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第30話 馬車上の猫の存在が気になります



 攻略対象二人の言い合いが落ち着いて、屋敷へもうすぐ到着といった頃。


 トールが私に話しかけてきた。


「それで、これからどういたしますかお嬢様。マクギリス様には?」

「言わないわ」

「はぁ、そうおっしゃられるだろうと思っていましたよ。私としては、いくら友人でもそういう事はきっちりするべきだと思っているんですが……」

「いつもごめんなさい」


 素直に謝れば、トールに肩をすくめられる。


 使用人である彼には、本当に普段から色々と迷惑をかけていると思うが、仕方がないのだ。

 今はイベントが立て込んでるし、それらをいちいち父に報告していては、身の回りから人がいなくなってしまう。


 その代わり、今度彼には少しだけ優しくしてあげようと思った。

 攻略対象の一人である彼のイベントも、もうすぐなのだから。


「後でトールの好きなお茶入れてあげるわね」

「そんな、お嬢様自らの手でなんて、私には勿体ないです」

「私がしたいのよ。だから、私の我が儘につきあってトール」

「まったくお嬢様は……」


 呆れのまじった視線をトールからちょうだいすれば、アリオからも同じものが。


「お嬢って、そういう所上手だよね。俺達を甘やかすのが得意っていうか」

「そればかりはアリオに同感です」


 いつもは水と油のような二人が、珍しく意気投合してしまったようだ。

 私が頬を膨らませると、二人は笑いだす。


 馬車内に和やかな空気が満ちた。


 これならきっと一周目と同じようにうまくやれているはず。

 アリオのアドバイスで送った手紙にも、最後に向けての相談内容を記しておいたし、きっと前よりも良くなるに違いない。


 この世界が大変な事になるとか、未来がどうとかい壮大な事には想像が追いつかないけれども、彼等が笑っていられるようなこの日常を守りたいと、私はそう思った。


 その為にも……。


 私は馬車の天井を見上げて、その先にいる存在について思いをはせる。


 そこにはきっとおそらく例の黒猫がのっているのだろう。

 最後に立ちふさがる攻略対象が。


 一周目は調子に乗って構い倒しすぎて、最後のイベントで反撃喰らって刺殺されたが、二度も同じ轍を踏むわけにはいかない。


 あの猫は、いや彼は孤独を愛し、人間を嫌いつつも、音楽を愛している。


 すぐれた音楽の奏で手がいるから、彼は用がない時でも私達の周囲に留まり続けているに過ぎないのだ。


 そんな彼から、「愛されやすくなる」ヒロインでもない私がどうやって好感度を稼げばいいのだろうか。


 細かく考えたら、頭痛になりそうだった。



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