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第五話

 疲れた身体を癒すために風呂に入る。


 「…これを考えたヤツは絶対にスゴイ奴だと思うのですよ」


誰も男の裸なんて見たくないだろうが、身体を拭きそんな鼻歌を考えながらパンツを履いてドアを開ける。


 「上機嫌だな、いい湯だったのか?」


 「はい、おかげで疲れが取れましたよ。


 レフィーユさん」


 「私はもう入ったから気にしないでくれ。


 ああ、そうそうテレビつけていいか?」


 「いいですよ、はい、リモコンです…う、ん?」


 「どうした?」


 「さわやかに『どうした』じゃないでしょう。


 『どうして』いるんですか?」


 「私も今日お前の部屋に行くつもりはなかったのだが、何故かマスターキーを寮長である先生からもらってな。


 それでカギを使って、まあ…なあ?」


 「『なあ』じゃないですよ。


 言い訳にすらなってないじゃないですか、いい加減しつこいのですが、どこまで付きまとうつもりです?」


 「私としては、ただ『漆黒の魔道士』が、どんな部屋で生活をしているのか気になっただけさ」


 それで風呂上りを直撃するのだから、『気にするな』と言われても当然無理な話だった。


 そして彼女はそんな自分の気持ちも知ってか知らずか、その態度は自分の部屋にいるような態度でテレビのチャンネルを変えだしたので聞いてみた。


 「で、どうでしたか?」


 「まるで私がもう捜索をすませたような言い方だな?」


 「貴女の性格上、じっとしているのは無理でしょう?」


 この皮肉にレフィーユはくいっと首を横に背けるので。


 「どうやらホント、勝手に私の部屋を家宅捜索していたようですね?」


 「わ、私だって初めて男の部屋に入るのだぞ。


 捜索ぐらいしても良いだろう?」


 「顔を赤くして恥ずかしそうに言ってますけど、捜索自体、失礼なんですよ、レフィーユさん?」


 一応失礼の無いように、寝巻き代わりのジャージをもといた洗面室で着替えて不機嫌極まりなく言う。


 「別に何の変わったトコロなんて無かったでしょう?」


 「確実にカギを掛ける辺り、身の回りに正体を臭わせるモノのない、慎重さはあったが?」


 「…わかったら、自分の部屋に戻ってくださいよ」


 「それは今は出来ない」


 「どうしてですか?」


 「あのユカリという女子がしつこくてな。


 慕ってくれる事はうれしいのだが…。」


 「ああ…」


 何となく感づいた感じはしたが、聞く所によると『フロに一緒に入ろう』や『紅茶入れました』など、様々な理由を付けては彼女の部屋に入り込もうとするので、逃げてきたらしい。


 現に『お姉さま、何処ですの~』と甘ったるい猫撫で声がドア越しに聞こえて来た。


 「そういう事なら仕方ありません…」


 思わず、肩を竦めて


 「って、匿うと思ったら大間違いですよ?」


 だがレフィーユは、動じる事はなく。


 「フッ、思ってるさ」


 「噂通りの、自信家ですね。


 根拠は?」


 そう聞くと、しばらくレフィーユは静かになっていたが、『ぼつり』と…


 「今、お前の部屋には私がいる。


 そして部屋の外には、ユカリがうろついているだろう?


 もし、ここでお前が追い出そうとするなら私が抵抗のついでに…。」


 「『ついでに』何ですか?」


 逃げられない方程式が徐々に出来上がって行く…


 「騒ぐ」


 「お姉さま〜、どこですの〜?」


 「……」


 そんな声が自分の部屋のドアの近くを通り過ぎた。


 「…レフィーユさん、食べます?」


 「おっ、すまないな。


 コレお前が作ったのか?」


 「そうですけど、ただ生卵の処理目的のゆで卵ですよ?」


 茹でた卵を水で冷やし、皿を取り出して差し出した。


 「いただこう」


 水を忘れたのでコップ二つに水を入れて戻っているとレフィーユは普通に食べていた。


 「お前は他にも料理は出来るのか?」


 「まあ一応、一通り出来ますよ。


 レフィーユさん、料理はしないんですか?」


 「レトルトしかやった事がなくてな、なんだ、料理が出来ないことがそんなに悪いのか?」


 「悪くないですよ。なんで睨むんですか?


 だったら出来る料理からバリエーション増やせば良いじゃないですか?」


 「レトルトしか出来ない私にどんなバリエーションがあるんだ?


 しかも最近になって作れるようになったんだがな。」

 

 「レトルトでも作り方が存在するから、それも料理だと思いますよ。」


 「そんなモノか?」


 「そこから工夫していけばいいんですよ。


 今度食べさせてくださいよ」


 「いつになるか分からないが分かったと言っておくさ」


 『ご馳走様』と手を合わせたので、今日はお開きにするらしい。


 「じゃあ私は帰るから、それじゃ明日は遅れるなよ?」


 そう言って立ち上がり、背伸びをしながら出て行った。


 バタリとドアが閉まったのを見送り時計を見ると深夜1時を回っていた。


 自分は全然ゆで卵を食べて無い事に気が付いたので、テーブルに座って殻を剥くと思うことがあった。


 「もしかして、こんな生活が続くのですか?」


 うんざりしながら食べる物はマヨネーズが効いていた。


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