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第十二話

どうして修正ってヤツは、投稿した時に見つかるのだろう…

 その夜、寮の床下に存在する秘密の通路から寮を抜け出ると、裏山の排水溝となりのマンホールから出ると月が出ていた。


 人類が有史以来、夜という日常を照らし出続けている光であり、永遠に変わる事のない道しるべ。


 この場所から下を見下ろせば日常的な光に満ち足りている。

 ここには街頭も電気もない。あるのは月明かりの『光』だけ。


 そして男は光を名残惜しむように、月に手の平をかざす。


 ゆっくりと右手が月明かりがあるというのに見えなくなる。

 そこには夜が手から泥の様に溢れ出ていた。


 手を合わせて、両手を少し上に広げ、地面に叩きつけると水滴のような陰で自分の足元に水面を作る。

 

 更にその男は息を吸い込み、空に両手を広げると、まるでその周囲の木々は新しい生物の誕生の様に歌い出して、水面はつむじが混ざる様に踊り出す。


 足元から腰へ、腰から胸へ、夜がその男を焦がす様は、流行の様に自分の足元から燃え広がり、その身を焦がしながら、夜は空へと舞い上がり火の粉は一枚の黒衣を紡ぎ、自分の焦げた身体を優しく抱擁する。

 

 するとそこに立っている人間は名前を変える。


 『漆黒の魔道士』へと…



 「さてと…。」


 いつもはフードで顔を隠しているが、今回は顔を見られる可能性があったので、とりあえず闇で仮面を作り、それを被って、レフィーユが言っていたある場所に向かって歩き始めた。


 ここは華中会のアジト、ここまで来るのは簡単だった。

 埠頭で自分の事を探している手下に実際に会ったのだ。


 その際に『誰か』に尾けられているような感じがしたので、尾行を撒いてから落ち合う頃には数分が経ってしまったので、少し申し訳のないような気がした。


 誰に尾行されてたというと、言うまでもなくあの『有名人』の事だ。


 中央に広く自分が立っていて、真ん中の席が裁判官、左は検事だろうか弁護人なのだろうか?

 案内された部屋は、まるで傍聴席のない裁判所。


 「遅れてきたというのに随分と余裕なのだな?」


 そんな事を考えていると弁護席から、注意をされたので前に向き直る。

 

 そして忘れてはならない。

 ここには弁護という人間はいないという事、すべて信用してはならない人たちの場所だという事を…。


 注意された瞬間、あっという間に視線が集まったのを感じる事が出来たので、もしもの用心の為に影の部分に中に闇を潜ませるのを忘れずにやっておく。


 何かあったら、それを発動させて逃げる算段だった。


 「先代さま、この男もニセモノではないでしょうか?」


 そんな事を言ったのに続けて、反対側の薄気味悪い男も続けて言ってきた。

 

 「ヒョヒョ、確かに華中会に取り入ろうとする輩は、結構いますからな。

 ちょっと腕前を見せてもらおうかの。」


 手を叩くと自分の後ろの扉が開き、3人の男が入ってきた。


 3人とも東方術で武装をしているので多分ホンモノの漆黒の魔道士かどうか試すつもりなのだろう。


 「ヒョヒョッ〜、謝るのなら今の内じゃぞ〜。」


 汚く笑い始めたので明らかにニセモノと決め付けているのだろうと感じた。

 まあ自分としては、こんな事で時間を取りたくなかったので、さっさと片付ける事にした。


 『パチンッ』


 指を鳴らすと同時に影に潜ませておいた種子を大樹に成長し、その三人の足元から生えてきた。


 大樹は三人の相手を息を呑むヒマも与えずまとめて捕まえ、足掻くヒマすら与えず、さっきから薄気味悪い男の前に差し出す。


 当然の反応ながら、両サイドは静かになったが、

 

 パチパチ…。


 …ただ真ん中の席に座っているその人物は拍手を送っていた。


 「どうもホンモノのようじゃのう。」

 その席は薄暗いがどうも老人のようだった。


 だが、その一言だけで、ホントに華中会のボスだという事を認識させられてしまうくらいの威圧感を感じて緊張をしてしまい警戒が解けない。


 「こんな無粋なマネをした後で悪いのじゃが、お前と話をしたいのじゃがいいかの?」


 「先代さま、それは危険です。

 その男は『漆黒の魔道士』ですよ?」

 「ヒョ、そ、そうじゃ。」と続く両サイドの兄弟は騒ぎ出した。


 「おい、お主、爺様に対して失礼じゃろう。何かしゃべってみたらどうじゃ?

 さっきから何も話しておらぬじゃないか。」


 そんな騒がしい最中でチャイナドレスを着た少女が、老人の後ろからそんな事を聞いてきた。


 「メイ、子供が出る幕じゃない下がってろ。

 コイツは『喋れない』というのは、もっぱらの噂だ。」


 また「そうじゃ」と騒ぐ兄弟。


 「別に喋れないというワケじゃないのですけど?」


 その一言で、さらに周囲がざわめき出したので、自分の本題と思った事を言う事にした。

 

 「今回は自分に用があるというので、ここに呼んだのでしょう?

 双方は見たところ『気に入られたい』のは判りましたけど、そんな得点稼ぎに呼びつけられたのならさっさと帰りますよ?」


 「とっ、得点稼ぎだとっ!!」


 片割れが断じて違うと言うが、挙動があたふたとしていた。


 その中で老人が高らかに笑っていた。


 「コロウよ。ここまでじゃ、お前たちの負けじゃ。

 それでをワシはお主を話をしてみたいと思っているのじゃがどうするかね?

 闇を持って魔道を志ざすモノよ。」


 「…酔狂な例えですね?」


 「そうかのう。

 だが、ワシはお主の存在とその行為はもっとも『矛盾』しているのは理解しているつもりじゃぞ?」


 老人はコロウとキジュツに解らないように言いながら、自分のやっている事を看破していたようだ。


 「なるほど、まあ、別に断る理由もありませんし、仮面を付けたままで良いのなら付き合いますよ。」


 「ホホッ、なかなか用心深いのう、それなら部屋を移そう。メイ、案内をしてやりなさい。」


 「先代、どうして私に案内役をさせてくれないのですか?」


 案内を見送ってからコロウは眼鏡を掛け直しながら言うと、老人は振り向きながら言う。


 「コロウ、お主は手下を捕まえられて差し出された時に、戸惑ってそこから後は動揺してしまったじゃろう。

 じゃがそれにくらべてメイは恐れもせず話しかけたからじゃよ。」


 「確かにメイの行動力は私の見習うべきトコロです。

 ですが相手が悪すぎです。何かあったらどう責任とるおつもりですか?」


 「その辺は心配ないじゃろう。」


 「なっ、何故です!?」


 「あの男は、お主より紳士じゃよ。」


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