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第14話 今、怨霊に追いかけられてます





 で、……さっそくバッドエンドの危機となった(全力疾走中)。





 私は今、生死の危機に瀕している。

 シーンが飛んで唐突にそんな事を言われても意味が分からないと思うが、もうしばらくはつきあってほしい。

 いや、もったいぶっているわけではなく、割と必死なので余裕がない。


 あのあと私達は、ここまで来る時に使った馬車に戻る事なく、平原を走り回るはめになった。


 周囲に白い霧がたちこめていて、視界は最悪。数メートル先も見通せないような危ない状況の中を。


「はぁ、はぁ……っ」

「大丈夫か」

「はい」


 そんな中で、私とウルべスはとある存在から必死で逃げ回り続ける。


 今は姿が見えないが、背後でずっと耕運機みたいな音がしてるから間違いなくこちらを追いかけてきているはずだ。


 脳裏の中に蘇るのはホラー映像。


 深い霧の中ではきっと、黒くて巨大な丸い塊が、何本もある昆虫みたいな足を動かしている。


 美しい花々を蹴散らし、地面の土をひっくり返しながら、ついでに「オオオォォォ」みたいな雄たけびを上げて。


 前面には苦悶の表情をした人面がついていて、血の涙なども流していたり。


 画面で見た時もそう思ったけど、あんなものが突然視界に入ってきたら絶対パニックになる。


 全長十メートルほどはありそうだけど、見かけによらず素早いため、人間が全力疾走するのと同じスピードを出すことができた。


 だからきっと、霧の向こうではつかず離れずの距離を維持しながらこちらを追いかけてきているだろう。


 そんな物騒なものに捕まるわけにはいかないので、全力疾走しているのがただいまの状況だ。


 そんな私達の周囲に、護衛や使用人の姿はない。


 ウルべス様が危険を察知したすぐ後に霧が満ちてしまったので、彼等とはぐれてしまったのだ。


 ぜぇぜぇ息を吐きながら足を動かしていると、私の少し後ろを走っているウルベス様が心配げな声で話しかけてきた。


「無理はしない方が良い。きついなら、私が運ぼうか」

「いいえ、お気遣いなく、それに、そんな事をしたらウルべス様が走りづらくなってしまいますわ」

「私は男で君は女性だ。騎士団で鍛えているので、君一人くらい何とでもない。それに、こう見えても子供の頃は様々な場所を駆けまわっていたものだから、体力はあまるほどある」

「まあ、頼もしい事ですわ」


 できた婚約者様はこちらを気遣ってくれた、が微笑みつつ丁重に辞退。

 とりあえずは、余裕がなくなった時の為にまだ取っておく事にする。


「こう見えても体力がある」というセリフは、こちらも同じだ。

 私も、子供の頃はやんちゃだったのだから。


 しかし、


 白々しく思いつつも、私は呟いた。


「幽霊なんて本当にいたんですのね」


 この靄の中で逃げ回る事になった原因について、考えを巡らせつつ……。





 強制イベント。

 それはこの場所に来たら必ず起こるイベントだ。


 それは、私とウルベスがこの場所に来ると、エルフに恨みを持った怨霊がこちらを呪い殺そうと襲ってくるというイベント内容だった。


 だが、ゲームで画面越しにイベントをやるのと、実際で体験するのとは大違いで……、ウルベスには一周目の時にかなりはしたない姿を見せてしまった。


 恐怖で失神した女性を抱えさせ、大変な状況の中で走らせるなんて……。


 今すぐに忘れたい。


 いくら冷気を感じたり、視線を感じたり、気配を感じたり、怨念を感じたり、背筋が冷たくなったり鳥肌が立ったりしても、命の危機に瀕した場面でお荷物になるのは非常に心苦しい。


 一周目では、この時にはじめて現実を強く感じたのだったか。


 それまでは転生して第二の人生を送っている……なんて、夢でも見てる気分だったし、半信半疑だった。


 けれど、暴れ狂う心臓とか、体を駆け巡る血の流れがこれ以上ないくらい現実を突き付けてきたのだ。


 おどろおどろしいシーンで不気味な音楽が流れている中、安全な場所でボタンを押していくのとはわけが違う。

 目の前で起きる心霊現象のあれやこれやは強烈だった。


 結果的に一周目ではウルベスがいてくれたおかげで生き残ったけれども、生きた心地がしなかったし強烈なトラウマを植え付けられた。

 その後も何度もその時の事を夢に見てしまったくらいだ。


 怪我をしたり血が出たりするのは、痛みを感じない体質なので別に良いのだが、この世ならざるものに追いかけられるのは、精神的にきつい恐怖だ。


 ……そんな恐怖の光景の中、ただいまの私達はいるのだがら、


 ちょっと説明の時系列を飛ばしてしまったり、乱れてしまうのも仕方がないだろう。勘弁してほしい。




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