表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/53

第五十三話

 「やはり、納得いかん。」


 空港のロビーにて、何度目になるのだろう、私は呟きをもらした。


 「それはワシのセリフじゃ、どうしてお主まで来たのじゃ?」


 「…どういう事だ?」


 「そういう意味じゃが?」


 さっきからこんな調子で、険悪なムードを漂わせている。


 やはりメイは、作為的に伝えていたようだ。


 ちなみに、その彼はどうしているかというと、向かいの席でレミオと話をしている。


 何を話していたのか、とても気になって聞き耳を立てようとするとその前にメイが口を開いた。


 「のう、一つ聞いていいか、どうして自身を敵と捉えたマフィアを敵に回してまで、あの魔道士はワシに協力したのかのう?」


 「ああ、その事か…。

 私も気になっていて、聞いたのだが…。

 お前のお爺さんが殺されてから、お前を連れ出すまで間、お前はヤツの手を握っていただろう?

 その時、お前の手がとても震えていたから…だそうだぞ。」


 「えらく簡単な理由じゃのう。」


 メイは笑いながら、そう答えるのは無理も無いだろう。


 だが、何となく理由はわかる。


 私はその人物を見つめながらこう言った。


 「それだけお前は、自分の身の危険を自覚していたのだろう。


 だからお前はヤツの手を離せなかった。


 これ以上の理由は無いと思うがな。」


 論理的ではないだろう。

 だがアイツは、そういう男だ。


 考えるだけでとてもほほえましいので、誤魔化すように咳き込んでいるとメイもあの男を見ているのに気付いた。

 すると、自分にだけ聞こえるようにこう呟いた。


 「ホント、あ奴には、いくら感謝しても足りないくらいじゃ。」


 「…ほう、何時から知っていた?」


 正直驚いていた。


 いくら彼女が勘が鋭いといっても、そこまで解るとは思わなかったからだ。


 「確かに最初は、どこぞの一般人が料理を作りに来たと思っておった。

 じゃがお主は、あまりにもあの男を信頼しておったのでな。

 それがとても気になってのう。

 じゃから、眼を覚えさせてもらったのじゃ。」


 「眼?」


 「いくら闇の仮面で顔を隠しておっても、ヤツの眼だけはモノを見る為に隠しておらんからな。

 眼ほど、顔の特徴を象徴するモノはないからのう。

 それで、次に会う時に確かめてみたのじゃ。

 こう…手を握ってのう。」


 「そうか、ヤツめ意外と無用心だな。」


 「まあ、懸念するでない。

 じゃがな…。」


 そう呟きを聞いた途端、私は思わず警戒してしまった。


 明らかに敵意だったからだ。


 「おかげでお主がやってしまった事を調べるに至ってのう。

 それを知った今のワシは、とてもお主が許せん…。」


 「…そうか。」


 これ以上、何も言い返せない私がここにいる。


 「だが、それでも…。」


 そしてまた、沈黙が続く中、私は口を開いた。

 これだけは、言っておかなければならないと思ったからだ。


 「私はヤツのそばにいてやろうと思う。

 それが今、私の出来る事だ。」


 「ヤツの正体がバレてもか?」


 「その時は、私の『過ち』を世間に公表するつもりだ。」


 正直、そんな事しか考え付かなかった。


 だから、はっきり言える。


 あの男の傍にいる事が、今、私の出来る事であると同時に償いだからだ。


 「険しいのう…。」


 メイもその事がどれくらい辛い事か理解できたのだろう。

 それだけ言って、何も言わなかった。


 途方も無い『償い』。


 「じゃったら、華中会のメイとしてお主に命令する。

 どんな事があってもヤツの傍を離れるでないぞ…。」


 当然、私はこう答える。


 「わかった。」



 「―そして、ワシがヤツと将来、結婚するから、お主はせいぜい黙ってみているがいい。」


 ……。


 「突然、お前は何を言っているのだ?」


 「どうやら、お主とあの男は、そういう仲でもないのじゃろう?

