第二十四話
風邪引いて寝込んでます。
しばらく投稿のペースが遅れます。
すんません…。
周囲を見渡して誰もいない事を確認して、『コン、コン。』と独特のリズムのノックの仕方でレフィーユの部屋を叩く。
「すいません、遅れました。」
「いや、時間通りだ。入ってくれ…。」
「お主、誰じゃ?」
招かれて部屋に入ると、メイが自分を見つけるなりに怪しい人物を見るような目で聞いてきた。
「レフィーユさん、この子が?」
メイはいつものチャイナドレスではなく、レフィーユの大き目の服を借りて、それを着ていた。
「そうだ、華中会の娘で、メイというんだ。」
いつまでも血の付いたチャイナドレスを着たままというのは良くないと、レフィーユが気を遣ったのだろう。
自分が最も慕っていた。お爺さんの血なのだから…。
そして自分は漆黒の魔道士としての顔を、メイは見た事が無いのを利用してこう言った。
「アラバといいます、始めまして。」
メイには悪いが、この学園に漆黒の魔道士がいるという事を悟られない為だ。
「お主が噂のレフィーユの男か、ニュースで見た事があるぞ。
私は、メイじゃ。改めてよろしくな。
…それで、ここには何の用でやって来たのじゃ?」
「メイさんに夕食を作ってくれないかって、レフィーユさんに頼まれましてね。
こんな事になった自分にも責任が…。」
正直こんな状況になれていなかったので思わず口を滑らし掛けてしまったので、『げほげほっ』と咳き込んで『すいません。都会の土が合わないもので…』と誤魔化した。
「で、夕食くらいなら自分が作ってあげようと思ったのですよ。
じゃあ、早速ですがレフィーユさん、いいですかね?」
そう言って、キッチンに向かいフライパンを取り出して持参した袋からサラダ油を取り出した。
「すまぬのう、事情が事情とはいえ、主達に迷惑を掛けて。」
「フッ、そんな事はこの事情を押し付けた『ヤツ』にでも言っておくさ。
まあ私としては、彼の手料理が食べれると思えば、それなりの利益だが…な。」
「…軽快な音じゃのう。」
どうも会話が途切れたのは、自分の包丁の音が原因らしく素直に嬉しかった。
「実に頼もしいのう。
一体何を作るつもりなのじゃろうな?」
「まあ、私達よりかは、マシな料理が出来るだろうな。」
「そ、そうじゃのう、あの時はお互いに『痛み分けた』という事にした方が良いじゃろうからな。」
「ふっ、私も悪かったからな。」
聞く所によると、自分がこうやって料理を作る以前に独自に二人で挑戦してみたらしいのだ。
だが、二人の共通点は『料理が出来ない事』らしく…。
―炒めモノをする為に、かき混ぜるのに必要なおたまを取り出そうとする。
「おわっ。」
その時に使われていたであろう、『ステンレス』で出来たおたまは見事にふやけていた。
一応『かき混ぜる』という工程には支障が無いと思ったので使ってみようと、勇気をだして水を掛けてみる。
すると明らかに熱くないのに出てくる湯気。
後に付いてくる水滴は、まるでドライアイスのように煙を上げながら下水へと流れていくのだ。
それはもう…下水へ流れる配管の方が心配になるくらいに…。
だが、その事は料理をしていたみたいだったのがわかった為に、調理に使ったであろうフタを閉じてある鍋がとても気になった。
「…何、作ってたのかな?」
まるで、自分は嗅いではならないくさい臭いを嗅ぎたくなるような心理で…んっ、もしかして、アレはヤバイのか?
そんな事を考えている内に、手がもうフタに手を掛けていた。
…もう開けるしかない。
フタを開けると幸い臭くなかった。
…だが、鍋の中には、何か自分を睨みつけている『目』が。
「悪い予感がするから、もしやと思ったが、見たな…?」
おそらく創造主であろうレフィーユが、キッチンを覗いていた。
「…見られてますね。
レ、レフィーユさん、何ですかコレ?」
「メイの故郷の料理の『ツバメの巣』に挑戦していたらこうなった。」
「ち、調理って、どうやったら、目が形成するのですかね。
これはもう悪魔の巣じゃないですか…。」
「気にするな、何も今回が始めてじゃない。」
「何ですか、その歴戦さを感じさせる口答えは?」
その気になれば、複製人間でも作れるのではないのだろうか?
「何か、めちゃくちゃ自分を見てるのですけど?」
「雛鳥は最初に見た生物を親と思う習性があるらしいぞ?」
「…簡便してくださいよ。」
とりあえず目玉にフォークを突き刺して、蓋を閉じてふと思った。
「まあ、ですが、これで『痛みわけ』…」
おたまは融解、鍋の中に召喚獣。
一体、今までどんなバトルが繰り広げられたのだろう。
だが、こんな事があったというのに彼女達は普通に生活しているのが、凄いと思った。
レフィーユ曰く「女の身体は神秘なのさ。」の一言で、片付けられてしまった。
「それで、お前は何を作っているのだ?」
唯一無事だったビニールに被ったままの菜箸を取り出して、ひき肉を炒めるとレフィーユが聞いてきた。
「今回は中華っぽく、ジャージャー麺ですよ。」
「何か手伝う事は…。」
「ありませんよ。」
「被せ気味にいうな、惨めになるじゃないか。」
「それはこれ以上の複製人間を作られても困りますからね。」
「言うじゃないか、それじゃあ、お前の腕を見せてもらおうじゃないか。
じゃあ、盛り付けくらいは手伝だおう。皿は、これくらいの大きさでいいか?」
そういってレフィーユによる、さらなる複製人間生成を阻止して。
その時になるまでレフィーユには待機してもらい、ミンチ肉やネギを一緒に炒める事にした。