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チケットがあるので私は気になるあの娘を映画に誘う

作者: 山目 広介

~~その1~~


 映画館に勤める知り合いから映画のチケットを手渡された。

 私と共通の知り合いから頼まれていたが、キャンセルされたから、と。


 ……なぜ? えっ、私が買わなきゃいけない理由あるの?


 さらに手の中を見る。なぜか3枚ある。……なぜ? 2枚ならまだ分かるが多くない?


 呆然としてる間に何故か話は纏まり購入する流れになっていた。

 気付いたのはお金を財布から取り出し差し出してる時であった。

 ヤバいと思って手を引く前に持ち逃げされた。

 手元には3枚のチケットがあるだけだ。

 またしてもやられた。いつもそうだ。あいつはマシンガントークでこちらの口が挿めないまま、向こうの有利に事を進める。






 ということで手元にある映画のチケットで女の子でも誘おう。

 切っ掛けもなく、話すことは挨拶と仕事のことだけであった可愛くて声が掛けづらく高嶺の花だった女の子に、これで話す口実ができた。

 日付も決まっていれば、断られてもダメージが少ないだろう。

 日が悪かったら、仕方がない。言い訳も完璧だ。断られても振られたわけじゃない! 大丈夫。よしっ!


 昼の休憩時間、食事が終わって食堂脇のラウンジにいつも寛いでいる処を見かけるからそこに襲撃をかける。

 まずは挨拶。ごぶさた、調子はどう? とかかな。

 そして本命。時間は限られているからな。映画のチケットを出して誘ってみる。

 う~ん。定番のチケット余ってるから行かない? とか?

 いやいや、その前に、この映画知ってる? の方がよくないだろうか?

 よし。それで行こう。

 そして興味を引いていたら、誘ってみよう。

 だが男と二人は嫌がるかも知れない。

 そういうときはこの3枚目のチケットがある。もう一人誘って安心を誘おう。

 上手く行ったら、当日の集合場所や時間を取り決めて残りの休憩を一緒しよう。

 おお、なんかわくわくしてきた。こんなの久しぶりだ。

 出来ればもう一人にはなんとかドタキャンでもしてもらって二人っきりにしてもらおう。

 なんか完璧じゃね。よーしっ! この計画で行こう!






 ―― 決行日 ――


 昼。

 食事を掻き込み、隣のラウンジへと急ぐ。休憩の開始時刻が彼女より遅いため、もう食事は済んでいるかも知れない。

 ちゃんといるだろうか。

 不審にならないように気をつけながら周りに視線を巡らす。

 いた。

 こちらに背を向け、首を倒して手元を見ている。たぶんスマホを見ているのだろう。

 一人テーブルに就いている。絶好のチャンス到来。

 後ろから声を掛けるのは良くないだろうと少し遠回りしながら彼女の横に辿り着く。

 ああ、心臓が喧しい。落ち着かない。こっそり深呼吸。でも無理だった。

 彼女が気付いて顔を上げる。ヤバい。挨拶だ。思い出せ。


 「ああ、久しぶり。調子の方はどう?」

 「…はぃ」


 手で座席を示されるのでそこに座る。

 ええっとー。次はチケットだったな。


 「この映画知ってる?」

 「……えぇ」


 ほっと安心する。よーしよーし。ここまでは計画通りだ。

 ちょっと反応が薄いのが気になるが、まあいいだろう。


 「ちょっと手違いがあってね、知り合いにチケット買わされたんだ。」


 彼女は黙って話を聞いている。

 ああ、この流れだと購入を勧められるみたいだからかな、そこもカバーしないと。


 「週末時間があったら一緒に行きませんか? 奢りますんで。」

 「……」


 ドキドキ。ヤバい、考え込んでる。断られるのか。

 そ、そうだ。チケットが3枚あるから更に安心材料で誰か誘うように仕向けよう。

 あ、顔を上げた。断られる! いや、断られる前に捲し立てよう。


 「もし何だったらでいいですけど。実は 「…はぃ」 チケット3枚あ、るから、もう一人誘って、も……」


 ……し、しまったー!!

 OKなのにいらん情報を与えてしまった!!

 返事の情報が頭に浸透するのが遅かったーー!!


 墓穴を掘った。策士策に溺れるというか。

 いつの間にか共通の知り合いから私の苦手な人が選出され、彼女が誘っておくそうだった。

 別に誘わなくても、と口に出したがチケットが勿体ないと言われて同意してしまった。

 そして連絡がくる。滅茶苦茶乗り気じゃないですか、この人。

 すごいテンションに二人にしてとは頼めない……

 ま、負けるもんかっ!


 数日後。

 3人一緒に映画を見るのだった。








~~その2~~


 なぜか、目の前では後輩の女の子が象に触ったと、キャッキャとはしゃいでいる。

 私たちのところまでは象の鼻は届かなかった。

 後輩ちゃんは手の匂いを嗅いで、くっさ~、と言っている。

 触らなくて良かった、と私は思う。

 今は映画が終わって、その映画のイベントが外の会場でやっていたため、そこにいた。

 そこで一緒に象を見ていた。象が主役の映画だったのだ。

 隣には気になってるあの彼女がいる。

 しかも私の苦手な人物はドタキャンした。

 だが騒いでいる邪魔者がいる。なぜだ?

 せっかく邪魔者が減ったのに別の邪魔者がいるのだ。

 畜生。どうしてこうなった!?








 ―― 数日前 ――


 前回、映画の後、また一緒に来ようということになった。

 それで映画館の知り合いに3人分チケットくれと頼んだら、無料券をくれた。

 何故か2枚。

 どういうことか当然尋ねる。

 これらはペアチケットだという。つまり4人分だ。

 イベントもやるため人が欲しいらしい。

 日付も決まっている。

 また気になるあの()に声をかけよう。

 まあ、そのために頼んだことだし。


 さて。今度はペアチケットだ。

 そしてだ。あのウザい人は彼氏持ちだ。

 上手くいけば、2-2でWデートに持ち込めるかも知れない。

 となれば早速連絡だ!

