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放課後の怪談  作者: 真
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第四話 生徒会室にて

「それで、ヨッシーと杏ちゃんはどうなったの?」


 ニヤニヤしながら聞いてくる青年に、


「学校内で起きていることは、全てお見通しではなかったんですか?」

と素っ気なく応えた。


「そうだね。僕は校内の出来事を全て見ることができる。でも僕が見て知っていることと、君が知っていることは、違うかもしれないからね。」


「……私が知っていること?

 …どういう意味ですか?」


「どういう意味だと思う?」


 ふふっと楽しげに笑いながら、立ち上がった幽霊の青年が、生徒会室の長机の椅子の一つに座っている実琴のすぐ横に来て、実琴の顔を覗き込んだ。


 目の前にどアップで迫ってくる美形に思わず顔が赤くなる。

 青年に顔を見られたくなくて、プイッと実琴は横を向いた。


「八代さんはいつも言っていることが回りくどいです。」


「うん、まあ、そうだよね。」

 そういうと八代は長机の上に長い脚を組みながら座り、窓の方を向いた。


「今日も夕陽が綺麗だね。

 ……この時間は好きだよ。君と会えてこうして話ができる。」


 にっこりと笑う八代に思わず見とれてしまう。しかも他の人が言ったら気障な台詞も八代が言うと格好良いと思えてしまうのが、


 なんか、ちょっと…ムカつく…

と実琴は独り言ちた。



「…それで杏ですが、最近ちょっと変なんです。」


「何が変だと思うの?」


「夏休みも明けて、吉田くんが登校できるようになってからは、彼に学校で会えるってすごく喜んでいたのに、なぜか今は彼の姿を見かけても、近づきたがらなくて。」


「うん」


「露骨に避けているわけではないし、吉田くんのこと気にはなってるみたいなんですが。」


「それはいつから?」


「たしか、吉田くんが学校に来てから一週間くらいでしょうか。突然よそよそしくなった…ような…。」


「ふーん」


 八代は実琴から、再び外の景色へ視線を移した。

 前髪をかきあげて、そのまま右手を額の上に置いたまま、静かに赤く染まった空を見ている。


 実琴は静かになった八代を見ながら、小さなため息をついた。


 杏とは高校入試の時、グループ面接試験の会場で初めて会った。

 高校は進学校ながら、スポーツでもいくつもの部が全国大会に出場している、県内では比較的有名な私立高校だ。


 実琴と杏は1年の同じクラスで再会し、知っている顔がいることにホッとして、いろいろ話すようになった。今では毎日一緒にお昼のお弁当を食べている。


 杏は吉田の声が好きだと言ってはばからない。好きな声優と声がよく似ているらしい。


 1年次の生徒会総選挙で吉田は書記になり、美琴は会計になった。同じ生徒会役員として実琴に教室でも話しかけてくる吉田と、杏もなんとなく話すようになったのだろう。役得だとか言って嬉しそうにしている。


 小柄で小さな顔に大きな丸い眼鏡を掛けている杏は、図書委員として図書室に出入りする機会が多いせいか学校でのイメージは大人しい文学少女だ。しかし、実はアイドル声優のファンクラブ第1号だったり、新幹線で2時間以上かけて好きなイケメン俳優の舞台を一人で観に行ったりと意外と行動派なのを、実琴は知っている。


 吉田が怪我をして入院し、生徒会で誰か見舞いに行くことになったと話した時も、じゃあ一緒に行こうと言ったのは杏だった。


 そういえば、退院以来吉田を見かけると積極的に話しかけていた杏が急に変わった日は、どんなことをしていた日だったろう……


 実琴は八代の横顔をぼんやり見ながら、自分が知っていることを考えることにした。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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