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第八話

飲み呑みノム…こんな日常が続いてます。

 「休みなど、いらんのにな…。」

 今日は日曜日、私は治安部の休みの日だった。


 別に日曜日が『休み』だというワケではない。

 私としては休む必要はないのだが、どうも私は『働きすぎ』らしく。


 「たまには休んでください。」と言われてしまった。


 まあいい、たまには町へ出るのも悪くない。

 そうだアラバを誘って、好きな場所とか聞き出してみよう。


 そう考えると休日も悪くないものだと、少し上機嫌になって部屋をノックしてみた。


 コンコンッ


 ホントにいないのか確かめる為に目をつむり、ドアに耳を当てて、もう一度ノックしてみた。


 …人の気配はない…。


 どうやらホントにどこかに行ってるみたいだ。

 まあ、こんなに良い天気だ。何もしない方がどうかしているだろう。

 私としてはお前と過ごして見たかったのだが、先に予定があったのなら仕方がない。

 

 「お姉さま、そんなトコロで何をしていらっしゃるのですの?」

 耳を離し諦めていると、そんな声が聞こえたので振り返ってみるとユカリがいた。


 「今日休みをもらってな。」

 「まあ、そうなのですか。」

 「それで市内をアラバと一緒に行こうと思ったのだが、どうも留守のようでな…んっ、どうした?」

 「…あの、お姉さま。どうしてあんなヤツの事を気になさるのですか?」

 「『あんなヤツ』か、ひどい言い様だな。」


 思わず笑ってしまうその態度に、ユカリは私を怒らせたと勘違いをして「あっ、ええっと」と戸惑いながら言う。


 「ととと、とにかく、あの方はお姉さまに絶っっ対、不釣合いです。」

 「ふむ、『不釣合い』とは?」

 「お姉さまは、運動もさることながら、勉学も顔もスタイルも良いのですから、もっと相応しい殿方はいらっしゃると思うのです。」


 「どうやらユカリ、キミはアラバと私が行動を共にする事が相当気にくわないらしいな。

 確かに彼の学園内の生活態度、成績は普通だ。

 だが彼は結構物知りだし、相当頭もキレていると思うぞ?

 例えば…。」


 

 それは新発売のゲーム機の話題が上がってイワトが、流行のゲーム機を買うか、それとも新発売のそれを買うか迷っているという話をしている時だ…。


 「…でも『新発売』って言ってますけど、その会社って、数ヵ月後には小さくして『新しく出ました』とよく言ってくるでしょ?

 だったら今流行っている方を買って、その小さくした方が出た時に買った方が数倍得だと思いますし、手間も掛からないと思いますよ?」


 「おお、そうか、お前の予言って結構当たるからな。

 じゃあオレ、流行ってる方を買うわ。」


 とそんなやりとりがあったので、その会社の知り合いが私の方にいたので聞いてみると…。


 「どこからそんな情報を聞いてきたのですか?」


 『企業秘密だ』と言ってはいたが、その言葉は肯定する為の否定だった。


 そして、そんな事もあったのでテレビに映った他の地方の事件の事をお前はどう見ているのだと聞いてみたら…。


 「この事件現場だとすると…あの手の路地は、基本的に年齢の低い、まあ、若い自分達くらいの人くらいしか知らないと思いますからね。

 多分自分より3つか4つ年が低い人か、それとも精神年齢の低い人の犯行でしょうね。

 ああ、コレはあくまで勘ですからね、あまり参考にしないでくださいね?」


 とアイツはホントに適当に言ったつもりなのだろう。


 だが実際言った年齢くらいの人物が自首して来たので、バカにする事が出来なかった。


 そして身体能力および戦闘能力は言うまでもない。

 まあこの事は学園内では私しか知らない秘密だろうから黙っておく事にした。


 「…でっ、ですけど、そんな事が実際に役立つとは…私は思えません。」

 「フッ、そうだな。」


 ユカリがアイツの正体を知ったらこの反応はどう変わるのだろう、そんな事も同時に考えてしまったのでつい苦笑しながら、部屋のドアを見つめながらため息をついた。


 アイツがいないのならこの場にいても仕方がないと思ったからだ。

 

 帰ろうとするとユカリがそんな事を言って来た。


 「じゃあ、それならお姉さま、私と町に出ませんか?」

 「いや無理に私の為に予定を空ける事をしなくていい。

 部屋で大人しくしておくさ。」


 そう断って、私は自分の部屋に戻ったのだが…。


 おもむろにテレビを付けて見ると、自分のいる学園が映ってて…。


 『今日、初めての休日はどのように使われると思いますか?』

 『あの噂の彼と一緒に費やされると考えられます。』

 …そんな生中継が行われていたので、窓を陰から覗いてみると寮をマスコミが取り囲んでいる。

 自分の部屋のドアの近くにも人の気配がしている。


 そのおかげで私の休日は、いつもの日常と変わりがない日となってしまった。

 だから夜までの間、自分の部屋でおとなしくしておく事にした。


 そしてその夜、私はこの学園の設備でもあるジムでいつものトレーニングをしていた。

 

 「ふっ!!」


 電気を付けず、私は一人、息を吐きながら脇を閉める事でマシンを動かし、身体に負荷を掛ける。


 この時間でのトレーニングは、私の日課だった。

 ちまたでは私がこんな事をする人間と思われてはいないようだが、自分がここまで有名になれたのもトレーニングのおかげだと思っている。


 だから何もなかった日でも欠かさず、こうやって内緒でトレーニングをするのが自然と日課になっていた。


 正直この時間が自分の時間になっている。

 だが、その時間も今日とても気になった事に費やされるハメになる。


 アイツの事だ。


 夕食の時間になってもアイツは帰って来なかった。

 連絡も前もってあったそうで、よくある事らしくイワトも含め周りは対して気にはしていない。


 だがアイツは『漆黒の魔道士』という怪人なのだ。


 そんなアイツが一日いなくなるという事、その事は私からしてみたらとても気になる事だ。


 「ふう…」


 当然そんな事を考えてのトレーニングは集中できるワケがなく、途中でトレーニングを打ち切り、スポーツドリンクに口に含むと汗の臭いがした。


 トレーニングウェアが汗だくだったのに気付いたので、先に女子更衣室の中にあるシャワールームで汗を洗い流す事にした。

 

 しばらくして、私は一糸も纏わぬ姿で軽く火照らせながらシャワールームを出た。


 女子更衣室とはいえ普通はタオルくらいは巻くものだが、この場にいるのは私一人なのでそんな事は気にしない。


 だが一応の警戒として更衣室の電気を消したまま、自分の衣服を入れているロッカーまで歩く。


 ガタッ


 下着を履きながら、そんな音が聞こえたのでそこを向くと…

 

 ゴトゴト…

 

 さらにそんな音が聞こえてくるので警戒しながら下着を着け終える。


 「あっ。」


 床下から『ヤツ』が出てきた。


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