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第56話 作戦が決まりました



 という事で一番反対していたであろう二人の許可が下りた後、話が消化されていくのは早かった。


 タイムリミットは父が呼んだ騎士団たちが来るまで。

 それまでに何とか黒猫を見つけて説得しなければ、彼とは永遠に会えなくなってしまう。


 今回は殺されなかったが、もしかしたら私を転生させた神様に「失敗」とみなされて強制的に新たな周回……三周目が始まってしまうかもしれない。


 今はまだそう苦痛に感じる事は無いのだが、同じ時間を何周も繰り返すのは人間にとって良くない事だろう。おそらく、すごく辛い事になる。


 次があるから、などと甘く考えない方が良い。


 転生した悪役の中身が一味どころか二味も三味も違ってきたら、兄やトールの知る私ではなくなってしまうだろうし、転生前の私と同じ人間だとは思えなくなってしまう。


 とりあえず私が兄とウルベスに相談したのは、力が欲しかったからだ。

 と、言ってもその使い方は直接相手と戦闘するためではない。


 説得するまでに、一周目で私が死ぬことになった攻撃……刺殺の一手を防いでもらう為だ。


 見ての通り分かる事だが、邪神の今の姿は猫だ。

 けれど彼は、感情が高ぶると肉体をわずかに変え、巨大化してこちらに襲い掛かって来るはず。


 前回はそれで、相手の鋭利な爪でグサリとやられたので、それを防いでほしかったのだ。


 それに関する黒猫の変化事は、(つい先ほど説明したように)加護をもらった時に女神様から大体の事情を聞いた……という事で話を通した。


 私の目標はとりあえず、黒猫を説得して殺されないようにする事。


 神様の頼みを聞くまでだと、加護を渡さない事だろう。


 乙女ゲームらしからぬ殺伐とした目的だが、一周目とは違ってこの場には、四人も頼もしい男性が揃っている。


 きっと何とかなるだろう。


 そう思った私は、考えた案を彼等に話した。






「……という事なのだけど」


 ざっと数分かけて話し終えた後。

 内容を聞いた四人は、思い思いの反応を示した。


 兄やウルベスは思いもよらなかったという風にあっけに取られていて、アリオは楽しげにしていて、トールは心配げにしている。


 最初に口を開いたトールは、誰よりも呆れを隠さなかった。


「私はお嬢様を信じるようにしたいのですが……。まさか、そう来ますか。この私にアリオとそれをやれとおっしゃるつもりですか。つまり、私は試されているんですね」


 後に続くのはアリオだ。


「別に良いじゃん、俺は楽しいしそういうの好きだよ。でも直接ついていけないのは残念だな」


 仲間外れにするつもりはないのだが、結果的に彼等は私達から離れる事になってしまった。

 試す為さない云々については、そういうつもりは別に無かったのだが、結果的にそうならざるを得なくなってしまったので、どうにか寛容に考えてもらうしかない。


 アリオが、そんな心中穏やかではない様子のトールを不思議そうに見つめながら訪ねた。


「トールはお嬢の意見の通りにするのが嫌なの?」

「そんな事はない。あるわけがない。信頼を挽回する良い機会ですし、それに……お嬢様に他に目を向けろと言われたばかりですしね」

「?」

「考えなくてもよろしい。こちらの話だ。アリオの分際でお嬢様に詳しく尋ねようなどとは思うな。呪うぞ」

「何だよ、それ。トールはいつも意地悪だな」


 何やらケンカしている様な雰囲気になってしまったが、要訳すれば引き受けてくれたという事で良いのだろう。

 彼らが言い合いをする間に話しかけてくるのは兄とウルベスだ。


「お前……、よくそんな事思い付くね」

「ふむ、予想はしていたが、こうも普通ではない説明を受けるとは、さすがアリシャ殿。こちらの度肝を抜くのが上手い」


 反対される、という事ではなさそうだったが、やはり呆れの色が強い。誉められているわけでもないだろう。

 提案して置いて今更だと思うが、やはり少しばかりこの作戦は難しいところがあるかもしれない。


 だが、やるしかないのだ。

 しり込みしている時間はない。

 とにかく、決まったのなら後は行動するだけだ。


 私は自分の言った事が間違っていないと信じる事にする。



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