第十話 ある少女の日記3
◯月×日(金)
一昨日の夜、マコ兄が飲酒して他校生と喧嘩をした。
マコ兄は二週間の停学になった。
更に悪いことに、喧嘩をしたのはバスケ部を既に辞めたマコ兄だけだが、マコ兄の送別会をバスケ部一年で行い、その時に酎ハイを持ってきた誰かの悪ふざけで飲んでしまったとかで、その時のメンバー全員が停学になった。
…このせいで、冬のバスケの全国大会にうちの高校は出場できなくなるかもしれないと、青ざめた顔をしておばさんがうちのお母さんに話しているのを聞いた。
お酒は好奇心で飲んじゃったのかな。
でもマコ兄が、喧嘩をして暴れたというのは信じられない!
バスケ部を辞めたことで自暴自棄になったんじゃないかっておばさんは言っていたけど、本当にそうなの?
ねえ、マコ兄、本当にそんなことで喧嘩したの?
◯月×日(月)
中学でもマコ兄のこと、噂になってた。
ウインターカップ出場が決まっていた県代表の高校バスケ部が、飲酒して乱闘騒ぎを起こしたバスケ部員のせいで出場を辞退することになったらしいというものだ。
マコ兄のこと、みんな悪く言ってた。
マコ兄はベンチ入りもできない選手だったから、わざとバスケ部に迷惑をかけたんじゃないかと言う人もいる。
そんなこと絶対ない!
確かに酒を飲んで喧嘩をしたかもしれないけど、辞めていたって、バスケ部に迷惑をかけたいと思う人じゃない!
思わず、部屋に閉じこもっているマコ兄のところへ乗り込んで、マコ兄に何があったのか、マコ兄の口から聞きたくて問い詰めたが、マコ兄は苦しそうな顔をするばかりで、何も言わなかった。
◯月×日(金)
推薦受験で高校に合格した。
彼とマコ兄のいる高校だ。
ずっと会ってくれない彼にやっと会える気がする。
マコ兄は謹慎処分が解けて学校に行き始めたが、毎日辛そうだ。
そんなマコ兄から、彼とのことがどうなったのか聞かれた。
どうにもなってない、いや、別れたことになってるのかな。そもそも付き合ってたのかな。
マコ兄とのこと誤解されたままだと言ったら、ごめんと言われた。俺とも話をしてくれない。しかもこんな状況になって、学校で話し掛けることすらできないとマコ兄から言われた。
マコ兄のせいじゃないよ。
ずっと彼とマコ兄を天秤にかけてた私が悪いんだ。
◯月×日(月)
入学手続きで高校に行った。
帰りに自由に構内の様子を見ていいと言われたので、見て回ることにした。
学校説明会の時に主要な設備は説明されているので、興味があるところだけ行ってみた。
図書室、理科室、美術室、音楽室、視聴覚室、そして生徒会室…
生徒会室の前に来たら、丁度ドアが開いてすごく綺麗な人が出てきて驚いた!
開いたドアから見えた人たちも、見目麗しい人が多かった気がする。
生徒会って美男美女じゃないと入れないんじゃないよね?!
生徒会には彼が一年の書記でいるはず。
もう一回、彼とちゃんと話をしたい。
虫のいい話だと自分でも笑っちゃうけど、できるなら始めから彼とやり直したい。
彼ときちんと向き合って、自分の気持ちを彼に言いたい。
彼からきた最後のメールを見て、どうしようもなく胸が痛かった。
マコ兄のこと大好きで、マコ兄の彼女に嫉妬したりしてたけど、でも胸が締め付けられるような傷みを感じることはなかった。
彼が時折見せてくれた、私にだけ見せるはにかんだ笑みが見れなくなって、次に会った時は冷たい目で見られるんじゃないかと思ったら、胸の奥が苦しくてたまらなくなった。
それでも、会いたいと思っている自分に驚いた。
失くしてから気づくバカな自分が本当に嫌になった。
彼は私に好きだと行って、私をずっと待っていてくれたんだから、どんな結末になったとしても、今度は私から行かなきゃいけない。
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