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第58話 加護渡しても良いです



 彼は、二度唸り声を上げた後に、こちらへ襲いかかってくる。

 最初の攻撃は爪ではなかったらしい。

 おそらく体当たりだ。


 一周目の時とは違った。

 前回は問答無用で、あの鋭い爪で刺殺されたというのに。


 控えていた二人が武器を手にしながら、前に出てきた。

  

「ウルベス。分かっているな」

「はい」


 迫って来た邪神を相手取る、兄とウルベス。


 二人は上手く立ち回って、私に危害が及ばないようにしてくれる。

 騎士の剣を手に掲げ、堕ちた神と相対する彼等のプレッシャーはいかほどのものだろうか。


 きっとただ説得するだけのアリシャよりも、何倍も大きな脅威を感じている事だろう。


 けれど、そんな場に彼等は私を並び立たせてくれた。

 その思いに報いなければならない。


「ミュートレス様。私の話をどうか聞いて。私の加護、本当なら貴方にあげても良いって思ってるわ。とても信じられないだろうけど、私にとっては必ず必要だというものではないもの」


 こちらが述べるのは相手の意表を突くだろう言葉だ。

 だからといっても、この馬限りの出鱈目や嘘ではない。

 加護をくれた神様には申し訳ないのだが、私はほんとうにそうしても良いと思っていた。


 昔でこそ、色々走り回って怪我をしていたが、今はもういい年だ。加護の使いどころは減ってきている。


 どんな事をすれば危ないか、何をしてはいけないか、今の私はしっかりと分かっているからそうそう怪我をする事が無い(最近のような例外は除いて)。


 それでなくとも自分の周りにはこんなにも頼もしい者達がいるのだ。


 加護などなくともやっていけるはずだと、私は心の底からそう思っていた。


「でも、ごめんなさい。今の貴方にはあげられない。貴方の心にある暗い復讐心を、その気持ちを少しでも抑えてくれるようになるまでは、どんなに必要にしていてもあげる事はできないの」


 私がそう言葉を述べると、黒猫は一層その身に纏う力を強くしていった。

 戦況はこちらの方が押されてきている。

 兄もウルベスも、大変な思いをしているだろう。


 それでもまだ邪神は、私を手にかける事が出来ない。


 命を預けた私を、彼等が命がけで守ってくれているから。



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