第四話
普通に間違えてもう一つの小説の方に貼り付けてしまいました。
こんな自分を笑ってやってください。
ただいま、工事中です。
「あっ、通気孔、外したままでしたね」
そんなどうでもいい事を思い出す中。
「…日が暮れている」
『騒がしい』授業内容を終えた自分が学園寮がある道を通る頃には、そんな時間になっていた。
だがようやく彼女に対する質問攻めから開放されると思うと、自然と足取りも軽くなる。
そして、ようやく寮が見えてきた頃、
「何事?」
今度はマスコミがその寮を囲んでいた。
『いままで自身でアパートを借りて通学していたのに、どうして…』
『今日から、この学園寮に入寮という事ですが、何か感想は?』
この時の自分は、もう誰がインタビューされているかを知らせていた。
迂回したのは、窓から入ろうとしたからである。
この場合、先生に見つかっても事情を話せば理解してもらえるだろう。
「こんなトコロで、お前は何をやっとるんだ?」
そう思って食堂辺りの窓のカギの開いていたのを覗き込んでいると、クラスメイトであるイワトが『ガハハ』と豪快に笑い鼻を穿りながら自分を発見した。
「これはイワトさん、正面玄関にマスコミが多くて入れなくてない状態なんですよ。
ですので窓から入ろうと思ったのですよ」
「ほうか、じゃあ先生に見つかる前に中に入れや」
ぶっきらぼうにそう言って、この食堂にあるテレビの方にイワトが向き直ったので、ガチャガチャとよじ登った。
「ああ、あなたっ、どうしてこんなトコロに!?」
その声はレフィーユFCの会員2ケタ台の女 ユカリだった。
「私はここの寮に住まわせてもらってますからね。
私の方が、何で貴女がここにいるのかと思いますよ?」
「それは、お姉さまと一緒に寝泊りしたいからですわ」
ファンもここまでくれば病気だなと思いながら、ユカリを見送ると、空腹を感じていた。
「ところで、そろそろ夕食の時間でしたね?」
「おお、外が騒がしいから時間を忘れてとったが、そろそろじゃのう。
今日は人数が増えたから作る量も増やさないといけないから、食堂のばあさん大丈夫か?」
イワトはゴツイ身体に似合わず、昔からおばあちゃんっ子という事もあったので、そんな心配していた。
「カレーだから大丈夫だと思いますよ。量を作るだけですし。
じゃあ、部屋に戻って着替えますね」
それには少し笑いながら、自分の部屋に戻る為、正面玄関を横切ると、相変わらずレフィーユがインタビューされていた。
そんな光景を目にしていると振り返ったレフィーユと目が合う。
何か言おうとしていたのを見て。
そのまま一緒にインタビューを受ける雰囲気になりそうだったので逃げるように、二階に上がって自分の部屋に向かう。
すると電気を付けると明らかに窓に映った木が人影で変形していたのでカーテンを開けてみた。
『レフィーユさんの良いご学友と聞きました。
一言いいですか?』
『あなたはレフィーユさんに、名前を聞かれた事に関して何かご感想を…』
「…あの女、何を吹き込んだ?」
ふと、キャラクターが変わってしまうくらいに不機嫌になってしまうので、答える代わりにカーテンを閉めた。
当然『すいませーん、なにか一言』的な追撃もあったのだが無視を決め込んでいたのだが。
「わー」
「ばか、バランス崩すな、おわっ」
あまりにもしつこいので、目に力を入れて闇を使い、器用に木に登っていた数人のマスコミを引っ張って落とした。
「おう、アラバ、向かいの席を取っておいたぞ」
そして着替えを終えて食堂に戻ると、もう準備が始まっており、イワトが手を振ってこちらに招いていた。
「いつもすいませんね」
「気にすんな、良いって事よ。
それより、このカレー旨いぞ、早く食え」
言い終わる前に豪快にカレーを口にするイワトを見て、自分もお腹がすいていた事に拍車が掛かる。
カレーを口にしようとすると…
「なあ、お前、レフィ…」
「知りません」
即答で答えてみた。
「即答か?」
「今日、何回このパターンがあったと思ったんですか?」
うんざりしていると、何やら後ろの方が騒がしくなった。
イワトもその人物に釘付けになるので、嫌な予感しかしない 。
「ふっ、それはとても興味深いな」
「……」
「お前と私の仲なのだから、別に黙る必要はないと思うが?」
カレーの乗ったトレイを片手に向こうからやってきた、今日一日の厄災の権化。
「レフィーユさん、その発言も問題あるのにも、気付いてます?
おかげで、さらに周りが騒がしくなりましたよ」
だが彼女は周囲など、気にしない様子で、
「さっきから座る席を探しているのだが、座れるトコロを探していてな」
そう言って彼女は、イワトを一瞥する。
色気と鋭さを兼ね備えた彼女の視線が突き刺したのか、イワトは思わず席を譲ろうと立ち上がってしまいそうになったので、防ぐ手段を講じる。
「レフィーユさんは『そこを譲ってくれ』なんて『一言』も言ってないのでしょう?
ですからイワトさんが、席を譲る必要なんて無いですよ」
そんな事を言うと、さすがにイワトは『すんません』と恐縮して自分の向かいに座り直した。
狙って空気を悪くさせたので普通なら、これで人は諦めを見せるモノだが、
「...そうか、なら、仕方がない。
他に『空いているトコロ』に座る事にしよう」
レフィーユが妙に笑み浮かべて言うので、自分が彼女の『策』に嵌った事に気付いた。
…確かに自分の『向かい』席は、イワトが座ってる。
だがテーブルの位置は隅であり、『隣』は空いている事はない…。
そう『片方』は…
「ここは『空いている』のだろう。
まさか、ここも駄目という事はないだろう?」
空気を悪くさせたのが、裏目に出た。
今の状況でさえ、十二分に注目を集めているので、これで断ると、明日は学校を『風邪』で休む事になってしまうのが解ったので。
これは、観念である。
「断れませんか?」
「そんな事を本人の前で聞くな」
そして、そうは言うが彼女は笑顔を浮かべたのだか、
「おねーさまぁー!!
そんな男と、食事なんかしないでコッチで一緒に食べましょう。」
すると奇声と共にやって来たのは救世主、その名はユカリ。
問答無用で、レフィーユの腕を引っ張り、こちらを殺気混じりに睨みつけ自分の席に連行していった。
「助かったのが、見てとれたわ」
「普段、レフィーユさんの事になりますと、とてもウザいですが、物凄く助かりました。
…普段はとてもウザいですが」
「繰り返し言うなや。
じゃが、今日は、何も話し掛けん方がええか?」
よほど自分の態度が不機嫌だったのだろうか、イワトが遠慮がちに言ってきた。
「さっきのでな、今日一日のお前の苦労が少しでも分かったような気がしてならんから、今日は、黙っておく事にしとくわ」
どうもイワトに気を使わせてしまったので、反省も兼ねてさっさとカレーを食べて、自分の部屋に戻る事にした。