開いた。

するとそれに答えるようにパシュトロン航族の代表者が口を開く。



「我が方の此度の対グロッグの軍勢は我ら9部族連合から1600名、更に述べ189の部族から2100名、計3700名、しかしこの兵力全員にグロッグ用の打撃武器の数が足りず三割程度配給が行き届いていないのが現状です、対するグロッグは1900、我らと奴らのレートは1対5とされていますので決して有利な状況では無いかと」



「だったら氷人族に援軍を求むのはどうだ? そもそもの絶対数は我らより奴らの方が多い、それに我々のように部族を統括する組織もあると聞く、この私が直接行けば話も早く進むだろう、それ以上に我らと奴らは関わりも深い、断ることも出来ないだろう」



「それは無理かと……現在氷人族は九龍王のひとり、ガレイオン・ファドリア率いるドラゴンの軍勢より既に壊滅的被害を被っています、流石にこの状況で援軍は不可能でしょう」


「なんだと⁈ ガレイオンは氷聖が倒したのでは無かったのか⁈」



オルスは怒声をあげる。



「当初はそう思われていました、しかしガレイオンはなんらかの魔法もしくは固有能力により復活したとのこと」

「何故そんな大切な事を先に言わん‼︎ 仮とは言え同盟種族なんなんだぞ⁈」

「す、すいません……それと同時期にグロッグの襲撃がありそれどころでは無く……」

「まぁいい、だったらもう少し各部族から援軍は絞れないか?」

「勿論そちらの方も進めてはいますが……やはり数が足りないかと」





その話を聞いてオルスは長いこと考え込む、我が方は3700、対する相手は1900、これだけ見ればこちらが有利であろう、しかし相手は5人の炎人族が相手取り一体互角に戦える程度である。

 この事を考えれば相手は9500の軍勢とも言えよう、そう考えれば絶望的に不利なのである。



だがグロッグは大した知能も無く団結力も薄い、ならば戦術面でかなりのアドバンテージを取れる筈なのである。

しかし今回のグロッグ共はまるで誰かから教育を施されたかの様に連携が取れているのだ。

もしもこれが従来と同じであるならば簡単に奪われた土地を奪還する事ができる筈なのだ、そもそも仲間意識の低いグロッグが2000に近い徒党を組むなどあり得ない筈である、精々100程度が関の山なのだ。



「ならば炎王様、人間の国に援軍を求めるのはどうでしょうか?」



ダルニャラス航族の代表者が口を開く。



「となるとラツィオ王国かアバルロッド帝国あたりか?」


「はい、人間達は我々に比べて異常な程数が居ます、特に多少の関係のある王国と帝国ならば援軍に来てくれるかも知れませぬ」


「ぐぬぬ……」




オルスは頭を悩ませる、人間の国に援軍を要請すれば万程度の軍勢を送ってくれる可能性もある、しかしその後、助けてやったんだから見返りを寄越せと、かなり不平等な条約を結ばされらかもしれない、最悪の場合グロッグを殲滅した軍勢でそのままこの地を占領するかもしれない、そのリスクを考えれば余りいい案とは言えない。



 少し大袈裟に考えすぎと思われるかもしれないが炎人族はそれだけされる高い技術力と種族的利点を兼ね備えているのだ。




「それはどうしようも無くなった時に最終案と考えよう、リスクがデカすぎる、まぁこの私が最前線に立ち多少の戦力の底上げをしよう、まぁ私とて同時に300体の奴らを相手できる訳でもないしそこまで強力な助っ人とは言えないがな……とりあえず各部族からの追加の派遣に期待するしかないな」



オルスはそう言うと深いため息を吐いた。



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