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ハズレ勇者がチート無しで活躍できる七つの秘訣  作者: まさな
第二章 人を集めるために必要な事
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第四話 国家の目標

「諸君! 食べ物は人間にとって生きるための糧そのものであるッ!


 生きるために食わなければならない!

 それは貧乏人であろうと金持ちだろうと関係ない! 

 地位の高い低いにも関係ない。たとえ国王であろうとも、食べねば皆死んでしまう! 


 つまり、食べ物は国民にとって必要不可欠な物、国家の必需品であるッ!


 その食べ物を育てる農業は国家の土台である。

 つまり農夫は国家そのものを支えているのだッ!

 もしも君達の周りで農業や農夫を鼻で笑う者を見かけたら、その理性の無さを逆に笑ってやれ!

 その発言の裏に何かの意図が無いか疑え!


 また、我がラドニール王国は他国からの強奪を良しとしない。

 もしも奪うばかりで誰も麦を作らなかったらどうなるか、よく考えてみて欲しい。

 いくら奪おうとも最終的に、すべての人が飢え死にするであろう。


 そこまで行かずとも、略奪者が増えれば増えるほど、世界は苦しむ人が増えるのだッ!

 高値で商人にふんだくられるのもまっぴらだ!


 自分の国の食べ物は自分の国で作る!

 生きる糧が全員にきちんと行き渡る国!

 地産地消!

 それこそが、略奪や搾取を産まない正道であり、英明なる我らが陛下のお考えであるッ!」



 拳を力強く振り上げ、声を張り上げる俺。

 街の広場に町人に集まってもらい、演説を聞いてもらっている。

 布告だ。


「いきなりどうしてしまったのだ、アレは」


 エマが怪訝そうな顔で俺を見ている。 


「いや、私に聞かれても……」


 リリーシュも引き気味だ。


「小難しい話はよくわからんが、食べ物はいいな!」


 レムは食べ物の話が好きだ。

 ロークが一人拍手をしてくれたけれど、町人達はちょっとぽかんとしていた。


 くそっ、俺に演説やカリスマのスキルがあればなぁ。


 ここは専門の演説家、吟遊詩人なりを雇いたいところだが、金に余裕も無い。


「……ご静聴、ありがとうございました」


 俺は一礼して、お立ち台の木箱からすごすごと降りた。


「リリーシュ、後は頼んだ」


「うん、任せて」


 リリーシュが台に上がると、聴衆から次々と声があがった。


「おお、姫様だ」

「姫様じゃ」

「リリーシュ様ぁ!」

「姫様ー!」

「やっぱり綺麗よねぇ」

「可愛いなぁ」


 人気あるなぁ。アイドル並だ。


「ありがとう。えー、王女のリリーシュです。って、みんなもう知ってるわよね」


 顔は広く知られているようで聴衆から笑いが起きる。


「今日はみんなに伝えたいことがあったので、こうして集まってもらいました。さっきもユーヤが言ってたけど、食べ物が大事です。

 だから、ラドニール王国としての今年の目標は、農業に力を入れて行こう! ということになりました」


「あー、なるほど」

「そうだねえ」

「賛成!」

「んだば、一丁、頑張るべか」

「よしっ、オレは今日から農夫になるぞ!」


「農夫をやってみたい、手伝っても良いよと言う人は、畑を貸すのでここに残って下さい。今すぐでなくても城に言ってきてもらえれば、手続きします」


 五人ほど手を挙げてくれたので、係の文官に後は任せておいた。



「ふう、リリーシュを連れてきて正解だったな。さすがは王女様だ」


 俺一人でやっていたらと思うとぞっとする。


「さっきのユーヤの演説は、ちょっと堅いというか、言葉が難しすぎるのよ。貴族相手ならあれでいいでしょうけど、必需品なんて私でもスペルと意味がなんだっけって一瞬考えたもの」


