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第43話 創世神話



 ――

 

 それは、遥か昔の出来事。

 いにしえの時代の話。


 とてもとても気の遠くなる程に昔の出来事だった。


 何千年も前の、人々が古代と呼んでいるような時代の事だ。


 その当時は、人も動物も数えるほどしか存在していなかった。

 だがその代わりに、神々は当たり前のように人々の前に姿を現していた。


 そんないにしえの世界を治める神々たちの中に、ひときわ美しい神がいた。


 女神ユスティーナ。


 彼女は多くの神と生命達を虜にし、加護を与え、多くの恵みをもたらす存在であった。


 それは他の神々も同様で……音楽を司る男神、ミュートレスもそこに存在していた。


 神々が力を合わせて世界を創世した瞬間の音楽……刹那に連なる出来事を綴る「始まりの曲」を得意としていたミュートレスは、音楽だけを愛していた。そのため他の事には見向きもせず、ただ楽器を奏でながら一人の日々を過ごしていた。


 だがそんな男神は、ある日ユスティーナを一目見た瞬間に恋に落ちてしまう。


 けれども同じように彼女を思う者は大勢いた事からミュートレスは、その恋を自覚すると同時に諦めていた。己のその恋路が叶わぬものであると思って……。


 なぜなら。

 音楽を奏で、愛するだけのミュートレスより、見目の良い者や素晴らしい力を持った者が、大勢いたからだ。


 しかし、ユスティーナもまたミュートレスの事を思っていた。


 困難があり、長い時間があったが、二人は少しずつ互いへと歩み寄り、多大な年月をかけて、彼等は結ばれる。


 喜びも悲しみも、あらゆる苦難も達成も、幸福も不幸も、共に分かち合いながら。


 しかし、幸福な時間はあっけなく砕け散ってしまう。


 神話の時代が終わり、増え過ぎた人々が争いを覚えた頃、神々達はそれぞれどの生き物の味方につくか、意見で別れてしまっていたからだ。


 獣人、エルフ、人間、吸血鬼、その他さまざまな種族の者達……。


 同じ時を過ごし、同じ思いを分かち合っていた神々達は、それぞれに贔屓する者達への肩入れを強くし、互いを障害と定め敵対しながら、争いの火を大きくしていった。


 その火は、あっという間に誰にも止められないほどに強大なものになってしまう。


 ――これ以上は生命達が滅びてしまうだろう。


 その段階になってようやく、今までどこにもつかずに静観していた女神ユスティーナが動き出し、泣く泣く他の神々を討っていった。


 その中には、想いあっていたはずの相手……ミュートレスも含まれた。


 なぜ、と問うミュートレスの言葉にユスティーナは応えず、断罪の矢を放ち、男神の体を貫いた。

 そして、世界に平穏が戻るかわりに、かつての音楽の神は邪神となって、世界のどこかで長い間封印され続ける事になった。





 その物語は多くの人々に二度目の創世神話として語られる事になる。

 人々は物語を読みながらも、この世界のどこかで見守っているであろう勇気ある女神の英断を称え、悲劇の神である邪神を憐れみながら過ごしていた。



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