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第二十八話

 「すいませんね。」

 「いや構わんさ。私もおかしさを感じていたからな。」

 「いーえ、レフィーユさん。

 こんな奴を甘やかしてはいけません。もっと厳しくいってやってください。」


 帰りの夜道、さっきから治安部の男がこんな調子で口うるさい。


 結局、華中会の共同するという提案は白紙となった。


 原因は…まあ、自分が要因の一つであるという事は間違いないだろう。

 だが自分にとって、あと一つの要因はとても気味悪さあったのを覚えていた。


 何故なら『盗聴器でも仕掛けているのか?』という問いに、あまりにも平然としてコロウは『そうだ。』と答えたのだ。


 『組織の中で出世するには、盗聴くらい普通だろう?』


 そして、これがコロウ言い分だ。


 だが、逆を言えば自分達が現場に入ったのを見計らって、コロウ達が入り、『お前が犯人だ』と言えば罪を着せる事が可能性があるという事だ。

 

 それを実行しようとすると、コロウが何の『役割』をしているのか、ただ一つだ…。


 「それが妥当だろうな…。」


 レフィーユさん、人の回想を読まないでくださいよ。

 というより、貴女は心が読めるのですか?


 「時と場合によるな。」

 「そ、そうですか…。」

 「まあ、その点は私も気味が悪かったのでな。

 早めに提案を打ち切らせてもらったのさ。」


 「おお、レフィーユさん、貴女は何か思う事があって、華中会の提案を断ったのですね。」


 『あの組織は何か匂うトコロがあるなと、この私…。』といった感じで、レフィーユと同じ治安部の男が格好を付けて言っているが、前回と言ってる事が、とても真逆だった。


 「それでお前はどう思っている?」

 「流石に鈍感なお前も気付いたようだな。あのコロウという男が妖しいと、この…。」

 「ありえないと思いますよ。」


 もうこの男が名前を言うタイミングがわかって来たので、作者ともども邪魔をするよう答えてやると、期待通りにコケてくれた。


 「どうしてだ?」

 「まあ、それも知りたいのですがね…。」


 後ろをチラリと見ると、レフィーユも『なるほど』と頷いたのを見て、とりあえず十字路までこの男の小言に付き合い歩いていると、レフィーユが何かを思い出した。


 「ああ、そうだ、一つ調べモノを思い出した。」

 「現場でですか…?」

 「そんなトコロだ。お前たちは先に帰っていいぞ。」

 「はい、それでは道中気をつけて…。」


 そういって、分かれ道を左右に分かれてると治安部のこの男も『この…』と言ってレフィーユの方に金魚のフンみたいに付いて行った。。

 

 だが別れて、身を隠しながら来た道を振り返ると、案の定自分たちに付いて来た影がレフィーユに付いて行った。

 

 「あの、何をしているんですか?」

 あまりにも妖しいので気配を完全に殺し、背後から『ポン』と叩いてあげる。


 ついでに笑顔も忘れない。


 びっくりした様子で、その影はこちらを向く。

 

 「それは、私を付けているのさ。」

 さらにその背後から、レフィーユが立っていた。


 こちらも笑顔は忘れない。これ大事。


 慌てて体制を立て直しレフィーユに攻撃をする。


 だが、万全の体制のレフィーユは、それより早くサーベルの柄で相手の腹部を打ち抜き、男はうめき声と共に崩れ落ちた。


 「…強すぎたかな。まあいい、アラバ、手錠を掛けておけ。」

 「治安部じゃないので、手錠なんてもってませんよ。」


 『そうだったな。じゃあ、私のを使え』とレフィーユが手錠を手渡して来たので、それを使って気絶しているこの男を取りあえず、東方術や西方術を発動させないような体勢で『拘束』をして、ペシペシと頬を叩いた。


 「レフィーユさん、あの治安部の人は…?」

 「あの男は前を歩かせて、その背後に、私の残像(ミラー)を残しておいた。」

 「振り向いたら、バレますよ?」

 「単純な男だからな。『私は考え事をしているトコロは、あまり人に見られたくない』と、はにかみを見せたら『わかりました。』と紳士を気取って前を歩いたぞ…何だ。その目は?」


 …とりあえず『何でもありません』と、答えておこう。


 「別に嘘は言ってないだろう。まあ、お前なら見せてもいいのだが、な…。気が付いたようだぞ?」

 「…華中会の人間にこんな事をして、タダで済むと思ってるのか?」


 人様を尾行をしておいて、『タダで済む』なんて言われた。

 

 「やはり華中会の人間でしたか。」


 あまり尾行は得意じゃないのか、この男はご丁寧に自分の組織の名前を口にしていた。


 「ま、まあ、良いじゃないか、こちらには聞きたい事があるからな。」

 「命じた人間の事を答えると思うのか?」


 「当然、思いませんよ。こちらとしても、これ以上コロウさんの事を突いても貴方の知っている事は、おそらく自分達が知っている範囲だと思いますから。」

 「だったら、早く開放しろ。」


 「そうはいかないな。メイの事を知っているだろうから聞いておきたいのでな。」

 「ふん、お前らに答える義理はない。」

 「なかなか強情だな?」

 「当然だ。『こんな事』されて白状すると思ったら大間違いだ。」


 手錠をがちゃりと鳴らしてその男はレフィーユから顔を背けた。


 当然だろう、組織の内部情報をリークする事は、その組織を裏切る事になるのだから、おそらくコロウはそう言って、固く禁じているはずだ。


 右腕に掛かった手錠を後ろに回して、左足に取り付けられても、絶対白状しないだろう。

 

 「じゃあ、自分から質問して良いですかね?」

 「ふん、オレは何も吐かないと言っただろう?」 

 「それはそうでしょうね。2人の事は情報を伝える事は禁じられているようですからね。」

 「だったら、もう開放しろ。」


 「ですので、儀式の事なら構いませんよね?」


 よほど思いもよらぬ提案だったのだろうか、レフィーユも驚いた様子でこちらを見ていた。


 「おいおい、いくら華中会のそれが有名でも、今回の事はそれと全然関係ないハズだろう?」


 この男も、思いもよらぬ事だったのだろう。

 呆れながらそんな事を言っているが、コッチを向き直った。


 どうやら、話を聞くつもりらしい。


 「まあ、そうなんですけどね。

 自分が今回の事で気になったのは、華中会の4人の血筋を殺し合わせるっていう。

 その『儀式』なんですよ。

 先代って事は、言うところの現代ってのがいて、コロウさんではない頭首がいたのですよね?」

 「ああ、そうだ。…死んだがな。」


 『すいません』と知らないフリをして謝り。

 あの時のボスを抱えて病院に掛けたであろう手下に聞いて見た。


 「問題はそこなんですよ。

 先代が、お亡くなりになる前に頭首がいた時点で、どうして4兄妹は健在だったのか?

 それが私にとっては不思議でならないのですよ。

 その為には、4兄妹全員の事を知っておきたいのですが…無理ですかね?」


 「そうだな。無理だ。」


 そんな無愛想な返答だったが、しばらく考え込んでこういった。


 「良いだろう、オレもそれを不思議と思っていたからな。知っている範囲の事なら教えてやろう。

 その代わり、メイ様とコロウ様の事は他を当たるというのが条件だ。」


 彼なりに譲歩したのだろう、これ以上を望むのは無理だと思ったので、『わかりました。』と言って、この場から数M先にある自販機まで歩く事にした。

 

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