 と、待った。どうせなら直接話したいな~。


 翌日、私はあの彼女と直接話そうと昼いつもの場所に襲撃した。

 声を掛けて挨拶する。

 そして事情を説明したら快く引き受けてくれた。一緒に映画に行くことを。

 やはりいい子だ。

 そしてウザい人にも連絡をいれてくれるらしい。

 よかった。あの人、いい人ではあるがどうにもテンションが付いて行けないんだよ。

 私から声を掛けるのではなくて、ホントよかった。

 よしっ。これで彼氏を連れて来て、2-2で別れれば、成功だな。


 ……連絡が来た。後輩ちゃんが来るらしい。……なぜ!?

 なぜあんたは彼氏呼ばないんだよっ! もしかしたらあの娘に警戒されたのか?

 だからって3-1はないだろう。しかもその子もテンションが高くて苦手なんだよ。

 しかし映画に誘えたということで、目的はとりあえず達成したと思うことにした。


 それにだ。あのテンション高い組は、だから一緒に騒ぐだろう。

 つまり、そこが狙い目だ。

 余ったあの娘と一緒に居れば、より親密になれるだろう。

 私と後輩ちゃんとの接点は少ない。そういう組み分けにはならないだろう。

 問題は元祖テンション高い人だ。あの人と組になると引き摺られてしまう。

 なんとかそれだけは回避しなくてはいけない。

 そしてテンションの高い者同士でくっ付けてしまえば。……ふっふっふっ……








 ―― 映画の日 ――


 いつもテンション高い人からテンション低めで連絡が入る。

 ちょっと熱が出たのでキャンセルとのこと。

 ……できれば後輩ちゃんも道連れにして~


 そんな願いをしていると、気になる娘がやって来る。

 そしてちょっとだけ一緒に待ち合わせていると彼女に連絡が入る。

 後輩ちゃんはちょっと遅刻とのこと。

 キャンセルでも良かったのに……

 く、計画が。さすがに3人だと一人を蔑ろには出来ない。

 しかもだ。私と接点の少ない後輩ちゃんではあまり話せない。

 となれば、後輩ちゃんは彼女と話すだろう。つまりハブは私だ。

 口数から考えてどうしても主導権が後輩ちゃんになってしまう。


 そんなことを考えていると、まだ後輩ちゃんが来ないため、元々時間に余裕があるので店で軽食でも取ることになった。

 彼女はコーヒーをブラックにして飲んでいた。

 真似してみる。

 にがっ!

 よく飲めるね。ちょっと話題を振ってみる。

 訊いてみるとダイエットのため普段から糖分を控えているそうだ。

 どう見ても痩せているのにね。

 直接は言えないけど、もうちょっとふっくらしててもいいぐらいだよ。

 普段は紅茶に砂糖をたっぷり入れてるから、私はちょろちょろとコーヒーを啜る。


 そのちょっとしたコーヒーブレイクで後輩ちゃんが到着したようだ。

 開演まで時間を潰すため、同じ場所にあるショッピングモール内の他の店でウインドウショッピングをする。

 そしてやはりというべきか、私は一番後ろを歩きながらハブられていた。

 う~ん、割り込む隙が無い。彼女もたまにこちらを気にしてくれるが、隙が無い。

 後輩ちゃんはこちらにも声は掛けるものの、返答は期待してないのか、すぐさま話題が流れていく。

 私なら、あんなに話せば5分と持たずに喉が嗄れることだろう。

 結局、映画の開演時刻に間に合うよう戻る時まで私が口を挿めることはなかった。





 そしてその日、イベント会場で後輩ちゃんが一人で騒いでる時にちょっと彼女と話したぐらいで他にはタイミングがまるでなかった。


 ま、負けるものかっ!










~~その3~~


 その日、私は飲み放題メニューの端から飲んでいた。

 どうして、こうなった?








 ―― 数日前 ――


 映画館の知り合いからまた、チケットを受け取っていた。

 今月まで、つまり今週の土曜までの無料チケットらしい。

 これで仕事の平日は無理だろうから、土曜日を特定して誘えるだろう。

 今回はチケットが3枚。ホントは2枚にして、と思ったが一応だ。

 後輩ちゃんは強敵すぎた。

 例え前回4人になっても一人で話し続けただろう。

 あれはダメだ。しかし4人分だとまた後輩ちゃんに白羽の矢が立つでしょう。

 だったら最初から除外すればいい。

 それで、とりあえず最初に二人で誘えないか頑張ってみよう。




 そして翌日。

 じゃあ早速二人に連絡しましょう。と言う彼女を引き留める。

 その目が皆と行くことが前提となっているようで、なんとかチケットが3枚しかない、と言うことしか出来なかった。

 く、へたれてしまった。


 そして金曜、定時過ぎに連絡が入る。テンション高めなあの人からだ。

 トラブルで休出だ、と。

 ここで休日出勤って……。

 ちなみに気になっている彼女はあの人の部下だから当然休めない。

 つまり中止。

 二人を誘っていなければ、まだチャンスがあったかも知れないかったのに。


 「おーい! 飲みに行かね?」


 気落ちしたそのとき、同僚が丁度飲みに誘ってくる。

 お礼に彼女と一緒に行けと、二人分の映画のチケットを渡し、一緒に飲みに行く。


 そして翌日。

 私はメニューの制覇に失敗して、二日酔いで苦しんでいた。

 チクショー!!

 負けるもんかっ!!






 そしてまた、次の計画を練るのだった。




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