 お主は傍にいるだけなら、ワシが付き合って、ゆくゆく先は…と思ってのう?」


 「ふざけた事を、アイツは…。」


 「『世間の敵』じゃとしても、あれほどの男を逃すほどワシは迂闊ではないぞ?

 それに誓ったではないか、お主はヤツの傍にいる…それだけ、のう。」


 やはりマフィアというのだろうか、油断してはならなかった。


 「駄目だ。それは口上の契約だろう。

 それで頷くほど私も迂闊ではないぞ。」


 思わず声を荒げてしまいそうになったのを、余程メイにはそれが可笑しかったのか笑いながらこう言った。


 「やれやれ、ようやく、いつもの調子に戻ったのう。

 これで笑ってお別れできるというモノじゃ。」


 「ふん。」


 どうやら、メイに気を使わせてしまっていた事に気付いてしまう。


 「そんな顔をするでない。

 ワシとて、本国に戻って色々とやらぬ事があるからのう。

 この国を離れるのは、残念じゃが…。

 やはり、お爺様や兄たち、そして部下たちの骨を埋めるのは本国に限るじゃろう?

 それに残りの部下たちの再就職先も決めてやらねばならんし、やることがいっぱいじゃ。」


 「ああ、そうか、そうだったな。

 頑張ってな。」


 「そういうセリフは、あの男から聞きたかったのう。」


 …余計な一言だったが、あえて黙っておいた。


 何故なら目線の先の2人も、その話をしていたのだろう。

 心なしかしんみりしていたトコロに、コロウがやってきて、見ると3つほど缶コーヒーを持ってきて手渡していたのを見たからだ。


 そうだ。

 全てあの男のおかげなのだ。


 だから、この結末を迎える事が出来たと、私は思っている。


 『あの人の事を、そんなに悪く言わないでください。』


 かつて、彼を『敵』と捉えていた頃に聞いた台詞が脳裏に響いた。

 きっとあの時は、そういう意味だったのだろう。


 私はそんな言葉すらも拾ってやれず。

 彼を悪人に仕立て上げた。


 もう同じ轍は踏みたくない。


 「…これからだな。」


 「そうじゃ、全てはのう…。」


 そう言って、立ち上がり背伸びをした彼女も、この数日で成長をしたのだろう。


 明るく…。


 「じゃから、ワシが、またこの国に来るまで、お主、抜け掛けは許さんぞ。」


 メイの辞書には、哀愁はないのだろうか?


