第四十六話
そろそろ大修正する時期かな?
しばらくして何かにざわめき出したので、そっちの方を見るとレフィーユが女性を肩に担ぎながら入ってきた。
「おやレフィーユさん、相変わらず早い到着ですね。
その人は確か、コロウさんの秘書でしたか?」
「ああ、アシェンと言うんだ。」
「いつの間にそんなに仲がよくなっていたんですか?」
「ホコリを軽く被っていて、頬から血が流れてて、わき腹を斬られている女を見て。
もし本当にそう見えるのなら、お前の目は相当な節穴だな。
さっき絡まれていただけだ。
お前の方は仲の良さそうに見えんぞ?」
「まあ、こっちも絡まれていましたからね。
少し腹が立ったので、手荒く扱っただけですよ。」
「フッ、『腹が立った』か、珍しい事もあるものだな。」
レフィーユは倒れたままのコロウを一瞥して、気絶していたのが解ったのだろうか微笑みながらこっちを聞いていた。
「珍しいものですかね。私だって怒る時だってあるんですよ。
それで、怪我の方は大丈夫なんですか?」
おそらくわき腹のダメージが最も大きいだろうというのが見て取れたので聞かずにいられなかった。
「かすり傷だ。心配するな。」
「心配させてくださいよ。
…後で、病院行ってくださいね。」
「フッ、考えておく。」
『病院行ってくれ』と言うが、当然現場を離れないだろうというのも、このレフィーユという性格だろう。
そんな事を考えているとアシェンが気が付いた様だった。
「き、貴様は!!」
『どうも』と軽く下げるとアシェンは明らかな敵意を向けて何かを言おうとしたのだろう。
だが、そのまま蹲った。
「あまり無理をするな。
お前は胸の骨を斬られた様に折られたのだからな。」
「誰のせいだ!?」
『離せ』と足掻くがよほど激痛なのだろう。
顔が真っ青になっていた。
「まあ、私のせいだ。
だがな、お前は不意打ちをして私を肉を斬るに至った。
だが、そんな私が不意を突いてお前の骨を断つに至った。
そんなお前があの男にかなうとは私は到底思えないな。」
「ちっ!!」
彼女にとってそれが最もな意見だったのだろう。
そのまま黙って、ある方をみた。
そこでは未だにメイとキジュツの戦っていた。
「…メイ様。
何という事だ。お前の言うとおりだったとは…。」
驚愕しているのか、怪我をしているのだろうか、アシェンが目にしているのは、今まで見たことのない光景がそこに広がっていた…。
メイは竜巻を利用して、なぎ払う様に相手に向ける。
あまりにも大きすぎる魔力量と、経験不足が災いしたノーコンっぷり。
華中会の部下連中も『伏せろっ!!』と叫びとともに懸命に避けていた。
対するキジュツはノーコンゆえ、相手は余裕を持って避け、メイを上回るスピードで接近して…。
「ひゃ、はあっ!!」
狂った様な声を上げながら、攻撃するが相手も戦闘というのがよほど苦手なのだろう。
あまりにも大振りすぎる大振りと経験不足が、辛うじてメイの回避を完成させる。
戦闘というより、まるで遊戯のように見える。
だが、華中会の部下たちは、その場を離れず、笑おうとするモノなど誰一人いない。
「捕まえたよ。メイ!!」
そして、とうとうメイがキジュツに捕まり、武器を手放し、まるでホントの兄妹ケンカのように往復ビンタをする。
『あはははっ』と笑い声と、叩かれた事による、乾いた音が、この部屋を満たす。
そして、この状況に耐えられなかった部下の一人が声を上げた。