第二話 病院に行こう
吉田が入院している病院は、学校からバスで20分くらいにある、県立の総合病院だった。
最近改築した病院のエントランスは広くて綺麗だ。
総合受付で入院棟の受付場所を聞いて、広い病院の中を二人で歩いていると、同じ学校の制服を着ているガタイの良い学生とすれ違った。
「ねえ、今の人、B組の小金沢くんじゃない?」
杏が言ったが、小金沢の名前に聞き覚えがないため、
「よく知ってるね。知り合い?」
と聞いた実琴に呆れるように、杏が応える。
「有名人よ。バスケ部に入ってたけど素行の悪さで退部させられたって。」
実琴の高校は県大会で毎年入賞して、インターハイにも出場するほどの、バスケ強豪校だ。
バスケ部も試合でレギュラー入りの可能性の高い一軍から予備軍の二軍までおり、引退まで公式試合に出れないままの部員も数多くいる。
練習も厳しく、途中で部を辞めていく部員も多い。
とはいえ、中学からスポーツ推薦で入ると通常は引退までは部を辞めることができない。小金沢はスポーツ推薦組だが、退部させられたので例外だと杏は言った。
「素行が悪いって、去年の飲酒事件の人?」
「そうそう、飲酒して他校生と喧嘩したって言う噂だよ。」
去年、生徒会会計だった実琴の耳にも入ってきたバスケ部員の飲酒事件は、ウインターカップに出場するはずだったバスケ部が部員の不祥事で、出場辞退という羽目になった事件である。
1年のバスケ部員数人が誰かの家で飲み明かして、帰宅するときにぶつかった他校生と揉めて喧嘩になり、警察に通報された事件となった。
新聞の地方欄にも載ってしまい、喧嘩した学生と、喧嘩はしていなくても一緒に飲んでいた学生らが二週間の停学処分となった。
ウインターカップに出場する予定だったバスケ部員も、応援していた学生達も、事件を起こした数人のバスケ部員をことごとく非難した。居づらくなってそのまま学校を辞めて転校した部員もいると聞いている。
その喧嘩した学生が小金沢らしいと杏は言った。
思わず実琴が振り返って小金沢の後ろ姿を見ていると、杏は腕時計を見て慌てたように言った。
「それより、面会時間過ぎちゃうから早く行きましょ。」
杏に促されて、小金沢のことは考えるのをやめ、吉田の病室へ急ぎ足で向かうことにした。
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