出自
裕太のミリスはギルドの前に着くとフェミルが待ち受けていた。
フェミルはこれから山に登るとは思えないほどの軽装であった、恐らくは氷人族自体寒冷地で生息するに適しているため防寒具の類はいらないからだろう。
「もしかして、待ったか?」
裕太はフェミルに話しかける。
「私も今来たばっかり別に待ってはいない、それで隣の人は?」
「嗚呼、俺と冒険者やってるミリスって言うんだ」
「私はフェミル、よろしく」
「ええ、此方こそよろしく」
「もしかして裕太が助けたい人ってこの人? 見た感じ元気そうだけど」
「そうだ、今は俺の血を吸ってある程度元気あるがいつまでも続く訳ではないしな」
「なるほど情報は理解した、だったらもう出発したい、夜になるまでは隣町に着きたいし」
「それもそうだな、ならそうと決まれば出発だな」
三人は街を出て旧街道を進み行く。
モンスターの襲撃が多発する旧街道ではあるが今回は珍しく一度も襲撃されることはなかった。
更に5時間程度ひたすら歩き続ける。
そうすると三人の目の前に城壁で囲まれた街が目に移る。
その街は高さ3メートル程度の石造りの壁にそれを囲む様に辺りには畑が広がっている。
その時は人傾き夜になり掛けていた頃合いだった。
「なぁフェミル、あれが目的の街か?」
「そう、ダルタクスという街、なんとか夜になる前につけて良かった」
「にしても高い壁だな」
「この辺はモンスターが多いから、その様な対策が取られてる」
三人は城壁を潜り中へ入る。
壁の中は雑多な木製の家々が並び壁内の埋め尽くしている、エルシングの街に比べれば非常に粗末な物だし規模をかなり小さい。
「なんかあんまり活気も無いし、建物も雑多だな」
「昔は栄えていたのよ、私も一時期住んでたし」
ミリスは呟くように言う。
「それじゃあなんでこんな廃れたんだ?」
「それは新しく新街道が作られてわざわざ旧街道を使わなくても良くなったからよ、そしたら段々過疎化してくでしょ?」
「成る程な、それでフェミル、何処で泊まるんだ?」
「もう少し道なりに進めば宿屋がある」
「じゃあ今夜はそこに泊まるんだよな? 疲れたし早く休みたい……」
「だったらさっさと行くわよ」
などと喋りながらしばらく歩くとレンガ造りの年季の入った二階建ての建物が見えてくる。
辺りは木材の雑多な家なのに対しそこだけレンガの建物と言うのに違和感を感じる。
三人が中に入るとカウンターで一人の男がまた受けていた。
「ここに一泊したい」
「嗚呼? 三人で銀貨6枚だ」
無愛想な男は頬づえを着きながらそう言う、男に銀貨を払うと二階の角部屋に通される。
内装はレンガの壁に木の床、真ん中にはテーブルそしてベットが二つ。
窓からはこの宿自体坂の上に作られているため街を一望できる。
外の景色はだんだん夜になり始めており、民家の蝋燭の灯が幻想的に目に移る。
裕太はその景色に目を奪われながらも街の明確な規模を確認する、大きさ的には壁がしっかりと視認できる距離にあり、そこまで広くは無い、おそらく人口も3000人より少ないくらいだろうと察する。
「思ったよりは悪く無いわね、景色も綺麗だし」
「それで夜ご飯はどうする? どっか食べに行くのか?」
「夕食は宿のサービスに含まれてない、だから近場の酒場にでも行く予定」
「だったら少し休んだら直ぐに酒場に行こうぜ、流石に腹減ってきたし」
「確かにそうね、ずっと歩いてたし早く寝たいわ」
「私もそれに賛成する」
二人は暫しの休息に入る。