 だが、おそらくこれも、メイなりの気遣いなのだろう。

 だから、これもはっきり言った。


 「いいだろう。

 お前が戻ってきたら受けてたとう。」


 「メイ様、そろそろ…お前っ!?」


 「アシェン、そう身構えるな。

 私は見送りに来ただけだ。」


 「何を証拠にそんな事っ!?」


 ついメイと視線を合わせて、ため息をついていると、彼もこっちにやってきた。

 …お別れの時間が来たのだろう。


 「お主には、世話になったのう。」


 「いえ、私には料理しか能がない人間ですからね。

 礼ならレフィーユさんに言ってくださいよ。」


 この男はバレていないと思っているのだろう。

 とても謙虚で低姿勢だった。


 「そうでもないぞ、お主の料理がなければ、ワシ等の内臓事情が大変な事になっていからからのう。

 それにいつか言わなかったかのう、ワシは『兄やお爺様以外にしか言わない言葉』があると?」


 何の意味かわからなかった。

 だが、この男はそれで気付いたのだろう。


 少々、挙動不振になっていたが、冷静を装いながら頭をかいていると、メイが手を差し出してこう続けた。


 「それは『ありがとう』という言葉じゃ。

 そして、この握手は別れるための握手ではない。

 再会の握手じゃ。

 ワシとお前は『これから』なのじゃからな。」


 「そうですね。お互いに…。」 


 二人は強大な力の持ち主、片や世界唯一の力の持ち主として、お互い微笑みながら、硬く握手をした。


 …その時だった。


 「ふむ、レフィーユ。」


 こっちを見て、私を呼んだ途端、彼女の周囲に強風が吹き荒れた。


 みんなが驚きの声を上げながら身を屈めて、眼を瞑る。

 あの男ですら、そんな状況なのだろう。


 いや、アイツの周囲はもっと強いのか、眼を開ける事はゆるされていなかった。

 そんな中、私の周囲だけは、何故か風が吹き荒れていない。


 ―ただその理由はすぐわかった。


 メイは彼の顔を引き寄せて…。


 自身も顔を近づけて…。


 そのまま…。  


 

 「あの…、レフィーユさん、一体何が?」


 そして台風一過というのだろうか、メイが去った後には、『晴れ渡った』私がいた。


 彼には悪いがこういう時、何をされたのか言えないものだ。


 いやメイにしても、それを踏まえての行動と言ったトコロだろう。


 流石、元マフィアだ。


 口約束は、あてにならない。 


 何が『抜け駆けは許さない』だ。


 「何とか言ってくださいよ…。

 黙っていると貴女は、とても怖いんですよ?」


 失礼な事を言われた様な気がしたが、私はサングラスと帽子を取った。


 「そうだな。

 じゃあ、帰ろう。」


 彼は驚いたと同時に、周囲が私を発見した。


 そして一緒にくっついて帰る様を写真で取らせ、その写真がでかでかと載った新聞の第一面を切り抜いてメイの母国に送り届けてやった。


 ―また会おう。


 そう一文を添えて。





 「まったく、何を…。」


 ある人物が落胆に近い表情で、新聞を見ていると、作業着を着た人物がロビーにやってきてこう言った。


 「…様、ご用意が出来ましたので、ここにサインを…。」


 手短に礼を言って、自分の荷物を持ってこう言った。


 「待っててね。

 姉さん。」



 つづく…。


 どうも、高速左フックです。


 『あとがき』というワケで、『いいわけ』に近い反省会を始めたいと思います。


 まず、この作品には、内容以外でこんなコンセプトがありました。


 …2時間以内で読み終えるような作品を作る。


 え〜、終了した、現在の読了時間です。


 3.6時間。


 三時間半ですよ。


 予定オーバー極まりないですね。


 ま、まあ、いいワケさせてください。


 第九話まで、どんな話にしようか、まったく考えてませんでした。


 怪物出てきたけど…どうしよ?


 って感じで話が進んでいたのが現状でした。


 で、更に『キジュツ』です。


 この弟は最初では怪物になって、暴走して死亡する予定でしたが、このエピソードに至るまでに、こんな考えが浮かんで来ました。


 分からず屋の兄を説得出来る唯一の人間は、それを憎んでいた弟にしか出来ないのじゃないのかと…。


 おかげで10月に終了する予定が大幅に狂って、年末になってしまいました。


 もう、完全なる力不足ですな。


 『』使いすぎたなと思います。


 そして、予定日守らない…。


 ま、まあ、予定日の方はちょっと提案があるので、修正できるよう努力します。


 反省って、掘れば掘るほど出て来るね。


 凹み続けるのは身体に良くないので、じゃあ、次回に行きましょう。


 次回本編の方ですが、次回、レフィーユの妹が出てきます。


 それだけ言っておきます。


 …名前決まってません。

 …性格も決まってません。

 …話も決まってません。


 書いてて思ったんだけど、即興で書くからいけないんだよね。


 今度からは、決めて執筆しよう。


 新たな提案が出てきたトコロでね。


 反省会もここまでにしておきたいと思います。


 えっと、感想もお待ちしておりますが、指摘の方も遠慮なくしてください。

 真摯に受け止めて、読みやすく、わかりやすくしたいと出来る限り対応して行きます。


 返信が遅れて方々に迷惑をおかけしたと、いろいろと問題がありますが、これをあとがきの締めとさせていただきます。


 高速左フックでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