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第四十四話

四十三話部分を、修正してます。


出来れば、そっちを見てからごらんになってください。


ご迷惑おかけします。


 コロウは槍を素早く構えて飛び込み。鋭い突きを見舞う。


 『ふん、何を突然言うと思えば…。一体何を考えているのだ!?』


 そう短く気合を入れて、放つ突きは円から点。


 その『点』より発せられた空気の歪みで円錐を描けるのではなかろうかと思わせてしまえるくらいの突きを放つ。


 だが、彼の顔には余裕がない。


 普段は遠距離支援が基本の西方術者が近距離戦闘を行なっている。


 その事を踏まえれば、東方術者であるコロウの方が有利なのだが、その相手は『漆黒の魔道士』。


 西方術者でも、東方術者と互角に渡り合える戦闘能力、その異名に違わぬ実力を持っていた。


 何度目かになるのだろうか、おそらく自分の最も最速の攻撃も避けられた。

 そのせいで、一瞬驚き、反射的に攻撃をしようとするが…。


 『昔、私が感じた事だ。

 まあ、お前たち、マフィアにはわからないかもしれないが、

 東方術者というのは戦闘訓練を受ける事はあるだろう。

 それに対し、西方術者はそれを行なう機会がない。

 だが、今までどこで訓練していたのだろうな。

 それを踏まえた上でヤツは戦っている。』


 コロウの今までの経験上、相手の距離、スピードでは自分の攻撃の方が早いと出来るモノと思っていた。

 だが何故か槍が何かが張り付いたかのように鈍く動き、攻撃が出来なかった。


 『突然、何を!?』


 そして、コロウのセリフに口を挟むような一撃、そのとても鈍い衝撃はコロウの身体中を駆け巡り、床に崩れた。


 『私とて、素手で武器を持った相手にする事など考えた事がなくてな。

 アイツはどれくらいの恐怖と立ち向かっているのだろうな…。』


 腹を思いっきり殴られたらしく、床にうずくまっているとコロウはそんな事を口にした。


 どこにでもある、今まで味わった事のある罵倒。


 だが、こんな状況で言うセリフというのは明らかに強がりだった。


 そしてこの後に及んで、まだそんな事をいっているコロウに呆れていると、その態度がよほど気に喰わなかったのだろう。


 飛び込んでから突くと見せかけて、身体を捻り、狙い払うは彼の左足。


 ―完璧なフェイント。


 コロウは笑みを浮かべながら前を向くと、飛んできた魔道士の飛び膝がコロウの顔面に直撃する。


 『そんなのあいつの闇で刃物を形成するから、意味はない事だろう。

 お前の勝手な妄想じゃないか、こんな時に何を言っているのだ!?』


 吹っ飛ぶのを何とか堪えて構えなおすと追撃とばかりに、数発の黒い刃がコロウに被弾した。

 

 『アイツに殺傷能力などない。刃物を形成する事もあるだろう。

 だがな、泥で人が斬れる事がないように、あいつの闇で人が斬られる事はないのさ。』


 息を切らせながら、コロウはこの技に殺傷能力がない事に気付いたのだろう。


 弾幕をかいくぐり、振りかぶった槍がしなると同時に『伸びた』。


 これがコロウの東方術の付加効果なのだろう。


 漆黒の魔道士の胸を横に切り裂かれ、その場に倒れる。


 それを見たコロウは最初は勝利を確信しただろう。


 だが…。


 『アイツはな。

 防衛本能を発動させなくても、その闇を凝縮してしまえば、痛みすらも軽減させる鎧になる。

 まあ、唯一アイツが誇れるのは…。』


 まるで、転んだ事に痛みがあるのかのように首を回して…。


 『防御力ぐらいなものだ。

 不意打ちではない限り、痛みすらも…。』


 立ち上がった。


 『…無意味だ。』


 コロウにとっては、強がりに見えたのだろう。

 自分の方がダメージがあるというのに、そんな事を聞いていた。


 『それで、先代様を殺害したのはアイツでは無いと言うのか!?

