第四十三話
突然ですが、書き直しました。
ご迷惑をおかけします…。
「形勢逆転…だな?」
アシェンは、おそらく数秒前にレフィーユが口にするであろう言葉を口にした。
「くっ…!!」
悔しいのか、痛みなのかわからない表情で、レフィーユはわき腹からの出血で服が滲むのを感じ取りながら、アシェンを見ると、へし折ったはずの青龍刀が光り輝いて復元していた。
「『復元』か、それがお前の東方術の付加能力か…。」
「ふん、さすがにするどい。
東方術で作られた武器が壊れると、再度時間をかけて構築し直さないとならないが、私は『復元』する事によって、作りなおす事が出来る。
それこそ、瞬時にな。
私の武器を折ったお前は、半ば勝利を確信して飛び込んだまでは良かった…。」
「折れた破片が『瞬時』に戻ってきて、わき腹に当たったという事か…。」
「それでも防御本能が働いて、致命的なダメージを避けたようだが、もう少し相手の事を調べておくのだったな?」
『生憎だが、私はそんな事を調べる暇がなかったのでな。』と青龍刀を構えた秘書に言い返したかったが、わき腹の痛みがそれを中断させる。
―油断が出来なくなったからだ。
いくら相手に対し優位に事を進めていても、自身のテンションが下がってしまい、逆転と言うのは良くある話だろう。
そして、ここにはそれを裏づけるように立っている者と膝を付いている者がいる。
「辛うじて防御本能が働いて、致命傷ではないのはさすが…といっておこう。
だがっ!!」
アシェンは飛び込んで斬りつけてくる。
一撃…。
受け流す事が出来ず、受け止めてしまう。
二撃…。
完全ではなく、かろうじて受けて傷口が開いた。
三撃…。
「くあっ!!」
まともに受けて、まるで特撮ヒーロー番組の様に火花が散った。
幸い攻撃を目で追う事で、防御本能を働かせて致命傷を避ける。
だが、それも万能ではない。
『斬られた』
その激痛がレフィーユの身体を蝕み集中力が下がる。
「はあっ!!」
なおも続く彼女の猛攻、そして、普段なら避ける事が出来るだろうアシェンの放つ蹴りが、まともに腹に命中して後ろに転がるように吹っ飛び壁に激突してしまい。
魔力の続く限り、目で追う事で『一箇所』の痛みに対して守りを完成させる防御本能を意味のないモノにする。
『全身への衝撃』
それが彼女を襲い、ようやく身体を起こすとアシェンが口を開いた。
「確かにお前は、噂に違わぬ強さを誇っている。
それはお前が本気で戦った時、私が素直に感じた感想だ。
だが、どうしてお前がこれほどの不覚をとったかわかるか?
お前と私では、意思の強さが違うからだ!!」
「…意思の強さ?」
軽く呻きながら頬から血が一滴、滴るのを感じていると、アシェンが勝ち誇る様に言う。
「私には『コロウ様を守る』という任務を自分の意思でやろうとしているのに対して、お前はどうだ。
男にうつつを抜かして、メイ様がその男を傷つけられたからと言って、という今までのお前なら考えも付かない軽率な意思で『華中会に立ち向かう』。
コレがお前と私の勝敗の分かれ目だ!!」
返事もなく、ただ俯いたままのレフィーユを見てなおもアシェンは続けた。
「一体、お前はどうしたというのだ。
今回の事でも、そうだ。
お前は漆黒の魔道士を追うのが普通ではないのか?」
レフィーユにとって油断したまでは、ありえる光景かもしれない。
だが派手に転んで、埃まみれに血を滴らせた。この女のどこに『この人物が関わると事件が、必ず解決する』という『有名人』の肩書きがあるのだろうかアシェンは疑問で仕方が無かったのだろう。
「くくっ…。」
しばらくして、笑みがこぼれたのはレフィーユの方だった。
「いや、すまない。
さぞ、滑稽に見えるのだろうなと思ってな。」
しかし、堪え切れなかったのかまた『くくく…』と笑いを堪えていると、わき腹に傷口があったのを忘れていたのか、そこを手で押さえながら笑っているレフィーユは、明らかに勝者に見えないのだろう。
アシェンはいらだってこう言い放つ。
「当然だっ!!
漆黒の魔道士が先代様を殺害して、お前がやってきたと思い、協力を要請すれば断った。
あの時は最初はマフィア相手に、警戒をしているのかと思った。
だが、メイ様が帰ってきて、漆黒の魔道士も侵入してあたふたとしている時に、お前は護衛も付けず、窓から潜入してきて。
今度こそ協力を得られると思えば、『メイに会わせろ』だ。
理由を聞けば『男が世話になった』だと?
これの何処が滑稽じゃないというのだっ!?」
なおも止まらない笑い声が、ようやく収まってきたのかレフィーユは聞いてきた。
「じゃあ、聞くが、お前は『アイツ』が、お前たちの先代のボスを殺したと思っているのか?」
「何をわかりきった事を、今度はあろう事かコロウ様まで手に掛けようとしているではないか、今までの事は目を瞑っておいてやる。だから…。」
よほど確信があるのだろう。
強い意志を持ってレフィーユを見つめ、今度こそ協力を得ようと見つめた。
だが…。
「お前は、あくまであの男を敵と見るのだな…。」
返答の代わりに、レフィーユはサーベルを作り直して、まだ戦う気だった。
アシェンは構える。
だが、レフィーユは一向に立ち上がる気配もなく呆れるようにこういった。
「まったく、報われない男だ…。」
ただ『ボツリ』と…。
あまりにも『ボツリ』と言ったので、それは普段のレフィーユからは考えの付かないくらい小さな声だった。
「それは、お前の事だろう。
滑稽な意思しか持てないお前に私に勝つ事など出来ないというのが、まだ解らないのか?」
青龍刀を構えなおし、アシェンは構える。
「そうだな…。」
だが彼女はサーベルを手にしたまま、壁にもたれかかった彼女は自分の命が狙われているというのに、ため息をついていた。