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第12話 アイリーンの花園



 アイリーンの花園 花畑


 よく晴れた空の下。

 青々とした草の茂る草原。

 そして見まわせば、周囲には綺麗な花が咲き誇る花畑。


 その場所は、凛とした性格の花の女神アイリーンが気に入った花畑……という触れ込みで話が広まっている場所であり、貴族の遠出場所の候補によくあがる場所でもあった。

 実際に訪れて見回してみれば、色とりどりの花が無数に咲き乱れて広がっていて、素晴らしい光景だと分かる。多くの者達が足を伸ばしたくなるのも納得できる花畑だ。


 ウルべスと約束を交わしてから一週間後。


 見晴らしの良い高台に私達二人は立っている。

 私達はその中でも特に、人のいない穴場にやって来ていた。


「まあ、素晴らしい眺めですわね、ウルべス様」

「ああ」


 周囲には、トールを含めた使用人達や護衛だけ。それ以外の人影はない。そのため現状は、貸し切り状態だった。


 屋敷からここへは馬車で来たが、今はそれも離れた所にある。

 付き合いの長い使用人の目を気にしなければ、婚約者である彼と二人きり……ともいえなくはない状況だ。


 遠出する場所の候補地にトールからいくつか情報を聞いていて、人目に付かない絶好の場所があると教えられていた。だが、正直言ってこんなに素敵な場所だとは思わなかった。


 目の前の光景を見て、一周目の時と同様に、二周目の私も改めてそう思う。

 この花畑なら、きっと何度訪れても見飽きる事はないだろう。


 私は周囲へと巡らせていた視線を止め、ウルベス様を見つめて提案する。


「ちょっとお散歩してみましょう。ウルべス様は自然の花々や虫などについて知識が深いと、以前聞きましたわ。良かったら、私にその話を聞かせていただけませんか?」

「喜んで。婚約者殿が望むのであれば」


 それから私達は二人で並んで、足元に咲いている花や、目の前を横ぎった昆虫の話などに耳を傾けた。


 途中で珍しい石ころなどを拾ったり、手頃な大きさになっている花のつぼみを見つけたりも。後は、どんな花が咲くのか想像してみたり、脱皮した虫の抜けがらを見つけて本体を探してみたりもした。そんな事をしながらのんびりと周囲を歩き、二人の時間を楽しんだ。


「私の婚約者殿はおかしな人だな。君くらいの歳の少女ならば、もっと他の話題を出すだろうに」

「例えばお化粧とか、綺麗なお洋服、小物やお菓子とかかしら? もちろんそういった物も好きですわよ。でも……せっかくこんな素敵な場所にいるのに、すぐ目の前にあるものに目を向けないなんてもったいない事ではありませんか?」


 ここに無い物についての話をするよりは、今ここでしかできない話をした方が効率的だし、より楽しめるだろう。

 と、そう私が言えば、ウルべス様は珍しく笑みを浮かべて同意してくれた。


「ふ、確かにその遠りだな」



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