第一話 生徒会室の不思議
2018年、明けましておめでとうございます。
プロローグに続き投稿します。
拙い文章はご容赦願います。
よろしくお願いいたします。
宮野 実琴は、生徒会室の大きな窓から見る夕焼けが好きだった。
今日で今年度の生徒会副会長としての引き継ぎも終わり、集まっていた新役員もつい先程、最後の一人がさよならと美琴に声を掛けて生徒会室を出て行った。
生徒会室に残ったのは、実琴一人だ。
ガランとした部屋で一人ぼーっと夕焼けの空を眺めていると、グラウンドでサッカー部の練習をしていた玉川から声が掛かった。
「 宮野〜!今度の試合、来週の土曜日だから絶対見にこいよ!」
言うだけ言って、くるりと後ろを向いてそのままサッカー部の練習に戻って行く。
「もう何回めだよ……。亘、しつこ過ぎ! 分かってるっていうのに……」
サッカー部の幼馴染にぶつぶつと文句を言った。
玉川 亘とは同じマンションで幼稚園が一緒だったため、美琴が3歳の時から家族ぐるみの付き合いをしている。今でも母親同士は旅行に行くほど仲が良い。
なんの因果か小中高と一緒で、幼馴染と言うよりは、一人っ子の実琴にとっては兄弟みたいな感じだ。
そんな玉川とも中学に入った頃は思春期真っ只中の気まずさで、しばらく学校で会っても話さない時期があった。しかし高校受験が終わって、同じ高校だと分かってからは、学校でも少しずつ以前と同じように話すようになった。
「そういえば、中学に入った頃からあいつ、私のこと実琴ちゃんって呼ばないで苗字で呼ぶようになったんだよな。」そんなことを思い出して苦笑いをした。
「なに一人で百面相してるの?」
いきなり掛けられた声にビクッとして振り返り、同じ部屋の中にいつの間にかいる人物を睨みつける。学生のようだが10代には見えない落ち着きがある。
「居るなら居るって言ってください。」強めの口調で言うが、言われた青年は気にした様子もなく、実琴に笑いかけた。
「ぼくはいつも、居るけど居ないし、居ないけど居る。君はこの意味わかるよね。」
ふんわりと笑う。一見すると冷たく見える美貌が笑うと印象が変わった。
実琴はため息を一つついた。
「いつもは重役っぽくもっと遅い登場じゃなかったですかね。」
嫌味ったらしく言ってみるが、言われた青年は楽しそうに実琴を見つめている。
「それより、今日は何して遊ぶ?」
にこにこと邪気のない顔で言われて、気が抜けてしまう。
「八代さんとは遊びません」
実琴は青年に毎回会うごとに言われる「遊ぼう」に毎回返してる返事を返す。
「え〜、ぼくの退屈は、実琴ちゃんがなんとかしてくれないと。実琴ちゃんはぼくに呪われてしまうよ。」
「どんな脅しですか。しかもシャレにならないです、地縛霊に呪われるなんて!」
八代の姿は実琴にしか見えない。
以前、生徒会室で八代から話しかけられて、そのことに気付くまで、そう時間はかからなかった。
「ぼくは地縛霊じゃなくて、この部屋に住んでいる幽霊だよ。」
「いやいや、それを地縛霊って言うんですよ。」
地縛霊と言われた青年は、実琴と同じ高校の制服を着ている。だが、実琴は同級生とは全然雰囲気が違うと常々思っている。時々実琴に見せる大人びた顔は年齢不詳な感じがして、整った顔立ちはハンサムと言うよりは、美形と言った方がしっくりくる。
しかも日本人離れしたモデルばりの9頭身だ。彼が生きてた時はさぞかしモテモテだったでしょうね、と実琴は目の前の幽霊を見ながら、こっそり独り言ちた。
「八代さん、私は退屈しのぎのおもちゃじゃないし、こないだみたいに八代さんに相談したいことも今はないです。」
「実琴ちゃん、八代さんなんて他人行儀だよ。潤でいいよ。」
「八代さん、今日は友達の部活が終わるのを待ってるだけで、もうじき帰ります。」
「それは、さっきのサッカー部の彼?」
「いえ、園芸部の鈴木 杏です。今日はこの後一緒に吉田くんの見舞いに行くことになってて、待っているんです。」
杏は実琴が高校に入学してからずっと一緒にお昼を食べている同じクラスの友達だ。
「ああ、杏ちゃんはヨッシーのこと好きみたいだもんね。」
八代の言う通り、杏は1年の半ば頃から、同じクラスで生徒会書記の吉田が好きだった。
「…八代さんって、この部屋から離れられないんじゃなかったですか? なんでそんなことわかるんです。」
「ふふふ、ぼくはこの部屋から出なくても、この学校で起こっていることは、全て把握してるんだよ。」
八代の千里眼に驚きつつ、でも八代ならありうるなと思う。そう実琴に思わせる雰囲気が八代にはあった。
ガラッと生徒会室のドアが開いた。
「実琴、待った? ごめんね。」
待っていた杏が生徒会室に入って来て、きょろきょろと部屋の中を見渡した。
「あれ、実琴一人? 今誰かと話してなかった?」
実琴の目の前で、八代が悪戯っぽくウインクをした。
実琴は、はあっと息を吐いてから杏に向かい、
「誰も居ないよ。窓を開けてたから、外の音が聞こえたんじゃないかな?」
と言って、大きく開けていた窓を閉めた。
「戸締りもういいの?」
「大丈夫。吉田くんの病院、高円寺の総合病院だよね。見舞いの時間が終わるから、早く行こう。」
まだ不思議そうな顔をしている杏をドアの外に押し出しながら、そっと振り返ると、もう八代の姿はなかった。
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完結まで読んで頂けると幸いです。
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