第十二話 お守りに入れた写真
文化祭も無事に終わり、生徒会室ではささやかながら反省会と称した慰労会を行なっていた。
「皆、コップ持ったね。じゃあ、昨日今日と本番は特に本当に頑張った!
皆のおかげで無事、文化祭も終わった。いろいろ反省点はあるかもしれないけど、ま、それは後で考えよう。
取り敢えず今日までお疲れ様!」
皆の前で生徒会長である殿村が、コップを目の前に掲げた。
「カンパーイ!」
と言ったのを機に、皆自分の席に座ったり、立って歩き回ったり、歓談しながら、文化祭で確保しておいた食べ物と、自費で会長が買ってきていたサンドイッチなどの軽食を思い思いにつまみ始めた。
ジュースを手に学園祭実行委員や生徒会役員に話しかけながら移動していた実琴は、部屋の隅で一人ポツンと佇んでいる女生徒の前に立った。
「伏見さん、お疲れ様。」
声を掛けられた生徒は、実琴を見てぎこちなく笑った。
「宮野副会長、お疲れ様でした。」
「宮野でいいよ、伏見さん。」
実琴は、伏見の隣に移動する。
「伏見さん、はじめての文化祭大変だったでしょう。
2年の書記の吉田くんが怪我して動けない分、1年書記の伏見さんに負担がかかってしまったよね。」
「いえ、宮野先輩を始め、皆さんにいろいろフォローしていただきましたから。それに吉田先輩も松葉杖つきながら、準備を手伝って下さいました。」
伏見は両手を胸の前で左右にぶんぶん振りながら、慌てたように言った。
「でも、伏見さん。文化祭前に遅くまで残ってすごく頑張ってくれてたの知ってるよ。
…まったく、吉田くんも一番忙しい文化祭前に階段から落ちて怪我してしまうなんてね。」
「違うんです!」
いつも大人しい伏見の大きな声に、驚いて実琴は伏見を見た。
伏見ははっとしたように、実琴から顔を逸らし呟くように言った。
「すみません。でも、吉田先輩も怪我をしたくてした訳ではないと思うので。」
「うん、そうだね。伏見さんは優しいね。」
「…そんな事ないです。」
「…伏見さん、吉田くんとは元々知り合いだった?」
実琴は伏見を見ながら言った。
「…どうしてですか?」
「ごめんね、たまたま拾ったお守りに、伏見さんと吉田くんの写真が入っていて。」
北階段の窓の下にある学校の裏庭で、実琴は破かれた手紙の残りの切れ端を見つけることは出来なかった。
さすがに風で散らばったかと諦めかけたその時に、花壇の端で見つけたのがこのお守りだった。
秋桜の花の下に、ひっそりとその三峯神社の学業成就のお守りは落ちていた。
拾った時に、お守り袋の中からはみ出ていた写真を、申し訳ないと思いながらもそっと袋から取り出してみた。
その写真には、楽しそうに笑っている伏見と吉田が写っていた。
「それに、小金井くんも。」
その写真を伏見に渡す。
二人しか写っていない様に見えた写真は伏見の横で折り曲げられており、畳まれた部分を広げるとそこには、笑顔の小金井が写っていた。
伏見の目が潤んだのを見て、実琴はそっとその場を離れた。
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