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放課後の怪談  作者: 真
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第六話 七不思議の一

 北階段の二階の踊り場には、全身が映る大きな鏡がある。西向きの窓からしか陽が当たらない階段の踊り場は薄暗く、正門前の東階段や体育館に近い南階段と違って、生徒もほとんど通らない。


 北校舎にある音楽室や、小さなプラネタリウムを併設した天文学室に行きたい時位しか使わない生徒が多い。

 それでも、二階踊り場の鏡が不気味だと言って、遠回りしてグラウンドを通って来る生徒もいるくらいだ。


 音楽室から教室への帰りがけに忘れ物をしたと言って音楽室に戻った杏が帰ってきた時、


「顔色が悪いよ、どうしたの」

と心配して聞く実琴に


「あの鏡が不気味で怖かった」

と杏は応えた。


 そうだ、あの時からだ。杏の様子がおかしくなり、吉田をなるべく遠回しに見るようになったのは。


 あの時、違和感があった。

 杏はいつもは一人では通らない鏡の前を、次の授業まで時間がないから通ったと言っていたが、近道ルートである北階段で行った割には、帰って来るまで時間がかかっていた。


 しかし次の時間が体育だったので、着替えに時間を取られ、詳しく聞くこともなく杏が着替えるのを待って体育館へ急いだのだ。


 どうしてもっとちゃんと聞いてあげなかったんだろう。

 杏は何か話したそうにしていた気がする。

 体育でバレーボールを試合形式で行っているうちにすっかり忘れてしまった。


「何か思い出した?」

 いつの間にか机を降りて、実琴の前に来ていた八代が聞いた。


「あの北階段の鏡の前を、一人で杏が通った時があるんです。その時から様子が変というか……」


「ああ、あの鏡」

 八代が言った。


「鏡に映った人の姿が一人でに動き出すとか、その人の隠したい感情が見えるとか言われているね。」


「学校の七不思議の一つと言われてます。」


「そうだね、ほかに理科室の人体模型が話しかけるとか、音楽室のピアノが誰もいないのに鳴るとか…」


 よくある話だよね、と八代は茶目っ気たっぷりに言った。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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