第十七話
出来上がりが、午前三時かい…。
どうりで頭が痛くなるワケだ。
カポッ
「斥候、敵影…は、いませんね。」
薄暗い部屋の片隅での床下から覗く2つの目、言うまでもなく自分の事だ。
一応の安全をキョロキョロと確保しながら『よいしょ』とフタを置いて同行者もそれに続けさせる。
まるで何かのスパイ映画のようだが、実際今からやる事はコソコソとやる事なので慎重に潜入していた。
…床下から。
「ここは学園内にあるPCルームだな。
まったく、寮の床下がここに続いているとはな。」
半ば呆れながらレフィーユが聞いてきたので、PCを3台電源を入れて事情を説明する事にした。
「この前、怪物に襲われたという話を覚えてます?」
「確か薬物を打たれた人質が怪物になってお前に襲い掛かったという話だったな。」
「まあ、気になったのは、その場所にあったトラックによく似たのが一台、自分達が映っていた特番に映ってたのでね。
それで学園のPCを使って、少し調べてみようと思ったのですよ。」
「…たったそれだけの事で、私について来いなどよく言えたものだな。」
「呆れてもらっても結構ですよ。
ですけど、その映像に実際拉致された映像が映っていたとなったら話は別でしょう?」
「なるほど、これでも確信をもっての行動という事か、それでお前は何してるのだ?」
「市外に設置されている防犯カメラのハッキング。」
「…感心出来ないな。」
「気に障ったのなら、連行して構いませんよ。」
少し怪訝な態度でそんな事を言ってしまったので、レフィーユが取り繕うように言ってきた。
「いや、非難するつもりで言ったつもりじゃないんだ。
今この手段でしか情報を得る方法がないのなら、私がとやかく言える義理はないからな。」
だが彼女の本心は納得が出来ていない様子だった。
「レフィーユさん、これだけは覚えておいてください。
私は人を守る為には、どんな手段を使ってでも守ろうと思っています。
それでも貴女は連行すると言うのでしたら、事が終わってからでいいですかね?」
カタカタ…。
「プッ。」
キーボードを叩く音だけ続く最中、レフィーユは急に噴出して笑い出した。
「何がおかしいのですか?」
「いや、すまない。
お前の決意に水を差すつもりはないが可愛く見えてな。」
「…悪かったですね。」
少し不機嫌になって、ハッキングの作業速度が速くなった。
『……。』
「何か言いました?」
「いや、何でもない。
それよりハッキング出来たのか?」
「はい、後は時間を合わせるだけです…こんな感じで。」
レフィーユにも画面が見えるようにするために席を譲るとそこには、ユカリが足掻きながら車に運ばれている映像がばっちり映っていた。
更にもう一台のPCで別の防犯カメラの時間帯を合わせて映像を映し、その画面の端まで行ったらもう一台のPCへとそんな作業を続けて行くと、あるビルに入って行った。
「あのビル、確か使われてませんでしたよね?」
「正確には、1、2階しか使われていないビルだな。」
「そんな事はどうでもいいですよ。
ただ、ここに監禁されているとなると厄介ですね。」
「問題あるのか?」
「いえ、もし怪物出てきて市街に出ると大変な事になると思いましてね。」
「お前は、それが『ユカリ』だと思うのか?」
「…おかしくないでしょうね。
それだけは、極力避けたいですね。」
「…そうだな。」
「ですけど、貴女は一人でそのビルの近くまで付いてきてそれでいいのですか、この情報はハッキングから得られた情報ですよ?」
「お前に心配されるとはな。
別に構わんさ、もし警察やマスコミに聞かれでもしたら…。
善良なる一般生徒が違法してでも手に入れた情報を手にして、解決をこの手に掴もうとしただけと言っておくさ。」
人気の無いビルは治安の悪さを物語る。
二人が近付こうとする。
そのビルは今夜何かが起きるとほのめかすくらい不気味だった。