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第二十七話

 立ち入り禁止を表す、黄色いテープを潜ろうとすると、警察に止められた。


 「ああ、私は白鳳学園の治安部です。」

 と、昨日夜なべして作った、偽造の認識証を見せると警察は写真に写った顔と自分の顔を見比べてこう言った。


 「見たところ、キミ一人のようだな。

 リーダーの許可は得ているのかね?」


 「ええ、まあ、レフィーユさんが気になるから現場の写真を撮っておいてくれるように頼まれただけですので…。

 ですけど、いいのですかね?」


 「何がだね?」

 「ここって…。」


 そう言って、自分は警察に小声で話す。


 「…『華中会』のアジトらしいじゃないですか?

 基本的にあちらが写真撮影を嫌がるのではないのだろうか、と思いましてね。」

 「ああ、それなら、新しく代表になった…名前なんだっけな…。」

 「コロウ?」

 「そうだ。その人が特別に許すそうだ。

 なんでも、漆黒の魔道士に対抗する為に、キミの学園のレフィーユの意見を聞きたいそうだからね。」


 『へえ、そうなんですか…。』と自分に対して居た堪れない気持ちで頷いていると、その警備に当たっている警察がうんざりしながら言ってきた。


 「正直、納得はいかんのが本音だよ。」


 「本音?」


 周りを伺いながら、認識票を返しながら耳打ちをしてきた。


 「警察側は捜査をするなと、コロウ代表にこちらは止められていてね。」

 「止められている?」


 「そうなんだよ。何でかは知らないけどね。

 こうも固く禁じられてしまうと、あの魔道士じゃない様な気がして来てならなくなるよ。

 まあくれぐれも、誤認逮捕だけはするなと、君のリーダーに言っておいてくれ。」


 ため息混じりでそういって、現場の場所まで案内してくれた。


 この部屋は、かつての犯罪の象徴の銃が飾られていた。

 その床には白いテープ、そこでオキナは殺されていた。


 思い出すように目を瞑り、当時の状態を思い浮かべてみる。


 相手はオキナの喉を一閃したと思われる鋭利な刃物の切り傷、おそらく東方術だろう。


 だが、オキナは年を取ったといえど、4人の身内を殺し合わせる『儀式』で生き残り、華中会の先代と呼ばれるまで上りつめた人物だ…。


 「そして刑事アラバは、こう考える。

 無抵抗のままでやられるモノだろうか…と。」

 「レフィーユさん、どうしてここに?」


 振り返ると、いつの間にかレフィーユがドアに寄り掛かってこちらを見ていた。


 「いや何、私も気になったのでな。現場に足を運んでみたのさ。

 すると『誰かが貴女に頼まれたと現場に向かった』と警察が言っていたので、もしやと思ってな。

 その認識票、お前が作ったのか?」


 「子供騙しの作りですけど、うまい事、警察の人が通してくれましたよ。

 なんですか、その目は…。」


 何を言わんとしているのが解るレフィーユの視線を浴びていると、更に後ろの方から誰か来た。


 「誰かと思えば、お前どうしてこんなトコロにっ!?」

 「貴方もいたのですか…。」


 「ふっ、レフィーユさんの得点稼ぎの為に偽造認識票まで作ってご苦労だな。

 私はそんな事をしなくても『レフィーユさん』と一緒に捜査に出来るのでな。

 お前は指を咥えてそこで大人しく…。」


 「レフィーユさん、誰でしたっけ?」

 「おいおい…。」


 レフィーユは思い出そうとしているのだろうが、沈黙が『何か』を表していた。

 

 「ソ、ソウ…。」

 「騒がしいと思ったら、貴女でしたか?」


 とうとう彼は名前すら言わせてもらえず、しかも被せ気味でやって来たのはコロウだった。

 

 「始めまして、私が華中会の代表をさせてもらっているコロウと申します。」

 「レフィーユ・アルマフィだ。今は白鳳学園の治安部に籍を置いている。」

 「存じております。転校してからも噂通りのご活躍だとか、ですけど最近は仕事に熱が入らないようですね。」

 「どういう意味だ?」

 「事件の現場にまで、噂の『彼』を連れてくるとは…。」


 「ああ、勝手に来ただけですよ。用が済んだら帰りますよ。」

 「別に構いませんよ。

 偽造認識票まで作って、調べに来たのですから気の済むまで調べて良いですよ。」

 「じゃあ、現場の写真を撮影させてもらいますね。」


 そう言って、持ってきたデジカメで不慣れながら撮っていると、コロウはやはりレフィーユが目的だったのだろう眼鏡を掛けなおし近付いて何かを話していた。


 「…とにかく、悪いのは漆黒の魔道士なんです。

 よろしければ、同じ敵を相手にする手前、情報の提供を許可したいのですが?」


 つまり共闘という名目で漆黒の魔道士である自分を潰すつもりなのだろう

 

 「レフィーユさん、これは願ってもない提案ですよ。」


 隣にいる、何も知らないこの男はこの提案に乗り気だったが、レフィーユは考え込んでこう言った。


 「アラバ、お前はどう思う?」


 …こういうのは、自分に聞いてほしくない。


 「まあ、悪くないのでは?」


 「ふふ、さすがレフィーユさんが認めた彼だ。考えが懸命だ…。」

 「それはどうも、ですけど、コロウさん、少し聞いていいですかね?」

 「いいですよ?」


 「どうして、私が治安部の人間ではないと知ってるのですか?」

 「…どういう事です?」


 「だってさっき『偽造認識票まで作って…』なんて言ったじゃないですか、コロウさんが来たとしても『偽造認識票』の言葉なんて一つも使いませんでしたよ?」


 「…それは、警備員に聞いたのですよ。

 まるで子供の作ったような認識票だったらしいから、おそらくそう思ったのですよ?」


 『それが何か?』と、聞いているが認識票を出してレフィーユに見せて更に聞いて見た。


 「さっきもそうでしたけど『子供の作ったような』なんて言葉も使った事もありませんし、結構コレ良い出来だと思いますよ?」


 「確かにコレは、パッと見て偽造だとは気付かれないな。」


 そう言って、レフィーユに見せた偽造認識票は、透かしが入ってないだけで、見た目は完璧だった。


 「どうして貴方が、そんな事知ってるんですかね。これじゃあ、まるで盗聴しているみたいですよ?」

 

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