第三十八話
え〜、ただいま、とても忙しいので更新日守られていません。
ご迷惑おかけしますw
「『キジュツが先代を殺した』だと、何を根拠にそんな事を言っているのだ?」
そう来るのは予想できた。
今回に関しては言ってみれば状況証拠だけ…。
根拠だけじゃない、証拠もないのだ。
「お前はあの男に騙されているのだ。」
そして忘れてはならない事、それはコロウが自分を最も疑っている事だ…。
「兄様、根拠はありません。
じゃが、あの者が私を匿ってくれたおかげで、重要な証人が連れて来ることが出来ました。」
そう言って指を指した部屋の片隅には、何かうごめくモノがあった。
「…何ですか、あれ?」
見ると寝袋くらいの大きさの袋が、何かが入っているように丸みを帯びていて、しかももぞもぞと動いていたので、ついコロウに聞いてしまったが知るわけないだろう。
「私に聞くな。」
自分に警戒しながら当然の返答が返ってきた。だが、それくらい妖しさが満載していた。
それを見たメイが説明を始めた。
「ああ、やはり自分の証言だけでは、兄様を黙らせる自信がなくてのう。
少し手荒じゃったが、これは有力な証拠じゃ。このモノが全部話したぞ?」
袋を結んであった紐を解くと、そこには口にガムテープを貼られた女性がいた。
見るとキジュツの秘書だったが、何故かボロボロだったのでメイが文字通り『手荒に連れてきた』のだろう。左腕が明らかに折れていた。
「この女は犯行を認めたのじゃが、兄上、コレをどう説明するのですか?」
「…っ!!」
『キジュツ』と叫んだのだろうが、しかしメイはそれを無視して背後から蹴飛ばすとコロウの前に転がった。
しかし一番驚いたのはコロウだと思った。
メイがこの様な手荒な手段をとるとは思っても見なかったのだから。
それを裏付けるように、事態を飲み込めていない表情をしたまま、抱きかかえてガムテープを剥すが、これ以上、彼女から証言を聞くことが…無理だった。
彼女の少し大きめな胸からゆっくりと刃物が出てきたからだ。
彼女の防衛本能は働いていたのだろう、あまりにもゆっくりなスピードで胸の心臓ある部分からキジュツが一突きにしたのだとわかった。
「兄さん、こんなヤツの言う事なんて聞く必要なんてあるのですか、きっと『漆黒の魔道士』が何かしたに違いありませんよ。その証拠に手を繋いでいるじゃないですか。」
『ヒャ、ヒャ』と今までと違うキミの悪い笑い声を上げながら、軽い態度でそんな事を言っていたが、明らかな『口封じ』だったのでコロウは戸惑った。
「それは、そうだが…。
だが、この女はお前の秘書…なのだろう?」
この兄からしてみれば、この弟は自分より下と明らかに格付けて、性格は奥手な人間だと決め付けていた。
この弟に対しても妹と同じ目で見ていたのだろう。
その二つの予測が大きく外れたせいでコロウは明らかに戸惑いを隠せないでいると、その秘書は呻いた。
「うう…」
「まだ、生きていたのか…。」
そう呟きキジュツが止めを刺そうと彼女の血が付いた鎌を握って彼女にゆっくり歩み寄るが、闇を放流してキジュツを壁に貼り付ける。
「うぉ、何ぃ…!?」
今のキジュツには時間稼ぎにもならないだろう。
だが足掻いている間、彼女が何を言おうとするには十分な時間を稼いだ。
「キ、キジュツ、わ、私、何も言っていないんだ…よ…?」
そのまま息絶えてしまったが、この一言がすべてを物語っていた。
「キジュツ、これはどういうつもりだ?」
―メイはただ痛め付けただけ、何も聞いていないのだ。
コロウもそれがどういう意味か解らないほど軽率ではない。闇を切り裂いて脱出したキジュツに憤慨を込めて聞いていた。