第二十話
第○話の『第』部分が『弟』になってるので、修正掛けました。
更に修正だ。
力不足まるだしだ…。
両手を広げると闇で出来た法衣が自分の足元と左右に広がって自分の攻撃態勢を完成させる。
広げた両手を魔道士はまるで法衣を羽織る様に交差させると、法衣から無数の闇の球体が怪物に向けて放たれた。
普通なら「きゃあああっ!!」…当ててはいないのだが、今叫んでいるユカリがやっているように、自分の身を守る為に身を屈めて守りを固めるモノだ。
まるでうねり踊るように散弾を避けてこちらに向かって来る、その人物はもう人間ではない。
その名は警備員、不法侵入者を排除すべく雄叫びを上げてこちらに向かってきた。
ガードの上からだが、怪物はお構いなしでこちらに突っ込んできて肩に噛み付いてきたので巴投げると少し驚いた。
噛み付きの痛みで呻いたワケじゃない。
自分が噛み付きから無理矢理引き剥がすと歯が全部抜けたから驚いてしまった。
痛みがあるのだろうか、その場で自分の血を撒き散らせながら怪物は声にならないくらいに叫びを上げる。
そして叫びを上げ続け大きく開けすぎた口はアゴを外した。
「もう、あ、あなた達、何なのよっ!!」
怪物のまるでデッサンが狂ったような顔を見て、ユカリはとうとう我慢の限界が来たのだろうかヤケを起こしていた。
立ち上がるユカリを怪物はじっと見て更に雄叫びをあげた。
「そ、そんなに光るモノをだしても、か、必ずお姉さまが助けに来てくれるから無駄ですわよ!?」
あくまで強気のユカリ、それを言われたので自分も見ていると怪物は光る球体が出していた。
もう声にならない雄叫びは、自分にとって何か悪い予感が物凄くあるのだが、ユカリには分からないのだろう。
その場に立ち尽くしていたので、闇をユカリの足に巻きつかせてこちらに引きずりながら、引き寄せた。
が、自分の中でユカリに対する普段の鬱憤が『相当』溜まっていたのか、勢い良く引き寄せてしまった。
ユカリの身体が宙に浮いた。それも思ったより高く…
ゴロゴロと転がるユカリを見送っていると、その瞬間『線』がユカリの立っていた場所目掛けて走った。
始めは何が起きたのかわからなったが、横切ったトコロにあった柱が刃で斬り付けられた様に崩れ落ちた。
どうも火を凝縮させてレーザーの様にして放ったようだ。
そんな事を考えていると突然、自分の背中に冷たい痛みにが走った。
怪物の攻撃じゃない。
背中から氷の刃が刺さっていたので、ユカリが恐怖のあまり自分を攻撃したのだと分かった。
さっきから怪物が雄叫びを上げていたが、そんな事よりユカリの方をみてしまう。
別にこんな状況は始めての事じゃない。
自分は『漆黒の魔道士』という悪役で、彼女は自分をここまで乱暴に引き寄られた、この悪役から、自身を守ろうとしただけだ。
氷で出来た刃が使用者の意思によって、消えて痛みと同時に肩が出血を始めた。
うめいてしまい片膝を突きながら、自分はレフィーユとの屋上での台詞を思い出した。
『もう慣れた事だ』
言ってみればこの言葉は嘘だ。
だが、自分の素性を明かしたトコロでどうなるのだろう?
世間は特異な目で自分を見て、刑務所という研究所送りが順当だ。
だからこの言葉を適切な使い方で昔から自分に言い聞かせている。
「や、やりましたわっ!!」
出血によって、さっきからユカリは自分を悪役としてとらえ何も知らずに喜んでいる。
目先の危機にしか目が無いのだろうか、自分が戦っている間に逃げればよかったものを、次に怪物が狙うのが自分だという事が分からないのだろうか。
ユカリを黙らせてやりたくなったが、先に怪物がユカリの方に向かってきたので、彼女は明らかに根本的な解決になってない事に気付いた。
舌打ちをながら注意をこちらに向ける為に、闇で怪物を引き離そうとする。
だが力が足りないようだ。その場で引き離す事が出来なかった。
こっちを向いて口から出ている光る球体が輝いたので熱線がくると思った。
だが思うように身体が動いてくれなかった。
辛うじて避ける事に成功するが、一気に間合いを詰められてしまい首を掴まれて宙に釣りあげられる。
闇で固めているとはいえ、器官が圧迫されてしまう。
自分の身体から空気が抜けていくのを、背中からの血が抜けていくとの同時にを感じ取って、どうにかしようと足掻いていると怪物は勝利を確信したのだろう。
さらに熱線で自分の顔を焼くつもりで炎を凝縮させようとしたので、怪我を覚悟でレーザーを形成する前にその球体を掴んで握り潰しに掛かった。
幸い首を絞められているがその球体が『口より前にあるモノ』だったので、そんな事が出来たのだった。
驚きながら慌ててその絞めていた首を解き、球体を守る為に自分を殴り飛ばそうと怪物は足掻いていた。
さっきからその球体が膨れ上がっている。どうも途中でやめる事はできないらしい。
炎が自分達の周囲に燃え広がるように爆発を起こした。
自分は軽いやけどを負ったが思ったほど怪我は無かった、その場には怪物の下半身だけが立ったままの姿勢で残っていた。
…どうも勝ったらしい。
「ひっ!?」
ユカリはどうも無事だった様だが、最後まで自分に恐怖していた。
彼女を助ける役は、もう決まっている。
自分はその役じゃないのだろう。
火傷より、背中のキズが痛かったのでさっさと下に降りる事にした。
最初からレフィーユに任せておけばよかったのだろうかと、ふと思う。
だが実際、彼女の正しい判断をしたのだと自分でも思うのでそんな事は考える事をやめて。
いつもの言葉を自分に言い聞かせた。
『もう慣れた事だ。』