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終わりの始まり



レイアール王国の西にアルグレと言う都市があった。人口は三万程度の比較的大きな町だ。

 普段は活気に溢れた町であるが、今はその面影もなく人々は家に身を隠し怯えていた。

 と言うのも昨晩から町の上空に謎の次元の割れ目が現れたのだ。まだそれだけなら良いであろう。だがその割れ目から未知の正体不明のモンスターが這い出てくるのだ。町の冒険者や兵士が対応しているがそれは到底追い付いては居ない。




「現在の状況はどうだ……?」




アルグレの中心部にある小さな砦に陣取る獣人らしき男が部下の兵士に声をかける。彼はアルグレ常駐軍の部隊長であるホマレ・マーグレーである。



「はっ、空に発生した謎の割れ目から存在不明の未知のモンスターが散発的に現れて居ますが、冒険者の協力もあり何とか防げています」


「そうか……にしても、何なんだろうなこれは」

 



ホマレは独り言を呟くように答える。



「さぁ、異常と言う事しか分かりませんが……」

「まだあの裂け目から出てくるモンスターが普通のモンスターだったら良かったのだがな」




と言うのも時空の裂け目から出てくるモンスターは、蛸のような見た目の巨人や触手の生えた黒いタール状のスライム、体色を持たない猟犬の様な化物など未知のおぞましい姿をした異形の存在だったのだ。

 更には並のモンスターとは比にもならない位強く兵士どころか手慣れの冒険者ですら甚大な被害を被っていた。





その時一人の伝令兵がやって来る。




「報告致します‼ 東地区に異形の魔物が三体飛来。冒険者含む兵士90名が死傷、民間人を含めれば死傷者は数百名に上る模様‼」



「なるほど。それでモンスターどもの現状は?」

「恐らくは無力化されたかと。しかしこの様な攻撃がいつまでも続けば全滅は免れません。」

「そうか、最悪の場合はアルグレを放棄するしか無さそうだな……それと王都の連絡はどうなった?」

「はっ、伝令を王都へ派遣しました。恐らく一週間後には援軍が来ると思われます。」





ホマレは一週間かと溜め息を吐き、顎をさする。


「そう言えばホマレ隊長には娘さんがいらっしゃいましたよね?」


「なぜ今その話をする……まぁいいが、四年前に喧嘩別れで家を出ていってしまったがな」




四年前に些細な事でホマレは娘と喧嘩をしてしまい、結果としては娘が家を出ていってしまった。その後の行方はどこへ向かったのすら分かっていない。




「それがですね、居場所が分かったんですよ!」



その時ホマレの顔色が変わった。




「何⁉ それは本当か⁉」

「えぇ、ここから東に王都より奥にあるエルシングと言う町で冒険者をやっているそうです。それもAクラス相当らしくて近々Sクラスに昇格するらしいですよ」

「そうなのか、そんな立派に……」




ホマレは何処か嬉しそうに薄ら笑みを浮かべる。もしかしたら家出して死んでいるかもしれない娘が生きてると知り、更にはそれなりに高位の冒険者と立派に成っていたのだ。どんな父親でも嬉しいのは当たり前だろう。




「この異変が終わったら会いに行ったらどうですか?」

「そうだな、向こうが受け入れてくれるかどうかだがな」とホマレは苦笑する。





その時だった、割れ目が一段と大きさを増す、少しづつ大きくなっていき最終的には倍近い大きさになった。




「何だ......急に膨張し始めたぞ」




そして割れ目から巨大な何かが姿を現わすーーー。



100メートル程度の巨大な肉体で蛸と龍を足して割ったような醜悪な見た目。蝙蝠の様な翼を持ち、あたりには数多の異形を引き連れている。

その化物は遠目ながら巨大さがよく伝わってくるほどである。その巨体でどうやっているのかわわからないがゆっくりと空から降下してくる。





「なんなんだ……あの化け物は……」

「彼奴はやばいな、撤退をいつでも出来るようにしておけ」

「了解しました」




その場にいた誰もが感じただろう。逃げなければやばいと言う生物の本能が刺激された事を。




「市民に避難勧告を出し冒険者を護衛につけて避難させろ。我々は兵士は中央広場に集まりそれから撤退をする」

「はっ」



兵士は威勢の良い声とともにその場からかけて行く。



「まるで世界の終わりだな」



ホマレはポツリと呟いた、それから二時間程度して冒険者の助力もあったおかげかあらかた市民の避難も完了した。

ホマレ達王国兵士達も街のシンボルである中央広場に集結した。



「残存兵力236名、恐らく全軍が集結致しました」

「半分以上は殺されちまったって事か」

「にしてもあの化物は未だに空中に留まってますね」




ホマレは空に浮かぶ巨大な化物を眺める、少しづつ降下はしているが未だに空中に留まっている。



「まぁいい、今は撤退をーーー」




その時だった。地面から水が染み出してくる。そしてあっという間に膝丈あたりまで水が押し寄せてくる。




「何だ⁉︎ これは‼︎」

「あの化物が原因か⁉︎」




余りにもの出来事に兵士達に動揺が走る。

その瞬間だった。どこからともなく5メートルクラスの津波が現れ押し寄せる。




「お前ら、建物の物陰に隠れろ‼︎」



ホマレは叫ぶ。そして目の前に津波が迫ってくるのが最後の光景だった。




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