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第46話 主な登場人物が全員集合してます



 これからどうしようかと思っていると……。

 聞こえるはずのない声が聞こえた。

 そこに駆けつけてくるのは、この場に来るはずのない二人……ウルベスと兄だ。


「アリシャ殿!」

「アリシャ、大丈夫か!?」


 彼等二人には、確かに最後のシーンには手を貸してもらおうと思い、細部をぼかして書いた手紙を送っていたのだが……。まさかこんなに良いタイミングで駆けつけてくれるとは思わなかった。


 もう少し疑問に思うなり躊躇うなリすると予想していた。けれど、彼等の表情には予想外の事が起こっているという感情はない。


 そしてもう一人……。


「お嬢ー、俺もいるよ!」

「アリオまで!」


 一体全体この大集合はどうした事だろうか。

 もしやヤンデレ世界に転生してしまった私の転生運が悪かったのは、この瞬間を用意する為に吸われていたのではないのだろうか。

 と、今までの事を振り返って思ってしまう程だ。


「っ、お嬢様!」


 トールの声で我に返る。

 駆けつけて来てくれた彼等に気をとられている場合ではない、正面から猫が飛びかかってきた。

 私は、警告してくれたトールに抱き寄せられるようにして、衝突の危険から回避。


 脇を通り抜けていく黒猫は、あからさまに敵意をこちらに向け、鋭利な牙が並ぶ顎を開いていた。

 こちらの喉笛に噛みつく気でいたようだ。


 もし避けるのが遅れていたら、と背筋が凍る。


 こちらを仕留めそこなった黒猫は廊下に着地し、唸りながら丸い瞳を見開き、怪しく輝かせる。

 再度こちらに向かって来る為にか、距離を測っているらしい。


 相手がそうしている間に、こちらを心配するように兄たちがやってきた。


「アリシャ、お前、怪我はないか? 大丈夫なのか?」

「は、はい、お兄様」


 兄達は騎士団の訓練時に使っている短剣を装備していた。

 それを鞘から抜いて構える。

 騎士団の本格的な装備はそうそう外には持ち出せないのだが、この世界では護身用の為に短剣程度なら持ち歩く事が出来るのだ(ただし、当然然るべき場所や礼儀を必要とする場所には持ち込めないが)。


 頼れる兄の顔の上に、騎士団団長用の冷徹な仮面をつけた後、相手から視線を外さずに問いかけてくる。


「アリシャ・ウナトゥーラ。私の姫よ、あれは邪神か?」

「ええ、恐らくそうだと思いますわ」

「なぜ分かったのかは興味があるが、今はそれよりも対処法を考えるべきか……」


 こちらとしてもその話題は後にしてほしかったので、ほっとしていた。

 と、今まで黙って様子を見ていたウルベスが、声を上げる。

 彼も護身用の剣を持っていたが、その距離は兄の方より私のいる位置に近い。


「団長殿、ご指示を」


 彼は尋ねつつも、自分が何をすべきか分かっているかのようだった。


 そこで、しびれを切らしたかのように、黒猫が兄に襲い掛かった。

 体はただの猫だが、動物にしては俊敏すぎる身のこなしだった。

 兄は、苦戦しながらも指示を出した。


「ウルベス、お前には支援を頼む。トール、アリオは他の者を避難させろ。あとアリシャは余計な事しないように」

「了解しました」


 打って響くようなウルベスの返答に加えて、一般人の立ち位置にいるであろうトールやアリオまで返事をする。


「はいっ」

「任せてよ、お嬢のおにーさん」

「……」


 付け足すような最後の無言。

 賛同しかねる約一名の分は、もちろん私の無言の抗議である。



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