神の戯言
全く初めて小説を書きます。
こんなのでいいのかサッパリですが、宜しくお願い致します。
ここは川崎市の某区にある神社。
この数日、夕方になると激しく降る雨は勢いの良すぎるシャワーだと思っているのか、龍はニコニコと雨を受けながら参道の真ん中でとぐろを巻いている。
「梅雨明け宣言が出たばかりの日にゲリラ豪雨なんてさ、天気の神様は面白いことをするなぁ…
僕は龍だし、水浴びしてるみたいで気持ちが良いんだけど、さっきから通る人達は服もカバンもびしょ濡れだよ。
ねぇ、天津っちゃんは豊作の神様でしょ?ここだけ無理に降らせないようにできないワケ?」と春日神社に住む、龍がのんびりと主である天津の神に話しかける。
呑気に尻尾を上下しながらぼんやり話す龍を
境内の階段に座って眺めていた天津の神は、長いため息をついた後、イライラを隠すこともせずに
「無理を言うな!
雨乞いの部類に入るから雨を降らせないのは手続きが大変なんだ。
天気の神様は面倒だからって数百年単位で天気を決めていて、大まかな天候は生命誕生前から決めているらしいってウワサだ。
それを変更するのだからと書類が数十枚必要になってくるんだよ。天候手続き許可書に、変更にあたる事由書、それから……」
「簡単にひょいって雲をいじれば何とかなると思ったんだけどな。」と龍は膨れっ面をしつつ眉根を寄せる。
龍の困惑した顔に怒りも消えてしまったのか、天津の神は苦笑いを浮かべながら「この地域に雨を降らせない場合、他所の土地の神様と話し合って譲る譲らないの論争になるんだよ。
ここの稲毛地域の寄り合いも今月末にあるんだ。10月の大祭を目指して話し合わないと、今年の結界の範囲と強弱、守護する人間の数等決めなくてはならない。」そう話すとおもむろに立ち上がり胸を張る。
そして、満面の笑みで「わが春日神社は稲毛荘の要だからね。稲毛荘の土地にいる全ての神が大祭に何らかの関与をすることになる。」と満足そうに頷きながら天津の神は話した。
「あー、年に一度のお祭り!!僕、大好きなんだよ。みんなニコニコわくわくしててね、すごく力がみなぎるんだよ」その情景を思い浮かべたのか龍は興奮して空中でくるんと回る。
「でも、天津っちゃん、10月11日〜17日までが出雲で会議だけど、1日遅刻になるね。」と龍がケラケラと笑うと
天津の神もニヤリとしながら「まぁ、会議って言ってもいつも飲んだり食べたり、しょうもない愚痴を言い合ったりする場だから、誰も気にしないのだれど。
総括の大国主大神はそれを全部聞いて願い事の統計を取ってるから…」
「えっ、八百万と言われている神さま達の話を一体どうやって聞くっていうの?」と龍は驚きながら尋ねる。
「それは、島根地域の神や神使である、狐や獅子も協力しているからね。
神使達は各々、担当を決めて飲み食いもせずに張り付いて聞いてるそうだよ」
「僕には無理だよ…お腹空いちゃう!」と頭を抱える龍に天津の神は笑って答える。
「流石に数日は無理だよ。時間を決めてシフト制だと聞いたよ。中には、乾燥揚げをこっそり懐に入れて食べながら記録をしている猛者の狐もいるらしいよ」
「それを島根の神様達と大国主命は共に頭を突き合わせて統計分析をしてから来年の会議までに叶える願い事はどの分野を増やすか減らすかをまとめた紙を18日までにまとめ上げるんだよ。」
「あまっちゃん、その願い事の紙って無視できないものなの?だって地域差ってヤツがあるじゃん」と龍は小首を傾げる。
困った顔をしながら天津の神は「……願い事をまとめたその紙をないがしろにすると…次の年はネチネチと文句を言われるらしい。
神は常に平等でなければならないと。
それでも守らない時は監視役で使者が派遣されるとか。本当かな?笑っちゃうよなー。」
「あまっちゃん、狐くん達のネットワークはすごいよ!お隣の稲荷神社の狐くんが教えてくれだんだけど、孤穴って日本全部と繋がってるんだって!
みんな、本当に仲が良くて羨ましいよ。この地区のキツネ達は『稲毛いなり会』というものがあって、今度僕と獅子くん達と参加する予定なんだよ」
「そうでなくとも、狐と獅子がわんさかいるってのに……更に増えたら動物園だぜ?
視える人間が腰を抜かすよ。」と天津の神は呆れ顔だ。
「神使達だって、息抜きは大事なんだよ」
「精々、視える人には気をつけて」
そんな会話をしていることを知ってか知らずか、宮内町内のとある稲荷神社を親子2人が通り過ぎていく。
お友達親子と水族館へ行った帰りである。
「ゆうちゃん、すっかり遅くなっちゃったねー。もうご飯も食べてお腹いっぱいだし、お風呂に入ってからねんねしようね。」と母親は隣の手を繋いで歩く男の子に話しかける。
ニコニコ笑顔の男の子は、神社の鳥居から中を覗き込んで「ママ〜、赤いお家の人ねー今日はいないよー。キツネさんもー!」と母親に報告をしている。
サッと顔色を変えた母親は「何の話をしているの?赤いお家?何か怖いじゃないの!そんな話をしないで」と眉をひそめる。
話を分かってもらえない男の子は「だってぇー、本当にいないんだもん…」と頬を膨らませて男の子は抗議するも、母親からは相手にされない。