「ああ、そうか、こっちの読み書きができる人って少ないんだったか」


 識字率のことを忘れていた。

 話を伝えて理解してもらおうとしているのに、相手に伝わらない言葉を言っても意味が無い。


「ええ。ユーヤの故郷はみんな読み書きができるんだったわね」


「ああ。義務教育と学校があるからな」  


 リリーシュが地球に興味を示してよく聞いてくるので、俺も全部話している。

 鉄砲の技術を伝えるとか、そういうのは歴史を変えるほどのインパクトがあるので注意が必要だろうが、俺は製造方法も知らない一般人だし、特に気にする事もないはずだ。


 食料生産が上手く行ったら、学校でも作ってみるかな。




 翌日、俺の部屋に戻るとエマが片膝を突いて臣下の礼を取っていたので、ちょっとびっくりした。竜人族の礼ではなく、ラドニールの礼だ。


「ユーヤ、いえ、ユーヤ様。種を譲って頂き、ありがとうございました。頭領も『恩に着る、盟友の一大事には必ず一族総出で駆けつける』と仰せです」


 作物には天候や土壌で育ちやすさが違うので、種を植えてもすべての品種が育つわけでは無い。

 ただ、水はけが良すぎる乾燥気味の高地でも紅芋は育つと書物に書いてあったので、それは期待できるはずだ。


「ああ、うん、そうそう盟友だからね。お互い、助け合って行かないと」


 特に相手が困っていれば困っているほど、助けたときの効果が大きい。

 これで、どこかの国に攻められたときには竜人族の援軍が確実に期待できるだろう。それに、信用できそうな国に感謝されて、潜在的な敵国が一つ減った。

 良いことだ。

 空軍が使えると、斥候も含めて強力だからな。


 正式な調印はまだだが、これで防衛条約は成ったと見ていいだろう。

 それもこれも相手の兵力が上の国、獣人の国とミストラ王国の連戦に勝った事が大きい。

 ラドニール王国の力、人間の戦術の能力を、戦勝結果という証として竜人族の頭領が認めてくれたのだ。


「頭領だけで無く、私ももちろん感謝しております。これまで無礼な態度を取って申し訳ありませんでした」


「いやいや、いいよ、前のまんまで。気にしてないし」


「いえ、一族に未来と希望を与えて頂いたからには、このエマ、ユーヤ様に生涯の忠誠を尽くし、命を賭ける所存。あなた様のために何でも致しますので、いつでもご命令を」


「え? 何でもしてくれるの?」


「はい、何でも」


 グラマーな美少女が、俺が言えば何でもしてくれる。


「……ゴクリ」


 改めて目の前のエマを見る。切りそろえられた純白の前髪に整った顔立ちだ。白い羽と太めのシッポ、短い角も一本出てるが、大丈夫、残りは人間の体で、人間の顔だ。

 ぴっちりしたレオタードを着ているが、女性らしさはバッチリだ。


「では、エマよ、ベッドの上で裸になれ」


 って言ったら、怒るかなぁ? でも何でもするって言ったよね? 言った、言った。

 いやいや、でも相手は誇り高き竜人族、怒らせるのはまずいからな。自分で気が短いとも言ってたし。

 ここは、ノーリスクで行こう。

 ちょっとずつ、安全な範囲を探っていって怒りそうだったら速攻でいったん退く。その方向で。


「じゃ、エマ、今まで通りに喋ってくれるかな」


「それがあなたの望みならば、分かった」


「それと、立ち上がって、こっちに背中を向けてくれる?」


「こうか?」


「そうそう」


 言う通りにしてくれた。


「じゃあ、次はそのまま前屈みになって――」


「ユーヤ」


 リリーシュが部屋に急に入ってきたので俺はビクッとする。


「お尻うぇーい!」


「ん? 二人で何してるの?」


「ななな、何でもないぞ! 何でもない。まだ何もしてないから」


「ええ?」


「あ、もう良いよ、エマ」 


「ああ」


「変なの。あ、『獣人部族連合』の族長が来てて、ユーヤにお礼がしたいんですって」


「ああ、すぐ行く。種の件だな」


「ええ。良いことしたわね」


 リリーシュがニッコリと笑う。


「そうだな」


 南の獣人達は食べ物が無いという理由で攻めてきたので、食糧問題を解決してやれば、元は同盟国だったのだし大人しくなるだろう。

 もちろん、おかしな気を起こすなら、次は容赦しない。

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