 アイツはただ自分の力を自慢したいだけだっ!!』


 そう聞いてきたので、ただ『事実』を言い返した途端、コロウは拳を振るわせるが、すぐに冷静になり、鼻で笑いこう言う。


 『さっきから、どうしたと言うのだっ!!

 あの狂人はお前の敵なのだろう。お前の言い方は、まるで…。』


 『そうだな。

 どう思っても構わないが…私は、守ってやらねばならないモノと思っている。』


 まるで今度こそ勝利を確信した雰囲気で言うので、取り付けられていた窓の方を見ると、数名に及ぶ人影が写っていた。


 『可笑しい事か?』


 『笑わずにいられるか、自分の勢力、権力を増大させたい為に、あの狂人を引き入れる。

 結局、コロウ様と考えが同じではないか?

 いや、お前の場合は、官僚どもに気に入られたいゴマすりだな。』


 コロウはそう言うとゾロゾロという文字通りの音を立てながら入ってきた。


 そして、勝利を確信しながらまた言う。


 『そうだな、さぞ、お前の意見は正しく見えるだろう…な。』


 『いまさら立ち上がっても、その傷では思うように動けないだろう。』


 即答するとコロウにとっては、よほど愚かに見えたのだろう。

 右手をあげ、合図をする。


 『昔の事を話していると、私は、これ以上のダメージを負った事がある事を思い出したのでな。』


 しかし、部下たちは誰一人として動かなかった。


 ただ穴の空いた、天井を見上げていた。


 『私はこれしきのダメージで倒れるワケにはいかんのさ。

 お前にとっては良いハンデだろう。』


 コロウは部下の一人の肩を掴んで、命令するが一向に動こうともしなかった。

 見ると、キジュツに首を掴まれ宙吊りになったメイを振りかぶって落とす。


 まさに、その瞬間だった。


 『ふん、立ち上がるがやっとじゃないか、何が『良いハンデ』だ。』


 ざわめきメイを心配する部下たち、まるで自分の見る物は終わったのだろうと駄々をこねる子供の様に自分を倒せというコロウに解らせるためにこう言う。


 『やはりあの男を、引き入れるのは危険のようだな。』


 コロウは目を血走らせながら、ようやく立ち上がったメイを見ると、どこからか歓声が沸きあがる。


 『バスを突き落そうとするような男などっ!!』


 上の階で大きな音を立てて戦う者たちと、この階で小さな音をたてながら戦う者たちをみて、周囲はもう理解しているのだろう。


 誰が一番強いのか…。


 そんな環境で、ただもがく様に怒り、槍を振るう、この男は何を見ていたのだろう。

  

 『ビルの丸々、一階を破壊するような怪人などっ!!』


 『組織の為』、そう言い続けているが…。


 『子供を10数名、殺害した狂人など…。』


 結局、この男は自分の事しか考えていなかった。


 『生きていて良い道理など…なっ!!』


 あまりの怒りに武器の扱い方も忘れたのだろう。

 大振りになった突きは以前の鋭さはなかった。


 『一つだけ事実を言ってやる。』


 組み付いてもう一度、解らせるために周囲をみせた。


 もう多くの華中会の人たちはコロウを見ていなかった。


 肘を自分の腹に当てられ開放できたコロウは、自分を倒す事でその注目を取り戻すと言い槍を構えを低くするが…そこまでだった。


 自分の影がまとわり付いて、コロウの身体を締め付けて膝を落とした。


 みるとそれは漆黒の魔道士の特性である『闇』。

 

 『子供を十数名、殺害したのは…。』 


 『はっ』として、コロウは前を見ると漆黒の魔道士が立って、殴りかからんと振りかぶっていた。


 そして…。


 『…私だ。』


 コロウの顔を『一閃』して吹き飛ばす。


 そして、対戦相手は、もともとこの男に興味はなく、ホントに大事な戦いに目を向けていた。


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