第五十二話
「コレを見ろ。」
そう言って、自身が買ってきたのだろうか助手席から新聞紙を取り出して自分に手渡したので、歩きながら彼女の指摘したトコロを見た。
「ええと、レフィーユ・アルマフィのウェストサイズ、スタイル意地の秘訣は自身より小さいサイズの下着を履く事か?
その影響で自分のサイズより、小さいサイズの下着を買う女性続出…。
ああ、そういえばレフィーユさん、メイさんの下着を買うために買いに行きましたから…。」
「そこじゃあない、お前、普通は第一面から見ないか?」
「ああ、そうですけど…。
まあ、これも『普通』ですからね。」
第一面にはでかでかと書かれていた。
『華中会解散―』
さらに後半には、こう書かれていた。
『その元凶、漆黒の魔道士をどうして擁護するか、その意図は?』
その表現を正しく表現するように、レフィーユの小突いたテレビではコメンテーターが自分を悪者に捉えていた。
「まったく納得いかんな。
これでは、お前が悪者ではないか。」
「まあ、悪者でしょうね。
そしてあなたはこの事件を解決した正義の味方といったトコロでしょう。
…ところで思い出しましたけど、その功績を認められて。
警察から表彰式が開催されたと聞きましたけど、そろそろ始まる時間なのでは?」
「もう始まっている。」
「行かなくていいのですか?」
「何で最も働いたお前が表彰されず、私だけ表彰される授賞式ごときに、どうして私が出なければならんのだ?
それにだ…。」
そう言って、彼女が自分の顔をじっとしばらく見て腰まで視線を落とし、ミラーを弄り、その続きであろう、腰から下を見て『ふんっ』と鼻を鳴らした。
それ以上彼女は何も言わなかったが、目線の意味は何となくわかった。
あの一日は、とても激しい闘いだった。
そのせいでレフィーユの頭には包帯が一巻き。
腕の辺りをみるとちらりと、また包帯。
おそらく腹部に至っても、サラシのように包帯が巻かれているのだろう。
そして、ここにいる自分に至っては…。
「華中会幹部、私に至ってもこの通りだというのに、お前だけ無傷というのはどういう事だ?」
「睨みつけるように、そんな事を言わないでくださいよ。
それにさっきから、気になったのですがね。
その車、どうしたんです?」
「私の自家用車だ。
授賞式を抜けた代わりに、実家に戻って取りに来たのさ。」
「なるほど、学生身分でコンポーチボォですか?」
「心配するな。
この車も自分がキャッシュで買ったし、免許くらい持っている。
まだ実家には同じのが二台あるからな…なんだ、その目は?
同じ物を三つ買うという文化は、この国の文化だろう?」
「『普段用』『保存用』『布教用』と言いたいのですか?」
つまりこの女、まとめて『現金』で『コンポォチブォ』を『三台』買って、その一台を持ってきたのだ。
まったく、金持ちってヤツは…。
「まあ、治安維持活動のために皆が使っていいように一台くらい持ってきたのさ。
それで、お前は珍しく外出とは、どこに行くんだ?」
「珍しく外出って、レフィーユさん、今日がどんな日か知っているでしょう?」
「それを知らんから、お前に聞いているのだろう?」
「あれ、連絡つかなかったのですかね…。」
「一体、何の話だ。おっ、おいっ。」
ローギアで前進する車に『ひらり』と飛び乗り助手席に座って、シートベルトを付けながらこう言った。
「それじゃあ、行きましょうか。」
「そう言われて、私が行くと思うか?」
「どうせ付いて来るつもりだったのでしょう?」
「それはそうだが…逆に珍しすぎて怖いな。
こうなると何があるか、言ってほしいモノだ。」
そう言って、警戒するワリには、前に買ってあげた帽子とサングラスを掛けていた。
それを見てとりあえずポチポチと行き先を入力をしていると、彼女はこう呟いた。
「空港?」