引っ越し
冒険者ギルドに報告を済ませた二人は荷物をまとめミリスの家へと向かっている道中だった。
今日も変わりない街中を二人は歩いていた。
裕太は引っ越しに向かうと言うにはあまりにも身軽だった、と言うのもあの仮屋の家財は据え置きの貸し物で裕太の所有物では無いからだ。
しばらく道なりに進むと一軒の古びた、そして少し大きめ家が目の前に見えて来た。
「あれが私の家よ」
「他の家に比べたら大きいな」
「まぁね、私もBクラスの冒険者だし一般市民よりはお金は持ってるわよ」
裕太はミリスの家の中に入る。
彼女の家は築50年程度のそれなりに年季の入った平屋の家でリビングにキッチン、ミリスの自室に客室が五部屋、更には浴室と一般的な家に比べれば広い家である。
裕太は家の中に通されると空き部屋に通される。
ミリス曰く暫くは使っていない部屋だが掃除もしてあるし予備のベットも置いてあるとの事だった。
「この部屋は自由に使っていいわ」
「にしても前の部屋と比べて倍くらい広いな」
「前の部屋が狭すぎたんでしょ?」
「まぁ確かにそれもあるけど……」
「それと前から気になってたんだけど」
ミリスは少しだけ重々しそうに一息つくと裕太に語りかけるように喋る。
「裕太って妙に異形のモンスターに詳しいとこあるわよね、今のアレみたいにこの前のあいつもだけど」
「うっ……」
裕太は痛い所を突かれたと焦りを感じる、確かに未知のモンスターに詳しすぎるのはいくらなんでも怪しすぎる。
「それに、ファンタジーって国? 少し調べて見たけど人類の生存圏には何処にも存在してないわ、確かに生存圏外から来た可能性もあるけどにしてはいくつか矛盾は生じるわ、貴方って何者なの?」
「うぐぐっ……」
裕太は渋い顔をする、よくよく考えれば、てかよくよくも考えなくてもあんな嘘バレるはずだし、素性もわからない上怪しすぎるだろう。
裕太は正直ミリスには何を言っても通用しないような気すらしてきた。
「なぁミリス、観念して全部話すけど頭のおかしい事言ってるって思うかもしれないけどいいか?」
「まぁいいけど……」
「俺、別の世界から来たんだよ」
裕太の予想するミリスの反応は何言ってるの? 出会ったがその反応は意外なものだった。
「確かに裕太の服装は類を見ない特殊な物だったしその可能性もあるわね、てことは裕太は転移者?」
「アレ? 俺の予想だと何言ってるの? とか言われると思ったんだけど」
「まぁ普通はそうなるでしょうね、でも私も百年近く生きて色んな国を渡り歩いてた時期もあるんだからそれなりの知識はあるわ」
「なるほど……」
裕太はミリスの発言が何処か腑に落ち納得できた。
「ところで転移者って言ってたけどそれってまんまの意味か? てか前例があるのか?」
「えぇ、この世界は力の強大さで大小の差はあれど不定期に異世界から何者かが転移してくる事があるの、かの準神と激戦を繰り広げた神に等しい者も転移者だし、神聖リユニオン帝国で信仰されてる神の元になった人物も転移者よ、最後に転移者が現れたのは80年前で私も一度目にしたことがあるわ、確か二足歩行のドラゴンみたいな見た目をしてたっけ、最後は国1つを滅ぼしてその後に自滅したとは聞くけど……本当のところはどうだかね」
「待て待て、俺が仮にその転移者だとしてそいつらに比べて俺弱くね?」
「まぁ力の強大さは大小あるらしいし、それでも一般市民よりはかなり強いわよ」
「確かにそうだけども……」
「それと転移者って確定したわけでもないしね、それと自分が転移者っていうことは言わない事を勧めるは面倒な事になるわよ?」
「嗚呼、勿論そうするつもりだ」
ミリスはならいいけどと言い捨て席を立つ。
「そうだ、ギルドの昇格試験が明後日にあるんだけど申請してきたら? 裕太の実力ならDくらいならすぐに昇格できると思うけど」
「昇格試験か? 確かにクラスが低いよりは高い方がいいよな」
「確か応募が今日の夜までだから早くした方が良いわよ、応募定数もあるしね」
「そうだな、んじゃ行ってくるか」
裕太は再びギルドに向かうことにした。




